イノベーターが
見ている未来
vol.35
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
fufu
代表取締役社長
高橋賢さん (age.36)
創業から4年で急速に店舗を増やし、ヘアカラー専門店の店舗数トップに躍り出た「ヘアカラー専門店fufu(フフ)」。同サロンの創業者・高橋さんは美容師でもなく、美容とも畑違いの業界出身です。「ヘアカラー」に着目した理由から、スピード出店を叶える手法、多店舗展開の先に想い描く未来をうかがいました。
https://fufucolor.com/
第1章ヘアカラー専門店に着目した理由
「お客さんにとっても、働き手にとっても
喜ばれるビジネスにしたい。」
ヘアカラー専門店に目を向けた、そもそものきっかけは?
僕は新卒でリクルートに入ったのですが、その時は美容には関係のない求人の営業やインターネットサイトの企画をしていて。目標値の達成やMVP獲得に向けて走っていました。でもこれをこの先もずっと続けるのは無理だと思い、ほかにできることを探していて。ヘアカラーに目をつけたのは、たまたまなんですよね。同様の既存店があることを聞いて、興味を持って調べてみたらマーケットの大きさもそうですし、都内にはまだあまりないからいいかもなってのが最初でした。
ヘアカラー専門店が「いいビジネス」と?
カスタマーとサロンの課題解決になると思ったのです。白髪染めは定期的にする必要があるけど、自分ではうまくできないし美容室だと結構お金がかかる。美容室に行くほど気合を入れずに、日常生活の一部としてヘアメンテナンスができたら助かる人は多いはずです。
一方、美容師さんの中には労働時間が長いのに、給料は10万円そこそこという人がいっぱいいます。そういう人たちにとって、ちゃんと給料や福利厚生があって、長く楽しく働ける職場があれば嬉しい。お客さんにとっても働き手にとっても喜ばれるビジネスになると思ったんです。
勝機を感じたのですね。
既存店にはない、価格以上の価値を提供することができれば勝算はあると思いました。そして僕は数字的なものもユーザーの想いをくみ取ることも、どっちも好きだったので、それができるだろうと。
ビジネス的価値だけではなく社会的な価値もあります。40代女性の大半が髪を染めているという調査データがあり、世の中のお母さんで白髪染めをしている人も多い。そういうお母さんたちが「今日は髪をきれいに染められた」って家でニコニコしていたら、家族は幸せです。そんな「お母さんをはじめとした女性のニコニコ」を作り出すお手伝いが、「fufu」が世の中に提供している価値だと思っているんです。それってすごく良いじゃないですか。旦那さんや子供も嬉しいですし。
お店づくりで気をつけたことは?
「fufu」は入りやすく、かつ居心地のいい空間になるようにしています。気合を入れずに日常使いできるけど、きれいになる場所なのだから、あまりに機能だけ追求しても女性は嬉しくない。だから日常の中のちょっといい場所になるよう、簡素な椅子ではなくてリラックスできるソファ席にしたり、カラー剤の浸透を待つ間に楽しめるコーヒーや雑誌、タブレットを用意したり。カラー剤も、ちゃんと調べて、使ってみて高品質のものをより安く提供できるようにしています。
価格帯はどのように設定しましたか。
既存のヘアカラー専門店の相場を調べたところ、リタッチで2000円でした。うちは居心地のいい設備を提供したり、機械ではなく美容師のスタッフがシャンプーをするなどサービスをプラスする分、2割価格を上げた2400円にしました。その400円はスタッフの給料に上乗せすることができるので、給与を担保するために他店にはない価値を創造したという面もあります。
会社を立ち上げる前にかなり準備をされていますね。
自分たちで1000人近くの人に白髪染めに関するアンケートをとって分析したり、美容師さんにも直接会いに行って理想の働き方や何が嫌なのかを聞いたりしました。1号店をオープンしてからも、しばらくは毎日店に出勤して、働いてくれているスタッフやお客さんの話を聞きとっていましたね。
「調べる」「聞き取る」が徹底していますね。
僕は美容師じゃないけれど、技術的な方法は調べることができる。そして自分が調べたやり方と違うことをしていたら、なぜそうするのかを教わって、働き方の無駄を省いたりもしました。
お客さんに対しても、なんでうちを選んでくれたのか、他店で何が嫌だったのかをたずねたり。うちは3~4週間に1回のペースで来る人が多いんですが、リピートしなくなったお客さんに、なぜ来るのを止めてしまったのかを聞いたこともあります。30人くらいかな、聞いた結果は「たまたま行くタイミングを逃した」という人が多かったんですよ。それで、今はスマホアプリを開発して、染める時期が来たらプッシュ通知で知らせるようにしています。
「わからなければ聞く」って基本的なことですが、ここまで徹底するのは珍しいですね。
数字だけ見てもわからないことってありますから。うちはもともとブローのオプションサービスがあったんですが、今はやっていません。これもお客さんに聞いた結果。なぜブローを利用しないか聞いてみると、「あとは家に帰るだけだから」と。お客さんの自宅はうちの店から5分~15分圏内の人が多いので、髪が濡れてても構わないわけです。
あとプロのブローって確かに上手ではあるけど、自分なりに日々積み重ねてたどり着いた「これだ」ってセットが一人ひとりあるんですよね。だからプロに頼むより自分でやりたい。そういう声に応えて、現在は自分でセットできるようにドライヤーやヘアセット剤を用意して、自由に使えるようにしています。
あの「丸亀製麺」も出資したカラー専門店。
4年で72店舗、ついに業界シェア No.1に。