女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.62ママスタッフが若手を大きく成長させる!
ヘアカラー専門店で起こっている「相乗効果」とは?
apish COLOR TERRACE
神奈川県川崎市
業界をリードするトップサロンが、川崎市の住宅街で営業するヘアカラー専門店「apish COLOR TERRACE」。「カフェ感覚でキレイになれる」と地元で評判のこのサロンは、もともと育休明けのママのためにオープンしたといいます。現在3人のママスタッフがイキイキと働く一方で、他店から派遣される若手スタイリストにとっても、大切な「学び」と「気づき」の場になっているそう。スタッフの成長にもつながる「apish」の女性支援の取り組みについて、ママ店長の渡辺梨沙さんにお聞きしました。
※「apish」代表・坂巻哲也さんのインタビューはコチラ
1取り組み
育休期間や復帰後の働き方は個別に対応し、
ママが仕事に戻りやすい環境を整備。
どんな取り組み?
女性スタッフから妊娠の報告があった時点で、復帰への意思確認から産休・育休を取る期間、復帰後の働き方について相談。決まりごとは設けず、時短勤務や週の出勤日数も本人の希望を優先して臨機応変に決めている。また「apish」では全店のシフトを一括で制作・管理している。なので希望があれば、週に◯日他のサロンでカットをするなど、複数店舗でのシフト勤務にも対応できる。昨年1月には産休後のママスタッフのリハビリの場として「apish COLOR TERRACE」をオープン。現在、週3〜4日勤務1名、週5〜6日勤務1名、表参道店勤務がメインの1名、計3名のママスタッフが在籍している。
背景とメリットは?
「apish」は社員の定着率が高く、ベテランスタッフも多い。結婚・出産を経験したママの経験やアイディアをサロンの財産として生かすためには、どんな事情でも無理なく仕事を続けられるよう、一人ひとりに合わせて環境を整えることが必要だった。そのうえで「apish COLOR TERRACE」が復帰ママスタッフの受け皿になることにより、「早くカットの最前線に戻りたい」「今は育児に軸足を置きたい」など、各人の希望に合わせた働き方の選択肢が広がったという。現在は100名の従業員のうち、4名が産休後に復帰したママスタッフだ。
2取り組み
ヘアカラーやトリートメント専門の「メンテナンス」に特化。
カット技術に不安のあるママスタッフも働きやすい。
どんな取り組み?
「apish COLOR TERRACE」で行っているメニューは、ヘアカラー、トリートメント、前髪カット、ブロー、セット、キッズカットのみ。ヘアカラーの場合は、シャンプーまで終わったらお客さま自身でのセルフドライ・スタイリングをお願いし、その分ほかの店舗よりも単価を安く設定している。
メリットは?
美容の最前線で活躍してきたスタイリストにとって、妊娠・出産を経たブランクのある育休明けは、カットの技術的な不安が大きい。その点、ヘアカラー専門店なら常に最新のスタイルを追う必要がないので、ママスタッフは気持ちに余裕を持って仕事をすることができる。また、仕上げをお客さまのセルフドライにしているため、ヘアカラーの在店時間が1時間前後と短く、ママスタッフにとっても短時間で効率よく売り上げを上げることに繋がっている。
3取り組み
営業はママスタッフ+若手スタイリストの3名体制。
指名は受けないので急な休みにも対応しやすい。
どんな取り組み?
シフトは3人のママスタッフに加えて、他店舗から派遣されてくる若手スタイリストによる3名体制で営業。リタッチの多いヘアカラー専門店であればこそ可能なことだ。また基本的に指名は受け付けておらず、スタッフ全員でお客さまに対応するシステムになっている。
メリットは?
ママスタッフは子どもの病気で急に店を休まなければいけないことが多々ある。しかしここでは指名制を取らないので、他店舗から代わりのスタッフを派遣することで、すぐに人員をカバーすることができる。個人的な事情でお客さまに迷惑をかけることがないため、ママスタッフはストレスを感じることが少ない。また、シフトを決めるときも他店舗と共同で行うため、行事などのための休みを取りやすく、家族との時間も大切にできる。
4取り組み
ママスタッフが他店の若手の教師&相談役に。
経験を生かして、人材育成にも力を発揮できる。
どんな取り組み?
