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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.39

実例編スタッフと共に訪問美容で月200名施術!

湘南の海沿いで、バリ島をイメージした癒しのトータルサロンとして人気の「ANT'S Southern Resort 茅ヶ崎店」。同店を始めとする3店舗を経営する松竹尉匡(まつたけやすまさ)さんは、2010年に独立する前から訪問美容を志していたといいます。当初はひとりで業務委託による請負で始めましたが、その後訪問美容を志願するスタッフたちが入社し今では事業の柱のひとつになっています。「ANT'S」の訪問美容が発展してきた道のりについてお話を伺いました。

ANT'S Southern Resort 茅ヶ崎店

  • 全スタッフ24名
  • 3店舗
オーナー:
松竹尉匡さん
訪問美容開始:
2014年
訪問施設数:
10施設(1回の訪問で数名〜50名)
施設訪問頻度:
1週間に1回〜月に1回
訪問個人顧客数:
約10件
個人顧客訪問頻度:
1カ月に1回
訪問スタッフ:
5名(兼務)*育休中のスタッフが他に2名
価格(カット):
1,900円〜、パーマ4,600円〜、カラー4,600円〜

Q

訪問美容との出会いは?

A

理容室を営む実家の両親が、昔からやっていました。

実家も勤務していたサロンも訪問理美容をしていたので、自然の流れでした。

私は長崎で理容室を営む両親のもとで育ちました。私が中学生の頃から、両親は休みの日に施設へ訪問理容に通っていたのです。だから私にとって訪問理美容は普通のことでした。スタイリストとしてサロンに勤務していた頃も、オーナーが「これから必要になることだ」と、訪問美容を始めていました。当時は私自身は担当していませんでしたが、「将来独立したら、自分も訪問美容をやりたい」と自然に考えるようになっていたんですね。地域に根ざしたサロンをつくりたいと思っていましたので、お子さまから高齢者の方まで愛されるサロンにするには、訪問美容も視野に入っていました。

他のサロンの業務委託として、私個人で始めました。

「ANT’S」を創業したのは2010年。まずはサロンを軌道に乗せなければなりませんので、独立してすぐに訪問美容を始めたわけではありませんでした。スタートしたきっかけは、経営の勉強会に参加したときに、訪問美容をやっている別のサロンのオーナーの方からのお声掛けでした。「訪問スタッフが事故に遭い働けない状態なので、手伝ってもらえないか?」と言われ、そこの業務委託として私が施設に行くことになったのです。そのときは「ANT’S」としてではなく、あくまで私個人として約1年間実施していました。

  • 「中学生の頃から訪問理容を見て育ったんです」と松竹さん。訪問理美容への心のハードルはなかったそうだ

Q

ひとりでの訪問美容からサロンでの活動になった経緯は?

A

私が感じた充実感と、スタッフの存在、フランチャイズの声かけが結びつきました。

訪問美容はありえないくらい大変、でもそれ以上に充実していました。

認知症の方や車イスの方にそれまで接した経験がありませんでしたから、最初はサロンワークとの違いが多くて戸惑いましたね。サロンとは設備も全く違いますし、私もご利用者さまも無理な体勢で施術することがあり、毎回疲労困憊。ありえないくらい大変だと思いました。でも、施術が終わったときに喜んでくださる様子が、今まで感じたことがないくらいうれしかったです。「サロンであんなに喜んでもらえることはなかった」と感じたほどです。その感動や、社会貢献につながっているという充実感は、大変さをずっと上回っていました。

タイミングよく、訪問美容のフランチャイズの声かけがきた。

私がひとりで訪問美容を行っているころ、介護福祉士の資格ももち、介護の現場での勤務経験のある朝倉由奈が入社してきました。朝倉は学生時代から福祉と美容を志しており、入社当初から「訪問美容をやりたい」と言っていました。まだその頃彼女はアシスタントでしたし、サロンとして始めるには時期尚早と思っていました。それで、「君がスタイリストにデビューしたら一緒に始めよう!」と伝えていました。
朝倉がスタイリストデビューして2年ほど経った2014年、岡山の知人が「ビーサポ」という訪問美容のフランチャイズチェーンを立ち上げることになりました。そのときに声をかけられ、うちのサロンを「ビーサポ」の神奈川支部にすることにしたのです。当時は私と妻、朝倉の3人体制でサロンとしての訪問美容をスタートしました。

  • 訪問美容を志して「ANT'S」に入社するスタッフも多数。予約数が多いときは、5名のスタッフで訪問することもある

  • どのスタッフも、施術後にキレイになって喜ぶご利用者さまの笑顔に力をもらえていると語る(写真はコロナ禍前のもの)

Q

サロンで始めてからどのように広がっていますか?

