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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.36

実例編開始から1年、コロナ禍でも5件の施設契約

家族との時間をつくれる働き方をするため、働き方を考えて訪問美容を目指した枌(へぎ)翔平さん。当初はサロン勤務のかたわら訪問美容を行っていましたが、2020年2月に独立して訪問美容に専念。大阪で「T-salon」というブランドで活動しています。実質的な活動開始から1年足らずで独立までに至った枌さんの道のりと、これからの展望について語っていただきました。

枌(へぎ)翔平さん

訪問美容開始:
2019年
訪問施設数:
5施設(1回の訪問で3〜15名)
施設訪問頻度:
数日〜2カ月に1回
訪問個人顧客数:
1件
価格(カット):
2,200円〜、パーマ7,700円〜、カラー7,700円〜

Q

訪問美容に興味をもったきっかけは?

A

祖母の施設入所、家族との時間、美容業界の将来を考えたことでした。

長時間労働で家族との時間がもてなかった。

親が福祉関係の仕事をしていることもあり、福祉には以前から興味はありました。5年ほど前に、九州にいる祖母が認知症を患い施設に入所した際、親から「おばあちゃんの施設に美容師さんが来てるみたいだよ」と教えられました。「そういう仕事もあるんだ」とそのとき訪問美容について知ったんです。
 同じ頃、結婚して子どもが生まれ「家族との時間をもっともちたい」と考えるようになっていました。美容師の長時間労働には以前から疑問を感じていたものの、サロンに勤務している以上は仕方がありません。「家族と過ごすために美容師以外の仕事をするべきか?」とすら思っていました。そのときに、「美容師として今までと違う働き方はないか?訪問美容はどうなのだろう?」と考え始めたのです。

ネットで妻が見つけた「訪問美容ゼミ」に応募しました。

また、「少子高齢化でサロンに来られる人が減ってくる」というデータも耳にするようになりました。当時はサロンの店長を任されていましたが、自分の将来を考えたとき「サロンの経営者になるより、訪問美容の方が需要があるのでは?」と考えたんです。それでネットで調べたときに「trip salon un.」さんを見つけて、すでに訪問美容専任で活躍する方々がいることを知りました。
 そんな話を同じ美容師でもある妻と話していたら、「こんなのあるよ、応募してみたら?」と妻が見つけてくれたのが、ホットペッパービューティーアカデミーの「訪問美容ゼミ」二期生の募集でした。「応募しても受からへんよ」と口では言いつつ、基礎を学べたり成功している人の話を聞けたりするチャンスで「これは運命かも」と感じました。応募してみたら、見事合格。受講することができたのです。

  • 「訪問美容を始めたきっかけはひとつではなく、家族や美容をめぐる環境などいろいろなことが重なりました」と語る枌さん

Q

「訪問美容ゼミ」に参加し、実際に活動を始めていかがでしたか?

A

営業も施術も、初めてのこと。数をこなして経験を積みたいです。

美容師としての視野が広がったと思います。

「訪問美容ゼミ」は、ネットで見ていた方々が講師で、基礎知識だけでなくリアルな成功体験などを聞ける貴重な場でした。ただ教えてもらうだけでなく、自分で計画したことに対してアドバイスをいただけたり、困っていることを相談できたり、心強い存在でした。
 ゼミに入って、訪問美容だけでなく店舗経営に対しての発想も広がるように感じました。たとえば「サロンをバリアフリーにしよう」などですね。さらに高齢者や介護業界の事情などについて知るだけでも、美容師としての視野が広がりました。オシャレなトレンドを追うだけでない、美容師の役割が見えてきたというか。訪問美容はサロンとしての幅を広げるひとつにもなるのではないかと思いました。

  • 枌さんがネットで見ていた「trip salon un.」さんも講師を務めた「訪問美容ゼミ二期生」の修了式

未経験の営業だからこそ、場数が大事だと思いました。

美容師のほとんどは営業経験はないですよね。施設に営業に行くことは、私も今でも大変だと感じています。でも、やったことがないからこそ、場数を踏まないとできるようになりません。「断られて当たり前」という気持ちで、今までに飛び込みで200件くらいの施設に営業に行きました。電話だと相手の表情がわからないので、私には飛び込みの方が合っていると思っています。
 たくさんの施設を回るために、自治体のホームページにある高齢者施設のリストだけでなく、施設職員募集の求人サイト、入所者募集サイト、新しくできる施設の内覧募集の不動産サイトなど、さまざまな情報源にアクセスしました。
 1度の訪問で契約できることはほぼないので、初回で断られても芽がありそうなところには2度、3度と足を運んでいます。施設の方との会話や相手の方の表情などで、少しでもこちらの話を聞いてくれそうな気配があるかはわかりますよね。
 たとえば初回訪問時は「時間がない」と言われてチラシだけ渡しておいた、新しい施設がありました。翌週うかがってみると、チラシの内容をじっくり読んでくださって私の訪問美容への想いに共感していただき、契約できたところもあります。

