イノベーターが
見ている未来
vol.60
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
SALOWIN
阿部 友哉さん (age.32)
美容師向けシェアサロン「SALOWIN(サロウィン)」は2019年9月・原宿に1店舗目をオープン。その後、表参道・池袋・原宿・渋谷・銀座と立て続けに出店し、現在は計6店舗展開。2020年11月、ベンチャーキャピタル「HIRAC FUND」より資金調達を行ったことでも話題に。業界の中でも高水準の「技術売上歩合80%還元」が可能な理由。そして、阿部さんが美容師のために、シェアサロンで叶えたいものとは?
https://salowin.jp/
第1章ITベンチャーから美容業界へ
「特にカッコつけたいとかはない。
美容師が主役で輝ける場所を作る。」
阿部さんは、コンビニチェーンの日本法人本社、大手ヘアメイク専門サロン、ITベンチャーという経歴なんですね。なぜ、シェアサロンを始めようと思ったのでしょう?
ヘアメイク専門サロンでは、エリアマネージャー・店舗開発業務に携わっていました。そこで、業界全体への課題を感じたこともあり、いつか美容業界で起業しようというのは、ずっと考えていて。課題を解決できる方法として「シェアサロン」を始めることにしました。
「美容業界の課題」というのは?
よく言われるのは、低年収とか労働環境が悪いとかそのあたりですよね。そして、この原因として標的に上がりやすいのは、一部の美容室オーナーが取り過ぎていることや、リクルートさんが運営するホットペッパービューティーの掲載料が高すぎるなどですよね(笑)。
ただ、個人的には、「非稼働時間」が相当あるんじゃないか?と思うわけです。
「非稼働時間」とは、要は席を使っていない時間のことですね。大半の美容室は、土日の需要に対応するために席数が余剰になっており、平日は無駄なコストを支払っている状態だと思います。
もし、すべての美容室が土日も平日も客数の波がなく、「非稼働時間」を最小に抑えることができれば、売上が1.5倍~2倍くらいまで伸びるはずです。そうすれば、給料だって2倍出せるかもしれません。逆に、常に忙しいので、「帰れるときはさっさと帰って休息しましょう」って話にもなりますよね。
シンプルにこの課題解決策をダイレクトにやるためには何が良いか?という問いに対して、「シェアサロン」が回答でした。
ただ、上記はあくまで仮定で、本当にできるのか?と疑心暗鬼でもありましたので、何度も何度もシミュレーションして「この水準だったらギリギリいけるかな?」ってところでスタートさせました。
シェアサロンで、実現させたかったことは?
最初に、美容業界で達成したいミッションを掲げました。「美容師の所得向上」「労働環境改善」「一生涯働ける場所の提供」の3つ。それを叶えるための、シェアサロンです。
美容師って本当にかっこいい仕事だと思っていて、自分の腕ひとつで、お客さまを笑顔にできるし、その人の人生を変えるきっかけを提供できる仕事です。
だからこそ、美容師が輝ける舞台を提供したいと思っています。
逆に、経営者として有名になり、お金を稼ぎ、成り上がって高級車を乗りまわしたいとかは全く思いません。「自転車で十分でしょ」と思いますし、そこで節税するなら投資しますよね(笑)。
そんなことよりも、自分が提供する価値が市場にどう受け止められるのか?そこに、おもしろさを感じていますし、ミッションを実現させることが経営者としてのかっこよさだと思っています。
ITベンチャーで働いていた経験は、活かされていますか?
いろんな場面で、めちゃくちゃ活きていますね。ITに直結することだけではなく、財務のPL・BS・CF、事業計画、人事・採用、労務、総務、営業、編集と、全部を順番にやっていったので。それらをやりながら、当時社長だった柴田(ITベンチャー「サムライト」創業者)と、事業アイデアの壁打ちをたくさんしました。業界問わず、100アイデアくらい。今もそのクセが残っています。
たとえば他社さんが「こういうことやります」とリリースを出したとします。自分がその会社の経営者だったら、なぜその選択をしたのか、そこに投下するコストはどのくらいか、など細かい金額を全部調べて、シミュレーションして、このくらいで回収するのか、と考えます。それが今に一番、活きていることですね。
現在、SALOWINの本部は、僕とマネージャーである中山の2人だけで運営しています。やることは多いですが、効率的に運用できる仕組みをつくって、少しでも美容師に還元したいと思っています。
シェアサロンの新風、現る!
歩合80%還元は、なぜ可能?