イノベーターが
見ている未来
vol.36
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
Dr.ストレッチ/フュービック
CEO 黒川将大さん (age.47)
1号店のオープンから6年目には100店舗を達成したストレッチ専門店「Dr.ストレッチ」を展開するフュービック。マネージャーを社員投票で選ぶ「マネージャー総選挙」という、ユニークな制度を約10年前から導入しているのも特徴的です。同社の創業者社長である黒川さんは、自動車販売という異業種の出身。なぜ、リラクゼーション業を始めたのか?スピーディーな出店を叶えた仕組みや、上司を選挙で選ぶ制度のメリットとは…?気になるポイントに迫ります。
https://fubic.com/
第1章巨額の借金を転機にヘルスケア分野へ
「ローマ帝国の歴史書を見て思った。
ヘルスケア分野は伸びるはず、と。」
「フュービック」さんはリラクゼーションサロンやヨガスタジオなど手広く展開されていますが、最も特徴的なのはストレッチ専門店という珍しい分野に着目した「Dr.ストレッチ」でしょう。
僕も先日、初めて「Dr.ストレッチ」を利用しましたが、体がラクになった気がします。
自社サービスを褒めるのもなんですけど、技術には自信があります。体の変化を感じてもらいたいですね。ストレッチって、もともと自分が秘めているポテンシャルを引き出すのが目的。成長や生活習慣により、生まれたときは使えていた可動域まで使えなくなり、筋肉が固くなる、そういうのをストレッチによって元に戻す効果もあるんです。
黒川さんが起業した当初はストレッチやリラクゼーションとは関係なく、中古車販売業だったとか?
車の業界で起業したのは、それがやりたかったというよりも業界経験があったから。以前に自動車販売の営業職に勤めていて、結果も出していたし自分でやってみようと思ったんです。でもそのときは無一文から始めたし、経営も学んだことはありませんでした。
そうした状況から会社を立ち上げて、うまくいきましたか?
会社を始めて数年後、24歳でスノーボードショップを始めたところ大当たり!当時、スノボが流行り始めたばかりで、扱っている店がほとんどありませんでした。それでアメリカからスノボ用品を輸入して販売したら、1日200万円くらい売れていました。ところが翌年から大手スポーツショップも参入したため、売り上げがガタ落ち。大量の不良在庫を抱えてしまい、仕入れ代金などで借金も7000万円以上抱えてしまいました。
在庫をどうにかするためにスキー場のレンタル店に売って、それを原資にして中古車を仕入れて、それを売って…という自転車操業。借金を返すために日中は中古車販売、夜は店舗の内装業をやって…、ほぼ24時間働き続けました。
スノボショップのヒットから巨額の借金まで、落差が激しいですね。
正直、死もよぎりましたよ。でも僕は死ぬのがすごく怖いので、とにかく生きるために借金を返さなきゃと思って働いて。3年くらいですべて返すことができました。
そうしたら銀行の担当者が僕に興味を持ってくれて、「次は何するか考えているの?」なんて聞かれるようになりました。
見事に返済しきった黒川さんを認めて、また融資をしてもいいと思ったんでしょうね。実際、次の手は考えていたんですか?
もう車の業界に期待はできないかな、とは思っていました。人口が減少し、若者の車離れなんてことも言われ、さらに車の品質が向上して壊れなくなっている。壊れないってことはつまり、買い替え需要が減るわけですからね。じゃあ何をしよう、とまでは決めていませんでしたが、経営に失敗したのは僕がバカだったからというのは確か。貸借対照表も損益計算書も何もわからなかった、無知がいまの状況を招いたんだと思いました。
それから、知り合いの社長さんに決算書を見せてくれと頼んで自社のと見比べたり、税理士さんに「優良企業とうちはどこが違うの?」と決算書の読み方を教わったりするように。本もいろいろと読むようになりましたね。そのとき読んだ本のなかにローマ帝国を題材にしたものがあって。当時のローマは奴隷に働かせて、上流階級の人々は悠々自適の生活。そんな彼らが望んだのは不老不死でした。それを読んで、「そうか、すべてを手に入れると人は健康を求めるんだ」と思ったんですよ。
なるほど、お金や権力を手に入れた次は不老不死を願う話って古今東西にありますね。
今後、AIが人間の労働を肩代わりする時代が来る。すると、手が空いた人はいま以上に健康に注目するようになるでしょう。そうしてヘルスケア分野が発展すると考えるようになりました。それでとにかく、できることからやってみようと始めたのがリラクゼーションサロンというわけです。
また、現代において「刺激を求めてる人」というのは、スポーツ観戦をする流れがあると思うんですね。それで、ヘルスケアに加えてエンタメやスポーツの分野も今後伸びていくだろうと考えました。現在、弊社がテニスのポータルサイトを手掛けているのも、こうした考えから来たものです。
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