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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.33

実例編訪問美容一筋で独立。28歳の決断!

28歳の若さで、たったひとりで訪問美容ブランド「tripsalonくれよん」を立ち上げた岩井美峰さん。当初はサロンに勤務しながらのスタートでしたが、「訪問美容を望むお客さまに、いつ呼ばれてもよいように」と独立。岩井さんが訪問美容専門の美容師として活動をするに至った背景や、今までの経緯についてお話を伺いました。

岩井美峰さん

訪問美容開始:
2020年
訪問施設数:
2施設(1回の訪問で約5〜10名)
施設訪問頻度:
1カ月に1回
訪問個人顧客数:
8人
個人顧客訪問頻度:
1〜2カ月に1回
価格:
カット2,500円〜、パーマ7,500円〜、カラー4,500円〜

Q

訪問美容に興味をもったきっかけは?

A

テレビでサロンクオリティの訪問美容師の活動を知ったことです。

祖母の死をきっかけに、ホームヘルパー2級の資格を取得。

美容師は小学生のときからなりたかった職業でした。その一方で、高校時代に大好きだった祖母を亡くしました。祖母に何もしてあげられなかったことが悔しくて、高校在学中に通信教育でホームヘルパー2級(現在の資格制度では「初任者研修」)の資格を取りました。めざしていたのは美容師でしたので、介護を職業とするためではなく、福祉に興味があって一度学んでみたかったのです。
訪問美容を初めて知ったのは、美容師として働き始めた頃です。テレビで「trip salon un.」さんの活動を知り「若いスタイリストたちが、サロンクオリティの訪問美容をするという働き方もあるんだ」と。ただ、そのときは漠然とした興味をもっただけで、何かを始めたわけではありませんでした。

「訪問美容ゼミ一期生」のブログを見て、二期生募集に応募。

訪問美容をやりたい気持ちが高まってきたとき、若いお客さまが多いサロンから、年輩のお客さまが多いサロンに転職しようと決意しました。ただ、すぐに転職先が見つからなかったため、半年間だけ介護施設でヘルパーとして勤めました。その施設にも訪問理美容業者が入っていましたが、「みんな同じ髪型になっている」ことに疑問を感じたのです。私がやりたいのは「trip salon un.」のような、それぞれに似合う髪型やカラーを楽しめるような訪問美容でした。
年輩のお客さまが多いサロンに再就職できてから、本格的に訪問美容を始めようと考え始めました。情報収集のためにネットで検索していたときに、訪問美容師の方のブログを発見。「ホットペッパービューティーアカデミーの『訪問美容ゼミ』に参加した」と書かれていて調べると、ちょうど二期生の募集が。締切直前だったので急いで申込み、ゼミに参加できることになりました。

  • 昨年の6月にスタートし、今年の1月に終了した第二期「訪問美容ゼミ」。締切直前の滑り込みで見事ゼミ生として合格した

Q

「訪問美容ゼミ」に参加して訪問美容のイメージが変わりましたか?

A

営業の大変さを痛感しました。

施設での実践の前にやるべきことが多く衝撃を受けました。

今までは介護施設での経験や、NPOが主催する訪問美容の講習で、施設での施術を見たことはありました。けれど、「訪問美容ゼミ」に参加してみて、施術の前にお客さまを獲得するためにたくさんやることがあると知ったのです。営業用のチラシを作ったり、自分で営業することなどまったく考えていませんでした。パソコンすら使ったことがなかったため、初めはとても戸惑いました。ただ、「訪問美容ゼミ」では私がテレビで見た「trip salon un.」の方々が講師を務められていて、私が理想とする訪問美容を学べると思いました。

  • 初めて使ったパソコンで作った営業用のチラシ。そのときに「tripsalonくれよん」と名前を決めた

営業は苦戦つづき。友人たちの紹介が道をひらくきっかけに。

実際の営業は、滋賀県のホームページで介護施設のリストを見つけることから始まりました。自分で訪問できる範囲の施設に飛び込みで片っ端からあたりました。しかし、ゼミ中に練習した営業方法も自分のアピールポイントも慣れるまでは上手く伝えられず、契約まで結びつけることができませんでした。
営業活動と並行して、家族や友人・知人にも、自分が「訪問美容をやりたい」ことを伝えていました。すると、元同級生から施設を紹介してもらい、契約に結びついたのです。
また、別の友人のつてで、今後新設する施設を紹介してもらいました。施設には「ヘルパーの資格ももっていること」「介護施設での就業経験もあること」などをアピールし、契約をいただくことができました。

個人宅の営業は、家族や親戚が力になってくれた。

私はどちらかというと、個人宅の訪問美容に力を入れたいと思っていました。なので、施設への営業とともに、一般宅へチラシをポスティングしていました。また、地元の新聞の折り込み広告に出してみたり、商工会議所や地域包括支援センターで介護関連の講習があるときに、チラシを配らせてもらいました。
契約に結びついたのは、親戚からの紹介と、母がポスティングしてくれたところが多かったです。私の両親もいろいろな場所で、「娘が訪問美容をやっている」と話してくれています。地元とのつながりは私よりも両親の方が広く深いので、いろいろな面で支えてもらっています。

  • 祖母への思いから取得した介護の資格が、その後の岩井さんの美容師人生を変えるきっかけに

Q

勤務先のサロンを辞めて、訪問美容1本でいくことにした理由は?

