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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.42

実例編ブランク10年を経て、訪問美容で独立!

長野県・松本市で、訪問美容を営んでいる遠山光子さん。独立当初は訪問美容専門での活動でしたが、お客さまたちからの要望により、この6月からサロンもオープンさせました。3人の子育てをしながら、10年間仕事から離れたり、美容師以外の仕事をしていた時期もあったと言います。「自分がやりたいこと、自分らしい働き方を模索した結果が今」と語る遠山さんの、美容師としての道筋、訪問美容にかける想いについて伺いました。

ヘアーサロン たんぽぽ

  • 全スタッフ1名
  • 1店舗
オーナー:
遠山光子さん
訪問美容開始:
2015年
訪問施設数:
3件(1回の訪問で1名~4名)
施設訪問頻度:
月に3回
訪問個人顧客数:
約40件
個人顧客訪問頻度:
月に1~2回
訪問スタッフ:
1名
価格(カット):
3,850円〜、パーマ1万450円〜、カラー9,350円〜

Q

訪問美容との出会いは?

A

美容師としてのキャリアのなかで、たびたび出会いがありました。

アシスタント時代に施設でボランティアカットしたのが最初でした。

介護施設での施術を最初に経験したのは、アシスタント時代でした。勤務していたサロンがボランティアで介護施設のカットを請け負っており、アシスタントたちにとってはカットを勉強させてもらう場でもありました。でも当時から、どの利用者さまに対しても短く刈り上げるスタイルばかりなことに疑問を感じていました。
また、サロンのお客さまも「将来自分が施設に入所したら、髪形は短くされちゃうんだよね」とおっしゃっていました。「高齢になって介護施設に入ったらおしゃれできないことが当たり前」と考えられていたんですね。私はお客さまがいくつになっても美しくなることを諦めてほしくないので、その風潮はおかしいとずっと思っていました。

10年間の育児ブランク後に勤務したのがバリアフリーサロンでした。

私にはすでに成人している子どもが3人います。1人目の妊娠の時は、美容師として「さあ、これから!」という時期。夫が転勤族だったこともあり、サロン勤務での仕事と育児の両立は難しく、一旦退職しました。約10年間、専業主婦をする間に子どもを3人もうけました。子どもたちの進学に合わせて、夫は単身赴任、私と子どもたちは松本市に腰を落ち着けることなり、それをきっかけに仕事復帰を考えたのです。
仕事を休んでいる間に、将来自分たちの親が要介護になる可能性も考えてヘルパー2級(現・介護職員初任者研修修了者)の資格を取っていました。「人に喜んでもらう」という意味では美容と福祉は密接につながっていると感じていたので、仕事復帰は美容にこだわらず、介護系の仕事でもいいと考えていたこともあります。でも、「やっぱり美容の施術がしたい!」という気持ちがむくむくとわいてきて。子育てしながらパートで働けるサロンを探していたところ、見つけたサロンがたまたまバリアフリーサロンの支店でした。高齢の方や病気があるお客さまが多かったり、本店の社員は訪問美容もしていました。私もやりたかったのですが、パートは出張訪問はさせない方針だったため、残念ながら当時はまだ叶いませんでした。

小児ガンのお客さまとの出会いで、本格的に訪問美容を模索。

そんなときに、小児ガンのお客さまとの出会いがありました。抗がん剤の副作用で髪が抜けていたため、ご家族からウィッグカットの依頼を受けたのです。でも、パートは出張訪問ができないと思い込んでいたため、「ご自宅には伺えないのでご来店いただけませんか?」とお願いしてしまったのです。1度はご来店いただいたものの、その後ご家族から、その患者さまが体調を崩したと伺い、「なぜご自宅に行ってさしあげなかったんだろう」と後悔しました。ほかにも、同様のお客さまや車いすでご来店されるお客さまたちから、「家に来てほしい」という要望が多かったのですが、パートは出張させないというサロンの方針に考え方の違いを感じ、サロンは退職しました。
「サロンで無理なら自分でやればいい」と思い立ち、福祉美容の学校に通って知識と技術を学びました。
学校で同じ志をもつ意識の高い仲間と出会い、訪問美容への気持ちがますます高まっていったように思います。

  • 「紆余曲折を経て、アシスタント時代から興味をもっていた訪問美容で独立することができました」と語る遠山さん

Q

実際の訪問美容はどのようにスタートしたのですか?

A

福祉系の場所にとにかく顔を出しました。

美容以外の手伝いなどをして、人として信頼してもらうことから始めました。

福祉美容の学校で福祉美容師の認定証を受けたのをきっかけに、本格的に営業を始めたのが2015年です。訪問美容専門の美容師として「たんぽぽ」というブランドで名刺とチラシを作り、社会福祉協議会や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所などに挨拶回りに行きました。また知人に介護施設を紹介してもらったりしていました。
いろいろな施設に顔を出しながら、1〜2回サービスで施術したことがきっかけで契約に結びついたのが最初だったと思います。また、社会福祉協議会でご挨拶していた施設から、2~3年後の忘れた頃にお声がかかったこともあります。
私は自分をアピールすることが苦手なんです。そのため、営業は大変だと感じていましたが、とにかく顔を覚えてもらおうと、用事がなくても足繁く社会福祉協議会などに通ったり、友人がダンスを教えていた障がい者の方のサークルでお手伝いなどをしていました。また、ヘルパーの資格を活かして介護職として施設にボランティアに行き、人として信頼してもらう努力もしました。そんななかで「実は美容師の資格をもっている」と伝えたことをきっかけに、施術ができるようになったこともあります。

