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サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.22

考えるより行動を!埼玉・仙台で始めた訪問美容。

埼玉県大宮駅のすぐ近くで、エイジングケアに特化したサロン「Q'S」を経営する相澤敏晴さん。昨年9月からホットペッパービューティーアカデミーが主催する「訪問美容ゼミ」に参加し、この1月に2件の施設との契約を成立させました。専門学校時代から興味を抱いていたという訪問美容を実際に始めるまでの経緯についてお話を伺いました。

Q's

  • 全スタッフ4名
  • 1店舗
代表:
相澤敏晴さん
訪問美容開始:
2018年
訪問施設数:
4施設(定期2施設、不定期2施設。1回の訪問で2〜10名)
施設訪問頻度:
2カ月に1回
訪問スタッフ:
兼任4名、専任3名
価格(カット):
2,000円〜、パーマ4,500円〜、カラー4,000円〜

Q

訪問美容を始めようと考えたきっかけは?

A

学生時代にボランティアで障がい者施設に行ったことです。

2回の反動があったんだ!

あこがれていた華やかな美容師とは違う側面を知りました。

私の地元は仙台で、母も親戚も美容師という環境で育ちました。夜は遅くまで働いていたり、少ない休みの日も講習に行ったりで、美容師は自分にとってなりたくない職業だったんです。でも高校生のある日、テレビで東京のスタイリストの華やかな活躍を見ました。それまで美容師の悪いところばかり見ていたので、反動で「美容師ってカッコイイ!」と思って、それから進路を美容師に変えました。
 専門学校時代に、知人の美容師の勧めで障がい者施設へのボランティアに同行する機会がありました。華やかな美容師の世界にあこがれていた自分は「美容師にはこういう福祉的な仕事もあるんだ」と衝撃でした。そのときの体験がその後もずっと心に残っていたのです。

早く訪問美容を始めるために、独立の道を選びました。

卒業後に就職したサロンでも、「訪問美容をやりたい」とずっと言っていたのですが、そのサロンの経営者の考え方とは違っていました。もともと自分は独立志向はありませんでした。でも、訪問美容を始めるために、経営者を説得し続けるのと独立するのとどちらが早いか考えたときに、独立の道を選びました。2016年に「Q’s」をオープンしたときも、最初から訪問美容をやりたいと思っていました。すぐにできるとは思っていませんでしたので、サロンワークをメインにしながら、情報収集から始めたのです。

  • 美容師に対するイメージが二転三転した結果、訪問美容をめざすことに

Q

訪問美容を始めるために、何から着手しましたか?

A

情報収集をしたり、ホットペッパービューティーアカデミーの「訪問美容ゼミ」に参加しました。

密度が濃い半年だったんだね!

訪問美容や介護業界についての情報収集から始めました。

訪問美容をやるために必要なことを何も知らなかったので、最初はディーラーが主催するセミナーに参加しました。そこで、実際に訪問美容をされている美容師の方々に、「ビジネスとして訪問美容を行うために必要なこと」や、「サロンワークと訪問美容の売上比率」などについて教えていただいたりしました。
 また、自分で調べて介護施設の運営会社に行って、介護業界について教えていただきました。「介護施設にはどういう種類があるのか」「どのような状態の方が利用されているのか」「施設にはどんな設備があるのか」など、基本的なことを知りたかったのです。運営会社の方は、介護に興味をもっていることを喜んでくださったのか、快くいろいろなことを教えてくださいました。

「訪問美容ゼミ」の講師や仲間の想いが背中を押すきっかけに。

実際の行動に移すきっかけとなったのが、ホットペッパービューティーアカデミーが主催している「訪問美容ゼミ」に参加したことです。座学だけでなく、毎回課題が出されて、それがけっこう厳しかったです。例えば次のゼミまでにどれだけチラシ作りや営業を行ったかを発表しなければなりませんでした。でも厳しくやっていただかないと進まなかったと思います。サロンが忙しいと半年なんてあっという間に過ぎますから、その短期間に結果を出すための必死さを学ばせていただいたと思います。「指導してくれる講師の方々が、我々に伝えようとしている熱い想いに応えなければ」という気持ちにもなりましたね。「自分も講師の人たちのようになれるのだろうか?早く彼らの域まで達したい!」と思いました。
 ゼミの仲間から受けた刺激も大きかったです。営業方法も、もしひとりでやっていたら「こんなものでいいか」と妥協しがちですが、「みんなはもっといろいろなことをやっているんだ」と自分を叱咤できました。同じスタートラインに立っている仲間と、同じゴールを目指すことで、「絶対にやるんだ!」という気持ちにさせられたのがよかったと思います。

  • 「講師の方々の訪問美容にかける熱い想いが伝わってくる」と相澤さん。密度の濃い半年間だったと振り返る

Q

契約を取るまでに何をしましたか?

A

考えても仕方ないので、とにかく動き出しました。

行動あるのみ!