A

お客さまに望まれたときに、すぐに行ってあげられる体制にしたかったからです。

サロンの定休日以外も訪問美容にあてたかった。

勤務していたサロンも年輩のお客さまが多かったので、訪問美容には理解がありました。私がゼミに通い始めたときも、オーナーは「サロンの活動としてやっていくのでもいいよ」と言ってくださいました。けれど、サロンの中心はあくまで店舗で、訪問美容は定休日に行くしかありません。私はお客さまから「来てほしい」と言われたときに、すぐに行ってあげられる訪問美容師をめざしているので、独立を決意しました。今は訪問美容をメインとしながら、週末は元のサロンに立ち、ダブルワークをしています。

初期投資は40万円+α。

ひとりで始めた訪問美容なので、費用もそれなりにかかりました。最初は安定感のある移動式のシャンプー台を購入しましたが、重くて持ち運べなかったので、軽いタイプに買い替えました。施術に使う物を入れるワゴンや、鏡、掃除道具など、初期費用は約40万円。その他に、それらの道具を積めるように車も買い替えたので、実際にはもっとかかっています。
本気で訪問美容をやっていく決意をしたので、初期投資は仕方ないと思っていますが、当初の想定より高くついたと感じています。

Q

実際に訪問美容をやってよかったことは?

A

「おしゃれをしたい」という気持ちにお応えできることです。

キレイになることで、心から喜んでいただけます。

施設に伺ってシャンプーをしていると、普段は職員の方に洗ってもらっている方々から「やっぱりプロのシャンプーは違う!」と言っていただけます。また、今まではカラーの施術がなくて、やりたくてもできなかったご利用者さまたちがいました。カラーをした後に職員の方々から「キレイになったね!」と言われて、とても嬉しそうにされている表情を見ると、やってよかったと感じます。
施術中に、おしゃれしていた昔の話をされたり、「若い頃は毎月カラーをしていた」とか、デパートなどおしゃれな場所に出かけていたお話をされる方も多くいらっしゃいます。そういう話を聞くと、みなさんやっぱり「おしゃれがしたかったんだな」と。「そういう気持ちに応えられるようにがんばろう!」と気持ちが新たになります。
今はコロナ禍もあって、ご利用者さまも部屋から出られる機会が減っています。私の施術で少しでも気分をあげられるようにしてさしあげたいですね。

  • 「キレイになりたいお客さまはどこにでもいるので、施設でも個人宅でもいつでも行きたい」と岩井さんは語る

介護施設ならでは起こることへの対応力を上げたい。

「自分のコミュニケーション能力をもっとあげなければ」と思った出来事もありました。ご夫婦で入所されていて、初めに旦那さまの施術をして、1カ月後に奥さまの施術をしたときのことです。旦那さまのお話をしてみると「実は3日前に亡くなった」と。心が痛くなり、どうお答えしたらよいかわからなくなってしまいました。介護施設ではそうしたことが起きることは想定していても、いざそうなったときの心の準備が自分にはできていなかったのです。どういうお声をかけてあげればよかったのか悩むとともに、残された方々を元気づけられる会話ができるようになりたいと思いました。

Q

今後の目標は?

A

お客さまを増やして、いずれはサロンももちたいです!

高齢者の方以外のもとにも行きたい!

私の訪問美容はまだスタートしたばかりです。これから契約施設も、個人宅ももっと増やしていきたいですし、高齢者の方だけでなく障がいをもつ方など、サロンに来られないすべての方のもとへ訪問できることをめざしています。
将来的には、美容師をしている兄と一緒にサロンももつのが私の夢です。サロンに来られる方、来られない方のどちらもキレイにできるようになりたいです。

  • 「サロンをもつのはずっと先の夢ですが」と言いつつ、未来を見据えている岩井さん

岩井さんからひとこと

私が友人や家族から紹介を得られたように、「訪問美容をやりたい」という目標を、身近な人に話してみるのがいいと思います。そこから道がひらけていくかもしれません。私は「訪問美容ゼミ」に入って、ゼミ仲間と語り合うことでモチベーションが上がっていきました。ひとりだったら、絶対ダラダラとやらずに終えていたと思います。ゼミ仲間たちが私よりも先にどんどん契約を取っていくと、焦りますし励みにもなりました。心が折れそうになったときの支えになったのも仲間の存在です。みなさんもそうした仲間が見つかるといいですね!

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