サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~
超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。
vol.21
実例編4カ月で7件の介護施設と契約!
急成長の秘密とは?
HAIR SPACE 'EWALU
- 代表:
- 大坂千夏さん
- 訪問美容開始:
- 2018年
- 訪問施設数:
- 7施設(1回の訪問で5〜8名)
- 施設訪問頻度:
- 半月〜2カ月に1回
- 訪問スタッフ:
- 兼任2名、専任1名、営業担当1名、アフターフォロー担当1名
- 価格:
- カット2,160円〜、パーマ1万800円〜、カラー4,320円〜
-
Q
訪問美容を始めようと考えたきっかけは?
-
A
お客さまの役に立ちたいと思ったことと、仕事を辞めたママ美容師の活躍の場をつくりたかったことです。
お客さまのもとへ足を運んで喜んでいただくのが、美容師としての最終目標。
もともと、「困っている人の役に立ちたい」という気持ちが強くて、学校を卒業した後、訪問美容専門店でアシスタントを始めました。でも、美容師としてオールマイティな技術をつけるためには、普通のサロンで働かねばと思い転職しました。その後、大阪や神戸のサロンに勤務しているときも、休みの日には児童養護施設にボランティアでカットに行っていたんです。
2015年に同僚だった金田一豪とともに独立して、共同経営者として三宮に「Seven for Hair」と、2017年に姫路に「HAIR SPACE ‘EWALU」をオープンさせ、私は「HAIR SPACE ‘EWALU」を任されています。開業後1年は必死でしたが、軌道にのってきたときに「やっぱり訪問美容をやりたい!」という気持ちがふつふつとわいてきたのです。
長年美容師をやっているとお客さまが高齢化していき、「いつかサロンにいらっしゃるのが困難になるのでは」という思いがありました。美容師は人に喜んでもらう仕事です。だから、店に来ていただくことが当たり前ではなく、「こちらから足を運んででも喜んでいただくことが、美容師の最終目標なのでは」と、ずっと考えていました。
訪問美容はママ美容師も気を張らずにできるはず。
訪問美容への想いとともに、「出産や育児で仕事を離れなければならなかったママたちの活躍の場をつくりたい」というテーマもありました。だから「HAIR SPACE ‘EWALU」をオープンするときもママ美容師が働きやすいように、定休日をもうけない勤務体制にするなどしています。それでも、仕事から何年も離れていると最先端のトレンドからも遠のいていて、サロンに立つことを「ハードルが高い」と考える人も少なくありません。訪問美容なら、サロンよりは気を張らずにママ美容師たちに活躍してもらえるのではと考えました。
-
Q
訪問美容を始めるために、何から着手しましたか?
-
A
ホットペッパービューティーアカデミーの「訪問美容ゼミ」に参加しました。
講師やゼミの仲間からの刺激がすごかった。
訪問美容への想いが再燃し始めていた頃、ホットペッパービューティーアカデミーの「訪問美容ゼミ」のことを知りました。でも、ゼミに参加できるのは選考を通ったわずか10名ほど。正直、最初は受かると思っていなかったので、受かったときは「これは本気でやれということだ」と背中を押された気持ちになりました。
ゼミに参加したら自分は想いばかりで知らないことだらけだと気づきました。営業方法から契約書の作り方、道具の準備など、ひとつずつ知らなかったことを解決してもらっていきました。講師の方々だけでなく、全国から集まった参加者の仲間もみんな訪問美容への熱い想いをもっていて、刺激だらけの経験をさせてもらいました。
スタッフに気持ちをうちあけ、みんなが力に。
「訪問美容ゼミ」に参加しようと思ったとき、サロンのスタッフにも私が訪問美容をやりたい気持ちを伝えました。最初に話したのはレセプション担当の植田結衣で、彼女に営業を任せようと思ったのです。植田は訪問美容への私の想いに共感してくれて、すぐ「やりたい」と言ってくれました。それ以来、施設のアポ取りから契約まで、すべて植田に任せていて、短期間で7件もの成約ができたのも植田の力あってだと思っています。私は植田がアポ取りをしているところを見たことがありませんが、いつの間にか契約を取ってきてくれるのがすごい。
