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イノベーターが
見ている未来

vol.31

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

悟空のきもち
代表取締役

金田淳美さん

きっかけは、男性型社会への反骨精神。
ただいまキャンセル待ち31万人超!
頭ほぐし専門サロンはこうして生まれた。

4店舗合計のキャンセル待ち人数は31万人超(2018年7月現在)という「悟空のきもち」。日本初の「頭ほぐし専門店」として誕生し、施術開始から10分前後で「絶頂睡眠」に誘われると話題を呼んでいます。ありそうでなかった「頭だけをほぐす」という独自のリラクゼーションはどのように誕生したのか?創業10年を経てなお、類似店舗の追随を許さない秘訣は?創業者である代表・金田さんにうかがいました。

滋賀県出身。同志社大学卒業後の2005年、会計士として大手監査法人に入社。退職後の2008年に頭ほぐし専門店「悟空のきもち」を京都にオープン。現在は京都・大阪・東京に計4店舗を展開。2011年には一般財団法人ドライヘッドスパ協会を設立、全スタッフが協会公認の「ヘッドマイスター」の資格を有する。「絶頂睡眠」に誘う施術が評判を呼び、新規予約枠は約1分で埋まる人気ぶり。
https://goku-nokimochi.com/

第1章「悟空のきもち」ができるまで

「世の中に存在しなかった“頭ほぐしサロン”。
ないなら作るしかない、と。」

原宿神宮店・3階の施術フロア。「1時間コースなのに一瞬にして終わった(気分がする)」という人もいれば、「6時間くらいに感じた」という人も。時間の感覚がくるうというお客さまの声からタイムマシーンをコンセプトにした内装

金田さんの前職は会計士で、以前から経営者になりたくて「悟空のきもち」を立ち上げたとか?

小学生のころには「何か会社をやろう」と思っていました。というのも、おじいちゃんが昔ながらの人で「女の子はがんばらないと就職なんかできない」と幼いころから言われていたんですね。それを私は素直に受け取って、「そうか女の人は仕事にも就けないのか。でも働きたいから経営者にならないといけないんだ」って考えたんです。

とはいえ具体的に何をするかは定まらず、「会社を経営するために必要な知識をつけよう」と、まずは会計士を目指すことに。大学を卒業する年に会計士の試験に合格して、そのまま会計士として就職。そこで1年10カ月働きました。

会計士の仕事はいかがでしたか。

いろんな企業の内部を見ることができて、社会勉強にはなったと思います。でも、会計監査のためによその企業のチェックをしてダメ出しをする仕事なわけですが、やり続けるうちに「これってそんなに大事なことかな?」という疑問が湧いてきて…。

ミス自体よりも、ミスが起きる原因を探るほうが大事じゃないですか。でも監査は原因を探る仕事ではないし、どんどん違和感ばかりふくらんで。やりがいを感じられなくなりました。自分には向いていなかったと思います。

前職を退職後、「頭のもみほぐし」に目をつけたきっかけは?

仕事を辞めてすぐ起業をしたかったけれど、やるなら「自分にしかできないもの」がいい。でもそれが見つけられずにいました。何がいいだろう、と思案するうちに思い浮かんだのは、会社員時代の自分のこと。

私はすごい仕事人間で寝る時間なんていらないタイプでしたが、辞める直前の時期は寝ても寝てもすっきりしなくて。ひどいときはクライアントと話している最中にウトウトしたことも。寝不足ではないのに、おかしいですよね。これは脳の病気かも!と思って受診しても問題ない。リラクゼーションにも行ったけど効果がない。そのときに思っていたのは「頭をほぐしてほしい…」ということです。

でも当時、探しても頭のリラクゼーションサロンってなかったんですよ。「頭」ってオプションがあっても、実際にもみほぐすのはほぼ首筋とか肩とかなんです。だから、きっと自分みたいに「頭のもみほぐし」を望む人はいっぱいいる。これをやってみようと。

それからどのようにして前例のない「頭のもみほぐし」を形に?

研究してみるとおもしろいんですよ。「頭をもむサービス」ってそもそもないんです、日本だけじゃなくて世界的に。頭って筋肉がないから、もみほぐすという概念から外れているようで。あるとしてもヒーリングみたいな感じでちょっと違う。「ないなら作るしかない」と試行錯誤が始まりました。

頭のどこの部分を触っていいのか、ダメならばなぜなのかというルールを勉強して。理論があってもお客さまが支持してくれなきゃ意味がないので、満足してもらえる形を考えることに。5分のオプションメニューじゃダメ、それだったらボディの体験が選ばれる。従来のものを土台にダメなものを排除して、では何ならいいのか。頭だけでボディと同じ金額を払ってもらえる施術スタイルを探りました。

2008年、「悟空のきもち」1号店を京都に開業。オープンしてみていかがでしたか?

オープンにあたって4人雇ったんですが、そのうち2人はすぐに辞めてしまって。だから最初は私を含めて3人でお店をきりもりしていました。

なぜすぐに辞めてしまったのでしょう?

最初はお客さまがまったく来なかったんですよ。ビラを配っても、「無料体験できます」と言っても、人が来ない。「頭をほぐす」って市場自体がなかったから、お客さまもいないんです。スタッフも施術するはずが毎日ビラ配りばかり。「こんなはずじゃなかった、この会社に未来はない」と思ったんでしょう。そう思われても仕方がない状況でした。

いまの人気からは想像ができないですね。転機は?

京都は見る目が厳しい土地柄ですが、いいことも悪いことも広めてくれる。クチコミの力が大きかったですね。体験したお客さまが周囲の人に発信してくれて、オープン1カ月後には赤字も脱して、半年後にはもう1店舗、1年半後には大阪にも1店舗。「頭をほぐす」お店って珍しいから人に話しやすいし、ライバルがいないから話を聞いた人もうちにやって来る。当時はSNSではなく口づての本当のクチコミでしたが、どんどん評判が広まっていきました。

いまや予約枠はすぐに埋まり、キャンセル待ちの人があふれる状況ですね。

「睡眠」を押し出した5年ほど前からだんだんと評判が高まったように思います。施術の方法は開業当初といまでは違っていて、正解がわからないから、いいと思うものを取り入れて変えてきました。最初は「コリをほぐそう」という一般的な考え方。でもお客さんの反応を見ていると、施術中に寝た人とそうじゃない人とでは、施術後のすっきり感がまったく違うんですよ。それで「睡眠」に誘う施術を突き詰めることにしました。施術方法もコンセプトも全部変えたことが正解だったんですね。加えてSNSの浸透とともに評判の広まり方も加速して、さらに予約も殺到して、いつの間にかこうなったという感じです。

お客さま視点に立つと、リラクゼーションなんてはっきり言うと生活必需品じゃないでしょう。それでも、ここに来たくなるものを作ることが大切。何年待っても行きたくなるお店であり、予約がとれたら喜び、ワクワクしながら来店して体験した喜びが感じられるもの。施術そのものだけでなく、一連のストーリーを楽しんでもらえる仕掛けを考えています。

  • 店舗ロゴに「KYOTO」の文字を入れて京都発祥のサロンであることをアピール。京都店は比較的予約が取りやすいことから、お客さまの約2割は東京から予約してくるそう。「予約が取れた日に合わせて京都に来る」という海外からのお客さまも!

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