施設のイベントで喜んでもらえたことで、成約につながったのかもしれません。

ゼミで学びつつも、最初は本当に何から着手していいかわからなかったのですが、考えていても仕方がないので、とりあえずネットや役所で施設のリストを集めました。そして、ゼミの課題で作ったチラシを持って、サロンの定休日に自転車で飛び込みで営業に行き始めました。1日に8件くらい回っていました。1件行ったら、そこを中心にスマホの地図アプリで近くにある介護施設を検索して、片っ端から行ってみることを続けたのです。担当者に会えれば、マニュアル通りに会話していました。最初はまったく応用がきかなかったので(笑)。営業日でも少し時間があいたら、サロンから10分程度で行ける施設に営業したりしていました。
 サロン近辺だけでなく、昨年の秋に実家の仙台に帰った際に、実家近辺の施設にも営業に行きました。東日本大震災で変わり果ててしまった宮城を見たときに「地元のために何か貢献できる仕事をしたい」とかねてから思っていたのです。1日半で15件ぐらい回りましたが、そのときは特に手応えはなかったのです。1件、お試しで施術させていただいた施設があり、その後に施設のレクリエーションに呼ばれたことがありました。そこでハンドマッサージをやるとうかがったので、「私にもやらせてほしい」と伝えました。サロンでもハンドマッサージをやっていますが、訪問美容をやろうと思ったときに、高齢者や認知症の方向けの施術方法があると知り、受講してハンドセラピストの認定資格をもっていたのです。施設でのハンドマッサージのイベントが、利用者さまだけでなく職員や家族の方々にも好評いただきました。それから1カ月ほどたったときに、施設から訪問美容の契約のご連絡をいただけたのです。「これでゼミのみんなにも報告できる!」とうれしかったですね。

  • 「訪問美容ゼミ」の課題で作ったチラシ(一番上)に、自分なりのセールスポイントを付け加えたチラシを持って営業している

営業では最初の反応で一喜一憂しないこと。

仙台の施設の契約をいただいてからほどなくして、大宮の施設からも契約のご連絡をいただきました。でも、その施設は営業でうかがったときは、他の業者が入っているとのことで最初から反応がよかったわけではありませんでした。でも、対応してくれた方が施設の案内などを丁寧にしてくださったので、その後も電話したり訪問するなどフォローはしていました。
 「訪問美容ゼミ」の仲間の多くは、営業での相手の対応で「うまくいきそうかなんとなくわかる」と言っていますが、自分は正直、それがよくわかりません。契約をいただけた2件の施設も、当初は手応えを感じられませんでしたし、たくさんお話を聞いてくださって「いける!」と思ったところが契約に結びつかないケースも多々あります。だから、最初の反応で一喜一憂せずに、少しでも話を聞いてくれそうだったら、こちらの想いをきちんと伝え、フォローを続けることが大事なのかなと思っています。

  • 今年契約したばかりの施設での施術。「利用者さまや職員の方の期待に応えながら、ずっと美しさを届けられる存在でありたい」と相澤さんは語る

Q

今後訪問美容をどうしていきたいですか?

A

地道にひろげていきたいです。

ママ美容師も活躍できそう!

今後はブランクのあるママ美容師の活躍の場にもしていきたいです。

サロンをオープンしたときは、訪問美容は自分ひとりでもやっていくつもりでした。ただ、自分が始めるに当たってスタッフたちに「訪問美容はこの先必要になるサービス」ということは伝えました。すると、みんな「やりたい」と言ってくれたので、現在はサロンのスタイリスト全員が兼任体制になっています。仙台の方は、介護美容師の資格をもった知人が、専任として担当してくれています。
 うちの訪問美容はまだスタートしたばかりですが、今後はブランクのあるママ美容師の活躍の場にもしていきたいです。私の妻も、子どもができて一度美容師を辞めました。その後全く違う仕事でバイトをしていましたが、ある日「自分にしかできない仕事がしたいから美容師に戻りたい」と言ってきました。私はずっとそうしたらよいと思っていたので妻の復帰を歓迎しました。子どもがふたりいるので時間に制限がありますが、できる時間で自由に働ける環境をつくってあげたいと思っています。それは妻に限らず、ママ美容師すべての人や、他のスタッフにも言えることです。
 スタッフの体制はできてきたので、今後は施設への訪問と並行しながら営業を続けて、地道に訪問美容をひろげていきたいと考えています。

  • サロンスタイリストの渥美貴広さん(左)も、訪問美容に快く賛同してくれた仲間だ

相澤さんからひとこと

 最近年輩のお客さまが「いつまで来られるかしら」「来年また来られるかな」とおっしゃることが増えてきました。私はお客さまと生涯おつきあいしたいと考えているため、訪問美容は自然な発想でした。今までは、「サロンの美容」と「訪問美容」は別なものと考えられてきたと思います。「サロンはキレイになるところ」で「訪問美容は介護を楽にするためのもの」のようなイメージです。でも、お客さまはどこにいてもずっと美しくありたいとお考えなのではないでしょうか。サロンに「来られる」「来られない」という分け隔てではなく、サロンクオリティをどこでも提供することがこれからの美容に求められていることだと思います。だから、訪問美容がもっといろいろな美容師に広まって、お互いに情報交換しあってレベルアップできる環境をつくれたらと願っています。
 訪問美容は考えすぎると、「時間がない」とか「ビジネスになるのか?」など、やらない理由が先立ってしまうので、「やりたい」と思ったらとりあえず一歩動いてみて、やりながら考えていく方がいいと思います。

次号では、死の淵に立った経験から訪問美容を志した美容師が登場する予定です。お楽しみに!

Salon Data

Q's 【キューズ】

アクセス
JR大宮駅から徒歩1分
創業年
2016年
店舗数
1店舗
設備
セット面5席
スタッフ数
4名 
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000380113/
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