相手の気持ちに寄りそう努力を。

私は高齢者の方だけでなく、発達障害の方やガン患者の方など、サロンに来られないさまざまな方々の、「キレイになりたい」という気持ちに応えていきたいと願っています。みなさんそれぞれに美容に対する要望や、誰かと話したいというお気持ちがあるので、そうした想いを伺うことも大切にしています。対話することで少しでも気持ちをラクにしてさしあげられたらと、準傾聴療法士の資格も取得しました。サロンワークでもそうですが、訪問美容では特に話を聴くことが施術時間の大切な要素だと日々感じています。

  • 自身のキャラクターが伝わるようなチラシを作り、福祉関係の協議会などに足繁く通っていた

Q

最近サロンをつくられた理由は?

A

「外出できるようになったらサロンに行きたい」というお客さまのためです。

居抜き物件を見つけ、すぐに契約しました!

5年余り訪問美容専門で活動してきましたが、以前サロン勤務していた頃のお客さまから、「遠山さんにカットしてほしい」とご連絡いただくこともありました。発達障害や病気療養中の方々は外出できるようになることも目標のひとつで、「外出できるようになったらサロンに行きたい」とおっしゃる方もいました。そうしたことから、「自分もサロンを構えるべきか」と考え始めていたんです。
そんなときタイミングよく美容室の居抜きの物件情報があり、すぐに契約して今年の6月にサロンをオープンしました。
病院や施設、ご自宅で療養が長期にわたる方々にとって、「サロンに行く」ということはイベントであり、楽しみでもあるので、それを叶えてさし上げられる場所になればと思っています。サロンも私ひとりでやっているため、水曜日は訪問美容限定としてサロンは定休日とし(火曜日はサロン・訪問美容とも定休)、他の日は訪問美容の予約がなければ営業しています。

Q

今後はどのように発展させていきたいですか?

A

訪問美容でサロン以上の満足感をお客さまに提供したいです。

施設側から料金の値上げを提案いただきました。

どのお客さまも同じように短くカットする施術ではなく、一人ひとりのお客さまの要望にそってキレイにするのが私の目指す訪問美容です。料金もサロンと同等に設定しています。でも、実は、最初に契約いただいた施設では他の訪問美容業者も入っていたため、そこと合わせてもっと低価格でやっていました。料金は低くても、丁寧な施術や、おひとりからでも請け負うことで差別化を図ってきました。するとある日、施設の方から「ここまでやってくれるならもっと値上げした方がいいのでは?」と提案してくださったのです。真摯にお客さまと向き合って仕事をしていれば、評価してくださる人がいることが嬉しかったです。

訪問美容ではハンドケアなどのオプションをサービスで。

訪問美容を必要とされる方々は、外出が困難な方々です。以前はサロンに出かけて行って、キレイになることが楽しみだったのに、それが叶わなくなってしまった。そんな方々に対して訪問美容で、サロンと同等ではなく、サロン以上のサービスをしてさしあげたいと思っています。例えば、ハンドケアや眉カットなど、サロンでは別メニューにしているオプションも、訪問美容ではカットのお客さまにサービスでやったりしています。特にパーマやカラーなどは薬剤を定着させる時間があるので、その時間にハンドケアなどをすることで、オリジナリティーを出しています。
訪問美容のお客さまは、「来てくれるだけでありがたい」とおっしゃって、こちらにいろいろ気を使っていただくことが多いのですが、お金をいただいている以上、気を使うのはこちらの仕事です。特に、私のお客さまはご高齢で「お見送り」が近い方が多くいらっしゃいます。これからも施設やご自宅にいながら、サロンに行ったとき以上の満足感を提供できるよう、サービスを考えていきたいです。

  • 「お客さまの要望に合わせたこまやかな施術やサービスは、単独でやっているからこそできることかもしれません」と遠山さん

  • 自身の判断と裁量ですべてできることが、個人活動のメリットであり差別化ポイントになると考えている

遠山さんからひとこと

訪問美容に少しでも興味をもったら、実際にやっている美容師さんに一度同行させてもらうことをおすすめします。現場で仕事を直接見ることで、サロンワークとの違いなどを実感できると思います。高齢者の方や障がい者の方の施術はマニュアル通りにいかないことが多く、臨機応変の連続です。それを見ておくことで、ご自身が始めるときのヒントがたくさんあると思います。そして、営業は足を使うこと。私も社会福祉協議会などに通うことで契約に結びつきました。営業も施術も、生の経験が大事なのではないでしょうか。

Salon Data

ヘアーサロン たんぽぽ【ヘアーサロン タンポポ】

アクセス
南松本駅から徒歩16分(車で5分)
創業年
2021年
店舗数
1店舗
設備
セット面2席
スタッフ数
1名
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000559826/
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