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イノベーターが
見ている未来

vol.9

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

SNIPS

由藤秀樹さん (age.48)

新潟から日本の美容を盛り上げることを使命に。
ローカルの魅力、そして誇りを高めていきたい。

お客さまの生活や背景にまで気を配り、一人ひとりに合ったヘアを提案。「ヘアデザイン」ではなく「ライフデザイン」の重要性を提唱し、新潟から新たなトレンドを発信し続ける注目のサロン「SNIPS(スニップス)」のオーナー・由藤さん。現在も週5日のサロンワークを続けるかたわら、美容業界の発展に向けた活動にも尽力されています。その想いの源をうかがいました。

1968年、新潟県新潟市生まれ。有限会社KLAI代表取締役。中央理美容専門学校(東京都)を卒業し、神奈川県のヘアサロンに入店。約10年間勤めた後、1998年に新潟市内でヘアサロン「SNIPS」を開業。現在はコンセプトの異なる4店舗を展開。全国各地でセミナー講師としても活躍。また2014年に設立された「一般社団法人 アジアビューティーアカデミー」の立ち上げ時より参画した理事の一人であり、国内はもとよりアジア各国の理美容業界の教育と発展に向けて精力的に活動している。
http://www.snips-net.com/

第1章恩師の一言で決まった、新潟でのサロン開業

「地域や業界での存在価値とは、人に喜んでもらうこと。
それを徹底的に叩き込まれました。」

由藤さんは、ご両親が理容院を営まれていたそうですね。

そうなんです。小さい頃から技術職である理美容師のかっこよさに憧れていて、小学校の卒業文集には「美容師になる」って夢を書いていました。それで東京の理容学校へ進学して、神奈川のヘアサロンに就職したんです。

神奈川のサロンを選んだのは?

「あそこの先生は素晴らしい」という両親のすすめがきっかけです。サロンのオーナーは本田先生というのですが、本当に多くの影響を受けました。両親をはじめ、これまであった様々な人から影響は受けましたが、「僕のDNAの半分以上は本田先生から学んだことでできている」と言えるくらい。

技術はもちろん、美容師としての姿勢を多く学びましたね。よく言われたのは「金は使えばなくなるが、気はノンコスト。周りに気を遣いまくれ。人が喜んでもらえることをしろ」ということ。先生と一緒に海外へセミナー講師として出かけた時に言われた「技術があるからって、人の上に立ったつもりになるな」という教えも心に残っています。若い頃って勘違いする時があるでしょう?周囲に配慮が足りなかったり態度が悪かったりしたら、すごく怒られました。地域や業界での自分の存在価値とは、人に喜んでいただくことだと叩き込まれました。

そんな尊敬する先生のもとから独立したきっかけは?

独立するつもりは全然なかったんです、経営者よりもプレイヤーでいたかったので。でもある時、「お前はそろそろ地元に戻って新潟を盛り上げろ」と本田先生に言われて。先生の命令は絶対ですからね(笑)。「もうやるしかない!」っていう想いで、地元である新潟にサロンを開きました。

経営には興味がなかったとのことですが、サロンをオープンしてから順調に進みましたか?

最初は集客できず、ひどい状況でした。技術には自信があるし、実際に一度来てくれたお客さんはリピートしてくれる。でもお金はないし集客方法も手探りで、苦労しましたね。手作業でチラシを作って4000枚配っても、来店したのは2人だけ、なんてこともありました。

その後に友だちから「フリーペーパーを出すから、そこに載せてやるよ」という話があって。プロのカメラマンさんが撮影してくれて「やっぱり手作りチラシとは違うなぁ」なんて感心していたら、お客さんがいっぱい来たんですよ。そこから常連さんが増えました。それと当時「アムラー(歌手の安室奈美恵さんを模倣したファッション)」ブームで、白メッシュが流行ったんですね。僕はそういったカラーも得意としていたので、クチコミでお客さんがドッと来るように。人気のラーメン屋さんみたいに行列が連日できて、波に乗っていったという感じです。

現在は4つのサロンを展開されています。それぞれ違った特徴がありますね。

金太郎アメのような、似たり寄ったりのサロン展開は不要だと思っています。既存店舗では実現できない目的があり、それを実現するために出店するのでなければ意味がない。目的というのは、お客さんの望みに応えるということだったり、スタッフが成長していくステージを用意するためだったり、そのときの状況によりけりです。だから僕の場合は、「何年後に何店出店する」みたいな出店計画は立ててないですね。経営者の自己実現の犠牲にスタッフを巻き込みたくないので。

今ある4店舗は、それぞれどういった想いでオープンされたものですか。

独立して最初の店舗は、まず「自分の技術、ヘアデザインで勝負する店舗にしたい」と考えていました。

2号店の「SNIPS LOHAS(ロハス)」は1号店オープンから8年後に開いたのですが、その頃になると20歳前後から通ってくれていた常連のお客さんも、結婚や出産を機に郊外へ移り住む人が増えてきました。ちょうど郊外に低価格帯の店舗がどんどん開店する時代。「ちゃんとした価格帯で勝負し、しっかりしたカットサービスを提供したい」とあえて、サロン乱立地域に出したんです。「田んぼの中で、東京・銀座やニューヨークと変わらないサービスを」というのを合言葉にしていました。ヘアだけでなくスパやネイルも提供したところ、それが非常にウケたんですね。うれしいけど複雑な気持ちもあって・・・。

その次に開いた「CAOS(カオス)」は再びヘア1本で勝負するサロンに。1号店は「モテ髪系」で支持されていたので、こちらは「同性にモテるかっこいいスタイル」を提案。

4店目の「SNIPS DOES(ダズ)」はファッション感度の高い20代に思い切り振り切ったサロンです。実際はもっと大人世代の方にも利用していただいていますが、ヘアデザインにこだわったスタイリングを得意としています。

現在の本店である「SNIPS LIFE DESIGN(ライフデザイン)」は、1号店を移転リニューアルしたものですね。

1号店はオープン以来、若い層に支持されてきました。その一方で、常連さんの年齢層が上がるにつれ、サロンに求められるものが変化しているという感じもあって。トレンドヘアを得意とするスタイリストが担当するお客さんは、いつまでも若者ばかり。スタイリストとお客さんの年齢が比例していかないんです。顧客の年齢が上がっていくと、トレンドのスタイルやカラーを提供しても、いまいち刺さらなくなってきます。そしてそれまでのスタイリストを指名しなくなり、お客さんが離脱してしまう。これからの時代は少子高齢化、このままじゃダメだという危機感がありました。

「オトナ女性世代が求めるのは何か?」と考えた時に気付いたのは、「流行のスタイルであればいいのではない。仕事や子育てといった生活の場にふさわしいヘアスタイルでなければいけない」ということ。だから従来の「ヘアデザイン」ではなくて、お客さんの生活や仕事といった背景を知り、そのなかで輝くヘアを提案する「ライフデザイン」が重要なんだと考えるようになりました。それを提供する場として、「SNIPS LIFE DESIGN」をオープンしました。

  • 本店である「SNIPS LIFE DESIGN」は新潟という地域特性を活かして3階建・計200坪以上の床面積を確保。ネイルやエステティック、ヨガのメニューも揃うトータルビューティサロン

  • 「お客さまの頭皮やヘアを健やかにしたい」との想いから、オリジナルのシャンプーやトリートメント、ヘアケア用品を開発

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