  • 枌さんの訪問美容の姿勢やアピールポイントを簡潔にまとめたチラシを営業先で配っている

経験が少ないうちは有料老人ホームからスタートしました。

現在契約いただいている5施設は、いずれも有料老人ホームです。有料老人ホームの入所者さまは比較的美容にお金をかけられる方々です。また、特別養護老人ホームなどに比べて要介護度が低い方が入所されています。最初はまだ施術経験が浅いので、そうした方々をメインで考えたのも有料老人ホームを中心に営業してきた理由のひとつです。
 営業活動と並行して、雇用保険の教育訓練給付金制度を使って、民間の専門学校の通信制コースで介護福祉士実務者研修の勉強をし、資格を取りました。資格がなくても訪問美容はできますが、知識があると施設側への安心材料になります。また、自分も要介護度が高い方々の施術にも挑戦できる自信にもなり、グループホームなど営業先を広げています。

Q

訪問美容を実際にやってみた感想は?

A

契約が取れ始めてすぐコロナ禍の緊急事態宣言となり、大変でした。

相手の表情が見えにくい状況の営業はむずかしく感じることもあります。

「訪問美容ゼミ」では、基本知識などを学びながら、自分たちで営業活動などを実践していきます。私はゼミ期間中に1件の施設と契約でき、その他の数カ所とも話が進んでいました。昨年の1月にゼミが修了すると、「よし!訪問美容に専念するぞ!」と勤務していたサロンを退社。自分の訪問美容ブランドである「T-salon」を立ち上げました。その矢先にコロナ禍が来たのです。
 契約していた施設からは「サービスを止めると認知症の方は症状が進んでしまうので、施術に来てもらえるとありがたい」とおっしゃっていただき、予防対策を十分にしたうえで施設に継続してうかがっていました。普段も密になるような場所には行かないように心かげています。
 しかし、緊急事態宣言中は営業に行ける空気ではありませんでした。基本は自粛しながら、話が進んでいた施設にときどき行ってみましたが「面会中止」の貼り紙などがあると遠慮したり。緊急事態宣言解除後も、入口で断られるケースが増えたことは確かです。話を聞いていただける場合でも、ソーシャルディスタンスを取ってお互いに違う方を向いて会話しています。マスクもしているので職員の方の表情がわからず、反応が読み取りにくいこともあるので、コミュニケーションの方法を変えていく必要があるかもしれません。
 それでも、緊急事態宣言前に種をまいておいた4施設からコロナのさなかに契約をいただけたのは、ありがたいことだと感じています。

  • 営業範囲は車で1時間以内の施設に絞っている。施術の際は自家用車にシャンプー台や掃除道具などを積んで訪問

家族と過ごす時間が圧倒的に増えました。

訪問美容をやってよかったのは、サロンでの施術以上に利用者さまたちに喜んでいただけることです。高齢者の方は喜怒哀楽が表情に出やすいので、本当に喜んでいただけていることがわかります。「こんなおばあちゃんをキレイにしてくれてありがとう」と言われると、心からうれしくなりますね。
 また、労働時間が大きく変わりました。施設での施術は早いときで8:30頃から始まりますが、終わるのは遅くて17:30頃。それ以降の時間は家族と過ごせ、5歳と1歳の子どもたちの成長の様子を日々見られることが、何よりやってよかったと感じるときです。

  • 「コロナ禍でもキレイでいたいお気持ちは変わらないので、お呼びいただければ駆けつけています」と枌さん

Q

今後の展望はどのように考えていますか?

A

施設も在宅も訪問数を増やしていきたいです。

コロナ禍で施設営業が難しい分、在宅に目を向けたいです。

自分としては、本当は今頃は10件くらいの施設と契約が取れているイメージでした。コロナ禍の影響で今はまだその半分です。15件くらいまではひとりで訪問できる試算なので、営業にもさらに力を入れたいと思っています。また、在宅のお客さまも増やしていきたいと考えています。サロン勤務時代のお客さまに介護関係のお仕事をされている方がいて、その方にケアマネジャーさんたちをご紹介いただき、私が訪問美容をやっていることをお伝えさせていただきました。地域包括支援センターなどにも行く予定です。
 妻は子育てをしながらパートで美容師に復帰していますが、施設や在宅のお客さまが増えれば、一緒に訪問美容をやっていければと話しています。

  • 「今後は在宅も増えそうです!」と、厳しい時代でも前向きに活動を続ける枌さん

枌さんさんからひとこと

 「訪問美容をやりたい」と思っていても、営業の辛さやコロナ禍で立ち止まってしまうこともあるかもしれません。でも、初心の「やりたい気持ち」を忘れずに、突き進んでほしいと思います。その先で出会える利用者さまたちの笑顔は、そんな大変さをすぐに忘れさせてくれます。サロンのお客さまは翌月にまた来てくださるとは限りませんが、訪問美容で契約が取れれば、よほどのことがない限り翌月も訪れることができます。また、少人数から始めた施設が入所者さまが急に増えていったり、契約している施設が新しい施設を開所したりして、仕事が広がっていくこともあります。私自身もそうしたことを経験しています。訪問美容は美容師にとって希望がひらけていく事業だと思います!

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