サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~
超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。
vol.30
実例編訪問美容に踏み出すと、世界がグンと広がる!
ederux
- 全スタッフ4名
- 1店舗
- オーナー:
- 木和田充雄さん
- 訪問美容開始:
- 2019年
- 訪問施設数:
- 2施設(1回の訪問で約6〜10名)
- 施設訪問頻度:
- 1カ月に1回
- 訪問スタッフ:
- 1名
- 価格:
- カット2,200円〜、パーマ4,000円〜、カラー5,500円〜
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Q
訪問美容を志したきっかけは?
-
A
サロンのお客さまを生涯幸せにしてさしあげたいと思ったことです。
お客さまと地域への思いで漠然と訪問美容に興味をもっていました。
独立してサロンを立ち上げたときから、お客さまの「幸せのお手伝い」をすることが使命と考えていました。お客さまとは生涯顧客としてずっとおつきあいしたいと考えながら、年齢を経るといずれサロンに来られなくなるだろうと予想していました。でも、訪問美容について知識がなかった頃は、お客さまのもとへ伺い施術する方法もわからなかったのです。
また、豊川で生まれて育ち、ここでサロンを経営している立場として、地域に貢献できることがしたいという思いももっていました。
「訪問美容ゼミ」の募集が踏み出すきっかけに。
そうした思いを漠然と抱えながら、ホットペッパービューティーアカデミーが主催する「訪問美容ゼミ」2期生の募集を知りました。これまで、経営に関するセミナーには何度か参加していましたが、この募集を見たとき、「これは自分が考えていることかもしれない」と思い応募。面接では地域貢献などについての自分の熱い思いを伝えて、ゼミ生として合格することができたのです。
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Q
「訪問美容ゼミ」に参加してみていかがでしたか?
-
A
自分が「箱入り娘」だったことに気づきました。
訪問美容に携わる人々や知識など、多くの出会いが待っていた。
訪問美容ゼミに参加してみて、今まで自分がサロンという箱の中だけしか知らなかったことを痛感しました。「箱入り娘」のようなものですね。ホットペッパービューティーなどのネットで集客はするものの、基本は待っていればお客さまは来ていただけますし、「美容」とはサロンという箱の中でするものだと思っていたからです。逆に言えば、美容にできることは限られていると思っていたのです。でも、サロンから外に出て訪問美容ゼミに参加してみると、そこには広い世界がありました。
豊川では訪問美容をしているサロンはあまり聞いたことがなかったのですが、ゼミの講師や1期生の先輩など、動いている人は全国にたくさんいた。調べてみると訪問美容や福祉美容に関わる資格もいろいろある。そういうことに気づけたことが一番の収獲かもしれません。右も左もわからなかった迷える子羊に方向を示してくれた感じです。
時間を効率的に使うためには、地元のつながりが効果的。
サロンでは待ちでよかった営業も、訪問美容では自分から営業に出ていかなければなりません。飛び込み営業も初めて経験しました。
一方で、私は経営者、スタイリスト、訪問美容と3つの役割をこなさなければなりません。スタッフにはサロンに徹してもらい、最初の1年は自分だけで訪問美容のノウハウを吸収する時期だと決めていました。そこで、時間の使い方を考えるようになりました。訪問美容に使えるのはサロンの定休日だけなので、効率的に営業するためにやみくもにリストアップした施設を当たるのはやめました。
もともと地元の商工会議所や青年会議所、異業種交流会などに参加していたので、そうした地元のアドバンテージを利用して、自分が訪問美容をやっていることをいろいろな方に伝えたのです。それが功を奏し、紹介を受けて営業した7件の施設のうち2件から契約をいただくことができました。
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Q
訪問美容をやってみて気づいたことは?
-
A
あらためて、人とのつながり、心の大切さがわかりました。
コロナ禍であらためて気づいた「美容」の価値。
契約を取れたのも人とのつながりがきっかけでしたし、あらためて美容は「人」がすべてだと感じています。訪問すると利用者さまたちが本当に喜んでくださるのが何よりうれしいですね。
特に、新型コロナの影響で3月の下旬から5月まで施設にお邪魔できない期間がありました。施設に出入りするほとんどの業者が入れなくなっていましたが、「利用者さまたちが楽しみにしているから」と、私は早い時期から復帰させていただきました。すると利用者のみなさんが私のことを覚えていて、「待っていた」と言ってくださったのです。年齢や要介護度にかかわらず、みなさん「キレイでいたい」という気持ちは変わりません。それをかなえられるのが我々の仕事だということに、コロナ禍は気づかせてくれた機会でした。
求められているのは技術だけではない。
一方で、訪問美容は人間としての自分を試されていると感じるときもあります。施術の技術はあって当たり前で、どんなお客さまにも常に気持ちよく応対ができるかが大事です。利用者の方の中には認知症などで、会話もままならない方もいらっしゃいます。職員の方々は日々そうした利用者さまと向き合っています。たまにしかお邪魔しない我々は、心から利用者さまに接しなければならないと肝に銘じています。我々に求められているのはカットすることだけではないのです。お客さまのQOL(生活の質)を高めるためには、「心」が大事なのではないでしょうか。
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Q
今後は訪問美容をどうしたいですか?
-
A
スタッフの多様な働き方のひとつとして位置づけたいです。
美容業界にも働き方改革が求められている。
今後の予定としては、契約施設が増えた場合は、訪問美容専任のスタッフを雇用する予定です。育児などで働ける時間が限定されている美容師の活用にもつながります。現在のサロンスタッフも、希望者がいればもちろん兼任してもらいますし、彼女たちの生活が変わったときの働き方改革にもなるでしょう。
コロナ禍で企業の人々の間でテレワークなどの新しい働き方が進んでいるように、美容業界も変わらなければならないと思います。訪問美容という選択肢を増やしておくことで、スタッフたちも仕事と生活の両方を充実できるようになると考えています。
木和田さんからひとこと
自分も福祉や地域貢献に興味があると言いながら踏み出せていない時期がありました。けれど一歩踏み出してみると、予想以上に広い世界が広がって、知識も広がっていきました。福祉についてもやればやるだけ詳しくなったり人とのつながりが増えていき、仕事だけでなく将来自分の両親に介護が必要になったときにも役立つと思います。みなさんも一歩踏み出してみませんか?
Salon Data
ederux【エデル】
- アクセス
- 名鉄・諏訪町駅から徒歩10分
- 創業年
- 2012年
- 店舗数
- 1店舗
- 設備
- セット面3席
- スタッフ数
- 4名