イノベーターが
見ている未来
vol.56
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
Magico
上原 潤一郎さん (age.45)
2006年に東京・下北沢にオープンした「Magico(マジコ)」。現在は下北沢に6店舗、渋谷・原宿・青山で6店舗、横浜・吉祥寺・江ノ島に各1店舗、計15店舗を展開、年商10億円までに成長。2019年2月、「GARDEN(ガーデン)」とのコラボサロン「GAME by Alan Smithee(ゲーム バイ アランスミシー)」を原宿にオープンしたことも話題に。
https://magicohair.info/
第1章下北沢からのドミナント戦略
「“下北らしさ”をつくれば、
お客さまもスタッフも集まってくる。」
「Magico」さんは下北沢を中心に店舗展開されていますが、1店舗目を下北沢にした理由は?
高校が近くだったので馴染みがあったのと、美容師としても29歳くらいから下北沢のサロンで働いていました。妹も美容師なんですが、僕が31歳のときに「お店つくってよ」と言われて。「じゃあ、やろっか」と(笑)。古着、カフェ文化などの「下北らしさ」、そういう個性を出した美容室をつくれば、絶対に人が集まるだろうと思いました。
順調に稼働率も上がっていき、お客さまだけでなく、スタッフも自然と「下北らしさ」に惹かれる人たちが集まってきてくれましたね。当初は「目指せ、地域No.1店」といった感じで、出店も下北沢エリアに集中。そうすると当然、お客さまの母数は少なくなりますが、毎月通える価格設定にして来店頻度を上げ、店販を強化してロイヤルカスタマーを獲得していきました。
順調だったんですね。人の課題や悩みといったものは?
もちろんありました。独立して8年くらい経った頃でしょうか。初期から支えてくれた仲間に、これからどんな道を歩ませればいいか?と思い始めて…。またスタッフがだんだん増えていくなか、気づくと世代が縦に広がり、年代ピラミッドになっている。そうすると、中抜けが起きるんです。中間層のリーダーが離職したり…。
そこでスタッフを「縦割り」ではなく、「横割り」で分けたんです。「同世代」とか、「同じ感覚を持っている」など、お店ごとに分けていく。
きっかけは、10坪から始めた1店舗目が、ビルをまるまる1棟借りることになったときのことです。「若手チーム」「ベテランチーム」と、店舗ごとに分けてみたんです。若手は、クーポンなどで新規客を獲得したい、ベテランはいまの顧客を大事にしたい、と年代でやりたいことが違うんですよね。なので若手の店は教育をしながら、席数もあったので新規客戦略=数をとりにいく。ベテランの店は、単価・物販売上を上げてお客さま満足度を追求するロイヤルカスタマー戦略=質をとりいく。これをやったら半年後、それぞれの売上が倍になったんです。
それはすごいですね!
そうすると今度は、何が起きるか?若手は若手の仲間、ベテランはベテランの仲間を呼んでくる、といったように「求人」にもすごく効いたんです。
でも求人がうまくいっているとはいえ、美容学校生には、まだまだ知られていない。そこで、「原宿に出店しよう」と思いました。原宿に3店舗を出店したあたりから、新卒求人の手応えを感じるようになりました。
原宿って若い子の街じゃないですか。遊び心があって、ちょっとオタク気質のこだわり屋さん。でも、美容室の働いている人たちは結構大人というか、美容師になって10年以上のベテランの方が多いですよね。若い子がタピオカを買いにくる、その店に必要なのは単純に若い店員さんだと思うんです。僕も原宿にいたことがありますが、自分が原宿のこと考えちゃいけないなって。新卒1~2年目とかの若手スタッフに「好きなようにやっていいよ」と任せるようにしました。うちの会社の得意技なんですが、すべてを「文化祭・体育祭化してしまおう!」っていう考え。これが一番盛り上がります。スタッフが、やりたくてやるようになります。
スタッフに、完全に任せる?
もちろん事業計画をつくって、生産性基準をもうけたりはしますが、あとは「やっちゃいなよ!」っていう感じですね。スタッフも、「イメージをください」とか「何がおもしろいと思いますか?」って、僕にヒアリングはしてきます。「TikTok (ティックトック)みたいなのが、いいんじゃない?」「NiziU(ニジュー/日韓の9人組ガールズグループ)ちゃん、かわいいよね」「中華じゃなくて、餃子専門店みたいなのは?」とか、キーワードをバンバン出します。彼らも、自分のなかにあるものだけでやろうとすると、従来の美容サロンになってしまう。なので僕からちょっとお題を出せば、あとはどんどん動いてくれます。
下北沢発、原宿へ!
若者の心をつかみ年商10億円。