「バーバー」人気の理由
今「バーバー」が人気の理由
近頃増えている、従来の理容室とは違う新しいタイプの「バーバー」は、なぜ多くの男性ファンを生んでいるのでしょうか?
ターゲティングやコンセプト、強みなどについて探っていきます。
Barber Genuine(大阪市中央区)
ターゲットは40代以上の男性。
大人の心を掴む、完全個室バーバーの戦略。
大阪証券取引所を中心に、老舗テーラーや紳士靴店が点在する大人の街・北浜。その一角に建つビルの中に「Barber Genuine」はあります。もちろんこの立地も経営戦略の一貫。「ターゲットは40代~60代。社会的地位が高く、時間に余裕がある層」と話すのは、代表の赤木雄三さん。
客層を徹底的に絞り、そこに焦点を当てた戦略を練る。大人の男の心を掴む人気バーバーに、その緻密な戦略を伺いました。
サービスから空間まで、限られた層のニーズを徹底的に追求。
まるでホテルマンのようなスマートな接客。
「いらっしゃいませ」ドアを開けると、カウンターに立つ赤木さんがお客さまを出迎える。立ち姿、声のトーン、表情、まるで一流ホテルのフロントマンのようにスマートで無駄がなく、感じが良い。この超一流のホスピタリティこそ「Barber Genuine」が大人の男を惹き付ける一因だ。実は赤木さんは、外資系ハイクラスホテルの中にあるバーバーの出身。そこで13年間にわたり経験を積んだことで、現在のサービススタイルを身につけたのだという。独立に当たりターゲットを「40代以上」としたのも、その経験をもっとも活かせるとの判断からだ。
個室でありながら開放感のある空間。
完全個室、完全予約制。それもまた、赤木さんが最初から決めていたことだ。「仕事に疲れたお客さまが、くつろげる場であること。そう考えたとき、完全個室は必須の条件でした」と赤木さん。しかし計算はそれで終わりではない。このバーバーがあるのはビルの4階。実はこれも大切なポイントなのだ。「個室の圧迫感が出ないよう、大きな窓が必要。外からは中のお客さまが見えず、中にいるお客さまからは“動いている街”が見える。そのちょうど良い高さが4階でした」というのが赤木さんの狙い。なお、カットの際にはお客さまに通常通り鏡を向くか、景色を眺められるよう窓を向くか尋ねているという。視界に入る景色を選べることも、価値のひとつと考えているためだ。
高い技術と多彩なコースで、価格以上の満足を約束。
肌が潤う丁寧なシェービングに定評あり。
こちらのカット+シェービングコースは7500円。周辺相場に比べるとかなり高額だが、これもあえての設定。価格によりお客さまの年齢層をある程度絞ることで、店全体の雰囲気をコントロールしているのだ。もちろん、価格以上の満足感を与える技術は大前提。とくに上質なバラの香りのクリームを使用し、じっくりと時間をかけて行うシェービングは好評。その実績からメーカーの要請があり、現在新たなシェービングクリームの監修も手がけている。
適切な提案により、フェイシャルエステの利用率は4~5割と高水準。
髭カットやヘッドスパなど多彩なメニューを揃えるが、とりわけフェイシャルエステを利用されるお客さまは多く、その数なんと来店客の4~5割。「エイジングケアに興味があっても、エステティックサロンに行くのは気が引ける。そういうお客さまが多いのではないでしょうか」と赤木さんは分析するが、やはりその提案力も決め手になっているのだろう。「会話の流れから興味がありそうなお客さまに、押し付けにならぬようにご提案します」その提案のタイミングや店舗の雰囲気、赤木さんの振る舞いなどが、高い利用率につながっている。
ヘアからスーツ、革靴まで、大人の男をトータルプロデュース。
カットしながら生地を選べるオーダースーツ。
店づくりの際に赤木さんの心にあったのは、ロンドンのジャーミンストリート。そこは革靴のショップや仕立屋が軒を連ねる紳士の街。「そこに行けば上から下まで、男性に必要なすべてが揃う。そういうお店にしたかったんです」そんな言葉通り、ここ「Barber Genuine」では実際に革靴やスーツのオーダーができる。「カットをしている間、お客さまは手持ち無沙汰。その間にフィッターが採寸したり、生地を選んだりできるようにしています」と赤木さん。このように、お客さまの目線で見る細やかな工夫が随所に隠されているのだ。
効率よりも雰囲気を重視した、ゆとりある空間。
カウンター下の通常なら店販品が陳列されるスペースには、アンティークのカミソリやハサミが並ぶ。“イングリッシュ・トラディショナルスタイル(イギリスの伝統的スタイル)”で統一されたインテリア、そして前述の完全個室。効率よりもコンセプトを重視した空間で、回転率ではなく顧客満足度を上げることに注力する赤木さん。さまざまな点に緻密な計算が潜むが「店名の“Genuine”は、“本物の・偽りのない”という意味。店名に恥じぬようにやっていきたい」という心意気こそが、この店の人気を支える本当の原動力だ。
代表インタビュー
Q.お客さまの心を掴む接客のコツはありますか?
A.テクニックではなく、お客さまを第一に考えることが大切です。
たとえば毎回ヘアカラーを注文するお客さまがいたとします。しかし来店された時点でまだカラーが不要であれば「今回はやめておきましょう」と伝えられるかどうか。目先の売上ではなく、本当にお客さまのためになることを考えること。それが接客の基本だと思います。
Q.若いスタッフが一流のサービスを身につけるための方法を教えてください。
A.自分自身への投資を惜しまないこと。さまざまな経験は必ず力になります。
レストランでも、テーラーでも、一流の店に自分のお金を払って行くことを勧めています。自分のお金を払えば、ぼんやり眺めているだけでは気づかない多くのことに気がつけるはず。それは人から教えられるだけでは身につかない力になります。自らに対する投資は、いつか必ず自分に戻ってきます。
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