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結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.10一般企業に負けない福利厚生にこだわる。
    「美容師になって良かった」と思える環境に。

vicca 表参道店/ヘアサロン

東京都渋谷区

2010年に表参道店、翌年に南青山店、そして今年3店舗目を同じく表参道にオープンした「vicca」。店舗を経営していく上でオーナーが目指したのは、「一般企業に負けない福利厚生」でした。想いを形にするためにゼロから研究とリサーチを重ね、さまざまな制度を策定。その取り組みをお伺いしました。

1取り組み

「短時間正社員制度」を導入し、
時短勤務でも正社員として雇用。

どういう制度?

 ママスタイリストなどがフルタイム勤務に比べて働く時間が限られる場合、「非正規」での働き方を選択せざるを得ないことも多い。しかし同店では、厚生労働省が普及をはかる「短時間正社員制度」を導入。時短でも週30時間以上の勤務を条件に、「正社員」として雇用し、パートやアルバイトは雇っていない。

メリットは?

 正社員にする最大のメリットは、健康保険や厚生年金保険などの福利厚生を与えられること。「福利厚生を整えれば、もっと美容師になりたい人や続けられる人が増える」というオーナー。スタッフのモチベーションアップや優秀なママスタイリストの雇用にもつながっている。

現在、時短勤務中のマネージャー石垣さんも正社員として働き続けている。

現在、時短勤務中のマネージャー石垣さんも正社員として働き続けている。

2取り組み

就業規則、服務規律規程、給与規程を作成し、
スタッフに説明。

どうやって作った?

 「はじめは知識がなかった」というオーナー。社労士に相談し、自らも勉強してサロンオリジナルのものを作成した。「就業規則」には労働時間や休日、代休、産休・育休などについて、「服務規律規程」にはスタッフとお客さまとのトラブルを防ぐための禁止事項などについて記載。「給与規程」には基本給や賃金の計算方法のほか、家族手当や住宅手当などの規定も明記されている。

活用方法は?

 まずスタッフの入社時に渡し、内容を説明。休日や産休制度などの知識の定着をはかり、女性スタッフだけでなく、若手スタッフにも不安なく働いてもらうための施策となっている。

「就業規則」には、妊婦検診等に行くための「通院休暇」など、女性のための規則もしっかり。

「就業規則」には、妊婦検診等に行くための「通院休暇」など、女性のための規則もしっかり。

3取り組み

ママスタイリストがより長く働けるよう、
平日は9時半から営業を開始。

どんなしくみ?

 17時に仕事を終えないと子供のお迎えに間に合わないママの場合、11時にオープンすると1日に働けるのは休憩を取らなくても6時間程度。それではなかなか売り上げをあげることができないのが現状だ。そこで11月から表参道店の平日のオープン時間を11時から9時半に繰り上げ、ママスタッフがより長く働けるような営業時間に変更する予定だ。

取り組んだきっかけは?

 20代で朝から晩までずっと練習してきた女性たちが、せっかく身につけた技術を腐らせてしまうのは、本人にも美容業界にももったいないこと。「このような女性たちを雇用し続けなければ、美容院は繁栄しない」と考え、働き続けられるよう規則や環境を整えてきた。朝、オープン前にアシスタントが練習する場所がなくなることがネックになっていたが、近くに新店舗を開店したことで解決。表参道店のスタッフも、練習は「vicca ‘ekolu」で行うことができる。

表参道店の近くに開店した「vicca ‘ekolu」。平日は11時オープンのため、スタッフは遅番の時など朝の練習を行うことができる。

表参道店の近くに開店した「vicca ‘ekolu」。平日は11時オープンのため、スタッフは遅番の時など朝の練習を行うことができる。

4取り組み

スタッフ間での歩合分割。産休・育休への展開を予定。

どういう制度?

 雑誌のヘアメイクなど、日時が決められている仕事を指名で依頼された場合、予定が合わずにほかのスタッフに仕事を回しても、ギャランティの一部を歩合として受け取れる仕組み。自分でその仕事を受けられなくても、今までの実績で依頼がきたことへの報酬としている。現在はサロン外でのヘアメイクの仕事で活用しているが、今後は産休スタッフと引き継ぎスタッフの間でも、割合を変えて取り入れていく予定。

メリットは?

 どちらのスタッフにとってもギャランティが増えるうれしいしくみ。産休・育休の場合は、お客さまの信頼を得てきたそれまでのがんばりに対する対価でもあり、産休・育休中のスタッフにとっては貴重な収入となる。

オーナーインタビュー

2010年に表参道にて開業したvicca表参道店。オーナーの中澤好夫さんは、創業時より、福利厚生や労務環境の整備に力を注いでいる。

Q. 美容業界の課題は?

A. 企業努力を怠ってきたことを、反省しなくてはいけないと思います。

 今までの美容業界は、そのつもりはなくても、結果的に「使い捨て」にするような環境。かつては人気の業界だったのに、これでは「将来、何をしようかな」と思っている人たちがこの業界を選ばないのも仕方がないと思います。
 美容師が加入できる国民健康保険組合の保障内容ひとつをとっても、がんばっていても、ほかの企業に比べると差があると言わざるを得ないのが現実です。でもこれからは、大手企業には勝てなくても、それに匹敵するような福利厚生を用意しないといけないと思っています。
 オーナーの仕事はヘアデザインではなく、どうやってスタッフたちを幸せにするか。20年経ったときに「ここで働いてよかった。美容師になってよかった」と彼らが思えるように努力しないといけないし、そういう姿勢がスタッフたちのがんばりにもつながると信じています。

Q. これからやりたいことは?

A. 社員が自由に勤務時間を決められる「自由出勤制度」

 IT会社などは家でも仕事ができるから在宅勤務を認めていると思いますが、これからの時代、美容師にもそういう働き方があっていいと思います。お客さまの予約に合わせて出勤し、週に1、2回はアシスタントの教育に携わる。その体制でもしっかり給料を稼げるしくみがないと実現は難しいと思いますが、これからそのしくみを考えていきたいと思っています。

Salon Data

vicca 表参道店【ヴィッカ 表参道店】

アクセス
千代田線明治神宮前駅・表参道駅から各徒歩4分。JR原宿駅から徒歩6分。
創業年
2010年
店舗数
3店舗
設備
8席 ※vicca 表参道店
スタッフ数
7名(うちスタイリスト4名、アシスタント3名)※表参道店
URL
http://beauty.hotpepper.jp/slnH000170741/
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