「apish COLOR TERRACE」に順番に派遣されるのは、スタイリストになったばかりの若手が中心だ。経験豊富なママスタッフと一緒に仕事をすることで、ヘアカラーの技術だけでなく、接客のノウハウについても学んでいる。また、女性スタイリストが派遣されたときは、先輩女子であるママスタッフにさまざまな悩み事を打ち明けるシーンも少なくないという。
背景とメリットは?
サロンの客層の年齢が上がる中、スタイリストには大人のお客さまのヘアをプロデュースする力が求められている。しかし、若いお客さまの多い表参道や青山のサロンでは経験を積む機会が少なく、スキルアップに時間がかかる。それに対して「apish COLOR TERRACE」のお客さまは系列店の中でも年齢層が高い。さらに接客技術に長けたママスタッフというお手本もあり、若手にとって共感力やプレゼン力を磨くのに最適の場になっている。
また若手スタイリストにとって、同僚やアシスタントの前では話しにくい相談事も、ここなら素直に口にできるという。人生経験豊かで同性のママスタッフだからこそできる心のフォローもある。相談に乗った後輩たちからの「売り上げが伸びた」「大きな仕事をもらえた」という報告は、ママスタッフにとっても大いに励みになるという。
店長インタビュー
- Q. 渡辺さんご自身、2度目の産休からこの店舗で復帰したそうですが、働きやすさはどうですか?
-
A. 自分の力が必要とされている場だと実感。負担なく働けています。
以前は多くのお客さまを持ってバリバリ働いていましたが、ひとり目を出産して復帰したときに失客が多く、厳しい現実を突き付けられました。加えて、スタイリストにとって1年のブランクを取り戻すのは大変なことです。数㎜ハサミの入れ方が違うだけで自分の技術が古いと感じ、消化できない気持ちを抱える日々でした。だから、ふたり目を産む前は復帰が不安だったんです。そんなとき代表の坂巻から「君たちが戻れる場を作ろうと思っている。任せるから必ず軌道に乗せてくれよ」と言われ、このサロンができました。
今は子どもとの時間を大事にしたい自分にとって、ここは気後れすることなく力を発揮できる恵まれた環境です。今は週に1回表参道へお客さまのカットに行っていますが、それ以外の日も若手スタッフが常に最先端の情報を持ってきてくれるので、居ながらにして勉強もできますね。私の方からは「この子はプラスメニューの提案が上手」「言外の気持ちを汲む力がある」など、若い子の良い面を吸い上げて、上に報告するように心がけています。彼らの仕事ぶりを丁寧にフォローし、人間力の向上につなげることも「COLOR TERRACE」のママスタッフに求められる役割だと思っています。
- Q. 今後ママスタッフがさらに力を発揮するために、どんな取り組みができると考えていますか?
-
A. 新たな試みとしてスタートする「訪問美容」に可能性があると感じています。
私と先輩スタッフのふたりで始めようとしている活動に、福祉美容師としての「訪問美容」があります。「訪問美容」とは、高齢やご病気で外に出るのが難しい方を対象に、美容師が施設や自宅にうかがって施術をすること。お客さまとなるのは高齢の方ばかりではありません。たとえばリハビリセンターには若い方もたくさんいますし、ご家族の介護を担っていて外出ができない方が「私もおしゃれをしたい」というケースも考えられます。毎日サロンに立たなくても技術を生かすことができ、育児などの経験も役に立つ。その意味では、フルタイムではない働き方をするママ美容師に合っているのではと感じます。将来的には会社としても力を入れて、可能性を広げていきたいと考えています。
Salon Data
apish COLOR TERRACE【アピッシュ カラーテラス】
- アクセス
- 東急田園都市線鷺沼駅から徒歩8分
- 創業年
- 1998年
- 店舗数
- 7店舗
- 設備
- セット面8 ※apish COLOR TERRACE
- スタッフ数
- スタイリスト3名 ※apish COLOR TERRACE