また、パート勤務しているスタッフが、以前訪問美容を志していて、ノウハウや道具をもっていました。それを借りてスタートはトントン拍子で進んでいきました。
自分の新たな力を発見できた。
(植田さん)「私はもともと接客が苦手でした。でも人と話したり、行動を起こすことは好きだったので、大坂が『訪問美容をやりたい。営業を任せたい』と言ってくれたときはうれしかったです。電話のアポ取りなら顔が見えないから私にもできそうでしたし。
施設の方も忙しいと思うので、飛び込みはせず、電話でアポが取れたところだけ営業に伺っています。すぐに動けるように、車の中でアポ取りしたりして。営業のリストは役所にも施設一覧はありますが、それだと他の業者も使っていると思い、回覧板やSNSを見たり、歩いて新しくオープンする施設を探したりしました。伺うことができたら、施設の状況をとにかくよく伺います。『施設の課題は何か』『もし他の訪問美容業者が入っている場合、満足できていないことはないか』などです。今まで電話をかけたのが65件、訪問できたのが30件、うち7件と契約できました。
私の役目は大坂の想いを精一杯伝えて、施設側の期待に全力で応えることだと思っています。そのためにも、売り込むのではなく、相手から『エワルのサービスはいい』と思っていただけるよう努力しています。知ったかぶりはせず、わからないことは正直に伝えて、あとで調べてすぐお返事するなど、誠意を尽くしているつもりです。営業を任せていただいて、サロンの役に立てていることがうれしいです!」
-
Q
訪問美容をやっていてよかったと思うことは?
-
A
次の訪問を心待ちにしていただけることです。
もっと喜んでいただくために次を考えています。
訪問美容はお客さまに心から喜んでいただけるのが何よりのやりがいです。特に、施設の職員の方から「またお願いしたい」とご連絡をいただいたり、「次に来る日を利用者さまが指おり数えて待っていますよ」と言ってくださることです。待っていていただけるなんて、美容師冥利に尽きることです。利用者さま自身は私たちが行くと、「来てもらってごめんね」とおっしゃるのです。申し訳なさそうにされる姿を見るとこちらが恐縮してしまいます。移動式のシャンプー台でシャンプーするだけでものすごく喜んでくださったりもします。きっとサロン式の上向きのシャンプーをするのが久しぶりでいらっしゃるのでしょうね。「次はいつ来るの?」とおっしゃられると、「もっと喜んでいただくためには何をしたらいいだろう」という気持ちにさせられます。
-
Q
訪問美容を今後どうしていきたいですか?
-
A
さらに専任スタッフを増やしていきたいです。
サロンと訪問美容のどちらに重心を置くか?
訪問美容の施術は、現在、私と共同経営者の金田一がサロンと兼任しており、専任スタッフが1名です。三宮店にはアフターフォロー要員のアシスタントもいます。春から訪問頻度がまた増えるので、短時間でも担当してもらえる専任スタッフをさらに雇う予定です。
今後、私自身のサロンと訪問美容の比率をどうしていくかを考え中です。訪問美容を広げていきたい気持ちの一方で、サロンでご指名いただくお客さまとも離れがたい。でもいずれは自分自身の重心をどちらに置くかを決めて、一方は信頼できるスタッフに任せる体制にしていかねばならないと思っています。自分自身がどうしたいかを決めることが、現在の課題です。
大坂さんからひとこと
訪問美容をやるかやらないかは、自分が動くかどうかだけだと思います。私自身も最初は気持ちだけでしたが、「訪問美容ゼミ」に参加することで一歩踏み出し、刺激を受けたことで「やらんとあかん!」状態に自分を追い込みました。スタッフも最初は「本当にやるのだろうか?」と思っていたでしょうが、植田が成約を取ってきて、私たちが実際に動き出すのを見ると、応援してついてきてくれるようになりました。新しいことをやってみると、植田のようにスタッフが自分の新たな才能を発見し、急成長を遂げることもあります。そのために、経営者が自分の本気の熱を、どれだけ言葉と行動で周りに伝えられるかが大事だと思います。
次号では、大坂さんの「訪問美容ゼミ」仲間で、大宮のサロンで活躍する美容師が登場する予定です。お楽しみに!
Salon Data
HAIR SPACE 'EWALU 【ヘアースペース エワル】
- アクセス
- JR姫路駅から徒歩10分
- 創業年
- 2017年
- 店舗数
- 2店舗
- 設備
- セット面4席 ※HAIR SPACE 'EWALU
- スタッフ数
- 5名 ※HAIR SPACE 'EWALU