女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.383人に1人がママスタッフ。
「妊婦は幸せでなければいけない」とういネイルサロンの取り組みとは?
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ネイルサロン&スクール スクエア
広島市中区
ネイルスクールを併設し数多くの一流ネイリストを輩出、圧倒的な技術力で人気のネイルサロン「スクエア」。今年の「ネイルグランプリ」で決勝大会出場の5サロン中、2サロンがスクエアグループというから驚きだ。全18人のスタッフは全員女性。そのうちママスタッフが6人を占めるほど、女性のライフステージを大切にしているオーナーの泉端さん。おっとりとした外見からは想像できない、芯が太い経営ポリシーをうかがいました。
1取り組み
妊娠したスタッフは社会保険労務士と面談して、育休明けまでの流れをイメージ。
どんな取り組み?
子どもがいる人を積極的に採用し、スタッフの3人に1人がママスタッフというネイルサロン「スクエア」。スタッフが妊娠すると、顧問契約をしている女性の社会保険労務士と面談してもらい、出産や育児でもらえる手当金のことや、その手続きの流れについて説明してもらうそう。より具体的にイメージしながら、スタッフの産休から仕事復帰までの計画を一緒に立てるようにしている。
メリットは?
出産や育休時にもらえる手当はさまざまあり、手当によって条件や手続き方法が異なる。オーナーは社会保険のプロではないので伝えもれが生じる恐れもあるため、プロから丁寧に話してもらうことで、スタッフが安心して産休や育休に入ることができる。スタッフの立場から見ても、社会保険労務士から教われば、会社が社会保険に対して手続きを怠っていたり嘘をついてないことが明確になる。「スタッフには妊娠した喜びだけを感じてもらいたいのです。そのために無駄な不安はすべて取り除いてあげたいと思っています」(泉端さん)。
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「自分が妊娠・出産時に感じた不安や心配をスタッフには感じさせたくないのです」とオーナーの泉端さん
2取り組み
家庭の事情で退職したスタッフを「イベントチーム」として登録。
どんな取り組み?
結婚や出産後に仕事をつづけたくても、家庭の事情でかなわないスタッフたちもいる。常勤では無理でも、単発の講師やイベントなら可能というスタッフも少なくないため、彼女たちが登録できる「イベントチーム」を結成。例えば「スクエア」が毎月1回、広島市の公共スペースで行っている「月1サロン」という出張サロンなど、サロンワーク以外のさまざまなイベントやセミナーで活躍してもらっている。
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イベントチームのメンバーは、地域でのさまざまなイベントで活躍している
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ママスタッフの力が存分に発揮されている「月1サロン」
メリットは?
「スクエア」のスクールで技術を身につけて、ネイリストの仕事が好きでがんばってきたメンバーが、家庭も仕事もあきらめずに済むのが最大のメリット。また、主婦やママになって時間に制限のあるなかで仕事を楽しもうというスタッフたちは、協働したり切り盛りするのが上手で、若いスタッフへの刺激となっている。月に1回、イベントチームも含めた全員参加の勉強会を行っているが、そこでママスタッフと若いスタッフがお互いから刺激を受けて、良い化学反応が起きているそうだ。
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スタッフ全員が集まる勉強会。お互いの技術を高めるため真剣な表情
3取り組み
妊娠や子育てに不安を感じさせない、徹底した風土づくり。
どんな取り組み?
上記の取り組みのようにママになっても復帰しやすい環境をつくって、ママスタッフのロールモデルを増やす努力をしている。
子どもの発熱などで急に早退しなければならなくなった場合でも、3店舗で連絡し合い各店から応援に来てもらえるよう、協力体制も万全だ。もちろん独身スタッフが体調不良の際は、ママスタッフが助けている。
また、ママスタッフ同士が職場で子どものことを話しても違和感のない雰囲気づくりをオーナーが心がけている。そのひとつとして、妊娠してつわりで苦しんでいたスタッフに向けて、「つわり、お疲れさま」というエールを送る内容の映像をみんなで作って贈ったそうだ。
背景とメリットは?
ママスタッフが増えることで、妊娠・出産・育児についてのさまざまな事例ができることが後輩スタッフの安心感につながっている。ママスタッフたちがお客さまから「復帰できる仕事なんだね」と認められることで、若いスタッフたちも「ここでずっとがんばろう」という意欲にもなる。
一方で、オーナー自身が育児を始めた頃は、独身スタッフとの温度差を感じたことがあったそうだ。
「独身スタッフもいつかは結婚し、母になる日がきます。そして妊娠・出産は人生の一大事であり、本人にとっては喜びであり大変なこと。でも、本人は『会社に迷惑をかける』と思って口にしにくいと思っています。職場で自然に語り合えればもっとしあわせなはずです。特につわりは辛いのに誰もほめてくれない。だからみんなで『よくがんばったね』とメッセージを贈ってセレモニーにすることで、本人の励みにもしたいですし、若いスタッフにも妊婦の辛さと喜びの両方を知ってもらいたかったのです」(泉端さん)。
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つわりを乗り越えたスタッフに、他のスタッフたちからの慰労コメントをちりばめた「HAPPY 未来」というムービーを作って贈った
オーナーインタビュー
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オーナーの泉端洋子さん。25歳で独立し、9年前から法人化した。ご自身も9歳の男の子と4歳の女の子のママ
- Q. 徹底したママスタッフをサポートする体制を作ったきっかけは?
-
A. ネイリストの社会的地位を上げたかったことです。
16年前に私が独立した頃は、ネイリストはまだ社会的な地位が安定していませんでした。業界全体を変えられなくても、自分たちだけでもネイリストを一生の仕事として働ける環境を作りたかったのです。だから最初は独身のスタッフのために、きちんと法人化して社会保障や福利厚生を整えるところから始めました。
ママスタッフをサポートしようと思ったのは自分自身の経験です。私は経営者で、法人化する頃に長男を出産したため大変で、好きなネイルも嫌いになりそうでした。自分と同じ思いはスタッフにはさせたくなかったので、スタッフが産休や育休をちゃんととり、その間は社会保障の手当も受けられて、復帰する際には本人の事情に合わせる体制を作ろうと思ったのです。
- Q. ママスタッフよりも、まず妊婦さんが働きやすい風土づくりに注力されているのはなぜですか?
-
A. 妊娠中は不安が多い時期。不安が重なることで仕事がつづけられなくなるからです。
妊娠中は体調やおなかの子どものこと、生活の変化など不安なことだらけ。そのときに仕事や職場に少しでも不安を感じたら、仕事を辞めたくなると思います。だから会社としてできる限りの不安を取り除いてあげたい。それには未来をイメージさせてあげることです。妊婦スタッフには何が不安か一つひとつ聞いて、会社が出せる答えは出してあげます。たとえ会社では解決できないことでも、スタッフははきだして悩みを共有できるだけで「すっきりした」と言ってくれます。本人のためにも会社のためにも、「妊婦さんはしあわせでなければならない」と思っています。
Salon Data
ネイルサロン&スクール スクエア 紙屋町店
- アクセス
- 紙屋町西電停より徒歩4分
- 創業年
- 2000年
- 店舗数
- 4店舗(うち1店はスクール併設)
- 設備
- 4席 (ネイルサロン&スクール スクエア 紙屋町店)
- スタッフ数
- 18名(全店舗)