ファンを作るサロ友
ファンを作る「サロ友」とは?
少子高齢化でお客さまが減る中、リピート客獲得がより重要になっています。
そんな中、「顧客同士のつながり」を生み出すことで「サロンのファン」を作る…「サロ友」についてご紹介していきます。
CRANK(大阪府大阪市)
「自転車好きが集まる美容室」が盛況のワケ。
男性専用美容室「CRANK」が位置するのは、人々が憩うのどかな公園の目の前。店頭のウッドデッキにはロードバイクやマウンテンバイクが並び、店内にも高級感あふれる自転車のディスプレイが。まるでサイクルショップのようなこちらには、自転車好きのお客さまが集い、施術中も自転車トークが飛び交います。
サイクリスト歴20年という代表の大満隼嗣さんに、自転車をテーマにした個性的な取り組みを伺いました。
サイクリスト歴20年という代表の大満隼嗣さんに、自転車をテーマにした個性的な取り組みを伺いました。
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男性の遊び心をくすぐる自転車のディスプレイ。
趣味の自転車を店の演出に使用。
男性専用美容室を開業するにあたり、男性の遊び心に響くような特色を出したいと考えた大満さん。「何かスポーツ系の演出を」と思案した結果、自身の趣味である自転車をディスプレイすることに。「7年前のオープン当時は自転車はまだニッチな趣味で、仲間と出会える場が少なかったんです。なので自転車乗りの人たちが、友だちを作れる場になったらいいなと思いました。ただし、あくまでも店のメインターゲットはこの界隈のビジネスマンです。自転車カラーを強くし過ぎると、それ以外のお客さまに敬遠されるのではないかという懸念もありました」と大満さん。
自転車の枠を超え、スポーツ好きが集まる場に。
思い切って自転車を前面に出した内装でオープンしたところ、自転車好きのお客さまが続々と来店。神戸や和歌山などからはるばるペダルを漕いで訪れる人も。「こちらからあえてご紹介はしませんが、スタッフとの話の内容やジャージなどお客さまの服装をきっかけに、お客さま同士の会話が始まることもよくあります」と大満さん。自転車だけでなく、トレイルランニングやマラソンなど、さまざまなスポーツを趣味にしたお客さまが来店するようになり、「体づくりの方法」などの情報交換も行われるように。「現在、自転車好きのお客さまは全体の2割程度。残り8割は一般のお客さまですが、自転車のディスプレイなどが話のネタに役立っています」。
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お客さまと一緒に自転車ツーリングへ。
お客さまとチームを結成し、毎週日曜に活動。
店をオープンしてすぐに、自転車チームを創設。毎週日曜の営業前に、3時間程度のツーリングを楽しんでいる。メンバーは大満さんと店のお客さまの計10名ほど。特にメンバー募集はしておらず、店での会話の中で「一緒に走ってみたい」という申し出があれば歓迎している。何度か一緒に走って、水が合う人はそのままチームの一員に。集合と解散の場所は店頭のウッドデッキ。「ツーリングに一緒に行って、その後にここで髪を切るお客さまもいます」と大満さん。店の休業日である祝日の月曜も活動日にしているので、遠出をしてまる一日みんなで走ることもあるという。
年に1回、サイクリングイベントも開催。
毎年「体育の日」に、お客さま以外も参加できるサイクリングイベントを開催。SNSやブログで告知し、自転車好きの参加者を幅広く募っている。フィールドは小豆島やしまなみ海道など、フェリーでアクセスする遠方のサイクリングコースだ。「最初の頃は頻繁に開催していたんですが、40人近くが集まるようになり、僕ひとりで管理できるキャパシティを超えてしまいました。それで今は年1回に限定して、チームのメンバーに手伝ってもらいながら運営しています」と大満さん。遠出のツアーで、フェリー乗船料など移動の費用が発生することにより参加者が絞られ、ほどよい規模での開催ができているという。
「みんなで楽しく走りたい」というシンプルな理由で始めたイベントだが、参加者が恋人や配偶者をお客さまとして紹介してくれるなど、店にとって予期せぬメリットもあった。
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店頭スペースが、お客さま同士の交流の場に。
店先にお客さまが集えるテーブルを設置。
店の前に配置されたウッドテーブルではしばしば、お客さまたちが自転車トークに花を咲かせている。「店頭に自転車を置くスペースがあることも条件に入れながら、物件を探しました。ここはビルの1階ですが、公園に面して広いデッキがあって、気持ちのいい環境です。施術後ものんびり過ごしてもらえたらと思い、テーブルを置いています」と大満さん。散髪後の憩いの場だけにとどまらず、自転車で出かけるお客さまたちの集合場所になったり、帰ってきた後の休憩場所になったりと、予想以上に重宝されている。
賑やかな店先の風景によって認知度がアップ。
「店先にいつも人が集っていると、他のお客さまが入りにくくなるかと思いましたが、杞憂に終わりました」と大満さんがいうように、公園に臨むデッキは広々として開放的な雰囲気。店は一面ガラス張りで外から店内の様子をうかがうことができるため、閉鎖的なイメージからはほど遠い。「自転車が飾られていて人が集っている場所として、周辺での認知度は高いようです。ネットで美容室を探していたらうちの店が出てきて、『あそこは美容室だったのか!』と初めて知る人も。それがきっかけで来店してくださることもあります」と大満さん。平日には、公園に遊びに来た園児や小学生がトイレを借りに来ることもあり、店と地域の人々との交流も生まれている。
代表インタビュー
Q.自転車のチーム活動やイベントを行うことで、経営面に影響はありましたか?
A.お客さまとの距離が縮まり、定着率が上がりました。
みんなで楽しむことが目的なので、店のメリットは考えていませんでしたが、結果的にはお客さまの定着率が上がりました。自転車で一緒に出かけることで、美容師とお客さまという間柄を超えて、自転車仲間という感覚が芽生えます。するとSNSで直接予約してもらえるようになり、こちらからのアプローチもしやすくなります。自転車で走りに行ったら、お客さまの髪の毛がめちゃくちゃのびていて、「もうそろそろですよ」と声をかけることも。そのまま店でカットしていく方も多いですね。
Q.接客ではどんなことを心がけていますか?
A.本音を言い合えるコミュニケーションを大事にしています。
今の時代って、男性にとって生きづらいというか、肩身の狭い思いをされている方が多いと思うんですよね。そこで一生懸命頑張っている男性が自由になれる場所をつくりたいと思って、男性専用美容室を開業しました。他では言えないようなことも、ここで話してすっきりしてもらいたい。そのためにも、本音を言い合えるコミュニケーションを大事にしています。お客さまのライフスタイルが分かれば、髪型にも反映ができるので、プライベートに踏み込んで話を伺うことも。「距離はできるだけ近く、でも失礼がないように」というのが接客の信条です。
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