A

契約施設が増え、多くのスタッフが参加して、やりがいを感じてくれています。

フランチャイズのサポートは立ち上げ支援が中心で、実質は自分たちでやっています。

フランチャイズ本部からは、立ち上げ当初に営業ツールや施術の道具の紹介をもらったり、営業同行してもらったりしていました。チェーンとして広報してもらえるメリットもあります。営業はある程度軌道に乗ってからは自分たちに任せられています。
営業方法は、サロンの所在地である茅ヶ崎市や近隣の藤沢市のホームページから、介護施設のリストを入手することから始めました。私自身が営業で心掛けたのが、「決裁権者である施設長さまと会う」ことです。簡単なことではありませんが、まずは飛び込みで施設に回りました。そのときは施設長さまに会えずに終わることが多いですが、一度訪問していれば後日お電話したときに「先日お伺いした訪問美容のビーサポ神奈川です」と伝えやすくなり、施設長さまにおつなぎいただけることもあるのです。
また、サロンで培った技術とサービスには自信をもっています。そこで、「無料でもいいから一度お試しで施術させてください」とお試しから契約に結びついたこともあります。最初は数人の施術だったのが、施設の方全員へと広がっていったところもあります。
契約施設が増え、訪問美容をやりたくて「ANT’S」に入社してくれるスタッフも増えてきました。現在は10施設に、月間平均で約200名の施術をできるようになり、スタッフに訪問美容を任せて、私はマネジメントとサロンワークに徹することができています。

訪問美容希望者以外のスタッフも参加してくれています。

実は、訪問美容の主力メンバーだった朝倉と、朝倉同様に介護福祉士の資格をもった大河原夏実の2名が現在育児休業中です。ふたりが同時に育休に入ることが決まったときに、辻堂本店の店長の川内辰志にヘルプを頼んだところ快諾してくれました。いまは川内と、介護施設で勤務経験のある山口莉奈が中心となって担当してくれています。うちのサロンでは、基本的に全スタッフが月に1回は訪問美容に行くことにしています。スタッフたちの技術の幅を広げておくことが、彼らの将来的なキャリアサポートにつながると考えているからです。

新しいことを学べ、日々喜びをもらえるのが訪問美容。

(現在訪問美容を担当しているスタッフ2名の感想)
川内辰志さん「サロンの事業の一環だったので、もともと訪問美容に興味はありました。サロンとは全く勝手が違うことができるので、新しいことを学べて楽しいです。店長になってもまだ知らないことが多く、自分の成長の伸び代を感じられます。施設ではサロンよりも短時間で多くのご利用者さまの施術をする必要があります。そのことでさらに技術を磨くことができるので、若手の技術教育にもなると考えています」

山口莉奈さん「祖母が美容師だったので、美容師にあこがれていましたが、高校卒業後は介護施設に就職。でも働きながら美容師への想いが高まってきて、美容師の資格を取りました。そのときに訪問美容をやっている『ANT’S』の存在を知って入社させてもらいました。施術をして鏡をお見せした瞬間のご利用者さまたちの笑顔は、何ものにも代えがたいやりがいを感じます」

  • 現在の訪問美容中心メンバーの川内さん(右)と、山口さん(左)。施設に行く際は、車で移動する

  • 訪問美容専用道具のひとつであるシャワー台とイス。車利用のため、こうした道具も施設に運んでいける

Q

今後は訪問美容をどのように展開していきたいですか?

A

サロンと訪問美容をつなげて、すべての人に美容を提供できるようにしたいです。

ひとつのご家族でサロン、ご自宅、施設と、どこでもお付き合いしていきたい。

独立したときからの夢だった「地域に根ざしたサロン」が、訪問美容の導入によって実現しつつあります。お子さまから高齢者の方まで、ご家族全員の美容に携われるようになることが理想です。ライフステージのなかで訪問美容が必要とされるのは高齢者の方だけでなく、子育て中の方の場合もあります。サロンに来ているお客さまが高齢になって通えなくなり、ご自宅に施術に伺っているケースもあります。
川内たちも地域包括支援センターでケアマネジャーさんたちから居宅のご紹介をいただくことも増えてきています。ひとつのご家族に対し、サロン、ご自宅、施設と関われる場所が複数になっていけたらいいですね。

  • 訪問美容の営業用のチラシ。営業先の施設などで配布するだけでなく、サロンにも貼ってあるので、お客さまたちに認知されている

スタッフが長く働ける手立てとしても訪問美容は必要。

長崎の私の両親は現在75歳になりますが、今も現役で訪問理容も続けています。両親自身と同じ年齢の人の施術もしているのです。そのくらい訪問理美容は、美容師、理容師にとって生涯つづけられる仕事だと、両親が背中で見せてくれています。私はスタッフたちにも、出産や子育てで働けない時期が一時的にあったとしても、美容師という素晴らしい職業を長くつづけてもらいたいと願っています。そのためのベースづくりが経営者の仕事で、そのひとつが訪問美容だと思っています。

  • スタッフの幸せを第1に考えている松竹さん。川内さんも「社長を全面的に信頼しています」と語っていた

松竹さんからひとこと

訪問美容を始めるなら、経営者の視点としては、規模や売上予想などはある程度決めてからの方がよいと思います。サロンと同価格が理想ではあるものの、どうしてもサロンより低価格で設定されがちのため、細々とやるには生産性が高いとは言えないからです。私のまわりでも。「訪問美容を始めてみたけれど、売上につながらないから辞めた」という方も何人かいらっしゃいます。本気で事業の軸とするなら、定期的に訪問できる施設やお客さまを獲得しないと長つづきはできず、つづけなければ事業として形になりません。しかし、今後は必ず需要が増える仕事ですから、いつ本気で始めるかではないでしょうか?

Salon Data

ANT'S Southern Resort 茅ヶ崎店【アンツ サザンリゾート チガサキテン】

アクセス
JR茅ヶ崎駅南口から徒歩15分
創業年
2010年
店舗数
3店舗
設備
セット面9席
スタッフ数
24名(全店舗)
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000183871/
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