イノベーターが
見ている未来
vol.49
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
ファストネイル/株式会社コンヴァノ
代表取締役社長・CEO
壷井成仁さん
(age.57)
ネイルサロンを運営する企業として初の株式上場を果たした(株)コンヴァノ。同社が展開する「ファストネイル」は「短時間・低価格かつ高品質のジェルネイル」という、来店ハードルを下げた「新しいネイルのカタチ」を提案してチェーン展開を進めている。成長を続ける同社を現在率いているのは、外食産業から転身した3代目社長・壷井成仁さん。「ネイル業界を変えたい」と語る彼が思い描く未来像とは?
http://www.convano.com/
第1章ファストフード業界からネイル業界へ
「飲食市場が2倍になることはない。
しかし、ネイル業界なら可能です。」
「ファストネイル」を展開するコンヴァノさんに来る前、壷井さんはファストフード最大手のマクドナルドで財務などを担当されていたとか。大学も工学部だったそうですし、美容業界としては異色の経歴ですね。
電気工学科からマクドナルドというのも珍しいですよね(笑)。マクドナルドは最初、大学時代に短期バイトとして始めたんです。しかしそこには権限委譲のすごい仕組みがあって、バイトであっても能力次第でスケジュールを組んだり発注したりといった責任ある仕事も任せてもらえる。大学での勉強や実験よりも、楽しいなって思ったんです。
私が就職活動をしていたころなので今から30年ほど前になりますが、あるニュース番組で「今年の新入社員が定年を迎える時期に、役職がある人はかなり少ないだろう。」と報じられていました。工学部卒の多くが目指す研究開発などの道を自分も同じように選んでも上の役職までいくのは簡単じゃないことは容易に想像できました。しかし、マクドナルドならすでに責任ある仕事も任せてもらっているし、この道に進めばもっとキャリアアップできるのではないか。そんな考えから就職を決めたんですね。
そうして入社したマクドナルドから離れて美容業界へと働く場を移したきっかけは?
私は戦略や予算策定などにも関わっていたんですが、飲食業界って同じパイをみんなで取り合っている状態。パイは簡単に言うと「人口×朝食・昼食・夕食」しかなく、人口はこの先減っていくことが目に見えている。それを飲食店とご家庭で、取り合っているわけです。そして人口が減るからといって「みなさん1日5食食べましょう」とはならない。業界の市場規模が劇的に2倍になることは起こりえない。これが飲食業界にいて、将来性を考えるときに大きな壁としてありました。
なるほど。
そんなことを感じていたおり、私の親友が2007年にネイル事業を行うコンヴァノを創業しました。彼はもともとマクドナルドの同僚だったんですが、何か将来性のある明るいビジネスはないかと探る過程でネイルに着目したんです。
飲食産業は人口減少で市場規模の縮小が見込まれる。一方で現状、定期的にネイルサロンに通う人は女性の10%程度です。これが15%になれば市場規模は1.5倍、20%にするのも不可能ではない。ネイル業界の将来性には大きなチャンスがあるんです。
また日本ネイリスト協会の調査では、ネイルサロンの市場規模は現在でも1700億円くらい、店舗数は2万9000軒ほどです。すると1軒あたりの年商は600万円にも満たない。つまり個人事業主のサロンが大半だと言えるでしょう。外食産業におけるマクドナルドのように、数千店舗を占める企業が出ていない。だから後発であっても、チェーン展開の仕組みと独自性をきちんと作れたらシェア1位を狙える業界なんですね。
こうした考えから創業者である親友はコンヴァノを立ち上げ、彼の考えに賛同して私も2012年からネイル業界に移ってきたんです。
後発からシェアトップが狙える、その可能性の大きさに惹かれたんですね。
既存のネイルサロンさんは女性の10%にしか満たないお客さまの取り合いをしている状態。そうではなく、我々が目指すのはネイルをしていない残りの90%の人たちを開拓していくこと。そのためには2時間2万円が当たり前というようなハードルの高さを払しょくし、1時間5000円でも成り立つビジネスモデルを作り上げる必要がありました。
お金と時間に余裕がある一部の方のものではなく、幅広い層の方々に「ネイルって気軽にできるものなんだ」と知ってもらい、一般化したいと考えました。
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