女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.699名中7名がママ、産休中の失客はほぼゼロ。
働きやすさと経営を両立する工夫とは?
美容室 いろは
神奈川県伊勢原市
「美容室 いろは」は、伊勢原市に3店舗を展開する「COX-GROUP」の中でも1番小さく愛らしいサロン。円卓やキッチン、キッズルーム付き個室を備えたアットホームな雰囲気で、子連れでも安心して利用できるとママたちの間で喜ばれています。活躍するスタッフは全員女性で9名中7名がママ。「仕事も家庭も楽しみたい」という彼女たちと、お客さまの両方が幸せになれる、お店づくりの秘訣とは何でしょうか。3人の子どものママでもある、店長の渡辺由香さんに聞きました。
1取り組み
営業9:00〜17:00・日曜定休とし、主婦が働きやすいサロンに。
どんな取り組み?
6年前のオープン当初から、店自体の営業時間を9:00〜17:00と短めにし、日曜を定休日に設定。スタッフは、子育ての状況などに合わせて本人の希望により、出勤曜日や勤務時間を選ぶことができる。現在は週6日間出勤する4名の社員が中心となり、パートが加わる形で営業。系列店のフルタイムスタッフよりも短時間勤務となるが、社保などの待遇は同じままで、時給による給与体系となっている。また、時間外の練習には対応できないため、この店舗ではアシスタントを採用していない。
背景とメリットは?
もともと「COX-GROUP」で働く全女性スタッフのために、結婚・出産しても安心して仕事を続けられる受け皿としてオープンした店舗。今年は1名を中途採用したが、彼女も子ども3人のママだ。
ここではフルタイムで働いたとしても、保育園の子どもの送り迎えが無理なくできる。また、毎週日曜日が休みであれば、スタッフ自身が家族との時間を大切にできる。「他の系列店だと、早上がりや休日のことで他のスタッフに気を使うこともありますが、ここではそれがありません。何より同じ主婦やママ同士なのでお互いに助け合う気持ちが強く、安心して働けます」(渡辺さん)。
2取り組み
赤ちゃんも使えるシャンプーなど、ママならではのサービスを提案。
どんな取り組み?
オイル&アルコールフリーのシャンプーや、植物性成分のカラーリング剤、さらにティーコーナーで提供するお茶まで、店内で使用する商品のセレクトはスタッフに一任。子育てママをターゲットにしたサービスで、系列店との差別化をしている。さらにスタッフ有志での「エイジングケア」チームを結成し、髪やお肌のお手入れだけではなく、体を内側から自然にキレイにする食品の情報も発信している。
背景とメリットは?
「自分たちにも子どもがいるので、赤ちゃんが使っても大丈夫なくらい、ナチュラルな商品を追求し、お客さまに提供したいと思う気持ちが強いですね」と渡辺さん。主婦ならではの健康意識を活かして提案するサービスは、お客さまから大きな信頼を得ている。また、たとえ働く時間は短くても、このサロンでは自分たちが主役となって運営しているという意識が、スタッフのやりがいと責任感を生んでいるという。
3取り組み
カルテの共有とセット面配置の工夫で、
スタッフの急な欠勤もカバーしやすい環境づくり。
どんな取り組み?
カットやパーマの技術的な記録や好きなもの、興味のあることなど、お客さま一人ひとりのカルテをパソコンで一括管理。スタッフは誰でも情報にアクセスできるようになっている。また、店内のレイアウトは大きな円卓を囲むようにセット面を配置。そのためスタッフからはお客さま全員の様子がよく見えるので、自分の担当ではないお客さまとも自然に顔見知りになれる。
メリットは?
ママスタッフが多ければ、子どもの急な発熱などによる欠勤も避けられない。しかし普段からお客さま情報をしっかり共有していれば、他のスタッフが代わりに対応することができる。また、小規模店舗のメリットを活かした円形レイアウトにより「自分の担当外でも初めて顔を見るというお客さまはまずいません」(渡辺さん)。お客さまの方も、リラックスして施術を受けることができる。
オープンから現在まで3人のスタッフが出産して育休を取ったが、この取り組みのおかげで引き継ぎもスムーズにいき、失客はほぼゼロだったという。
4 取り組み
全スタッフが具体的なライフプランを発表。夢を全員で共有する。
どんな取り組み?
「COX-GROUP」では、スタッフ全員がそれぞれの「COX-GROUPライフプラン」を作成。5年後、10年後、20年後に自分がどんな仕事をしているか、子どもが何人いるか、どんな暮らしをしているかなど、公私両方の目標や夢を具体的に書き込む。このライフプランはお互いにいつでも見られるようオープンにして、スタッフ全員で共有している。
メリットは?
スタッフはその時々でライフプランを見直すことで、美容師の仕事を通じてどんな人生を歩みたいのかを明確にできる。特に女性スタッフにとっては結婚・出産について考える機会となる。
そしてプランを共有することで、スタッフが互いの夢を応援し合う風土がつくられる。働き方が違ってもお互いのスタンスを尊重できれば、ママにとってもより働きやすい環境につながる。また、各々のスタッフが描くキャリアプランが把握できれば、管理職や経営者として将来に向けて何に備え、どんな採用をするべきかを考える助けになる。
店長インタビュー
- Q. このサロンがオープンした背景にはどんな事情がありましたか?
-
A. 結婚・出産した女性の力を活かすためにできた店舗です。
当時は「COX-GROUP」の本店と2号店の女性スタッフが結婚や出産で離職するケースが増え、「どうしたら女性が働き続けられるだろう?」とずっと悩んでいました。たとえ美容師を続けていたとしても、フルで働けない引け目から、どこか一歩引いた立ち位置になってしまう。そこで発案されたのが、主婦を中心とした女性だけのサロンです。
ここでは主婦やママになっても「主役」としてプライドを持って働くことができます。私を含めてスタッフはみんな、自分が楽しく働ける場があることに、とても感謝しています。私自身も出産して6年間家庭に入り、アシスタントからやり直してとても苦労したので、ママ美容師の悩みや大変さはよく分かります。ここまで沢山の人が支えてくれた分、私も店長として同じようにサポートしたいと思っています。
- Q. 主婦やママスタッフだからこそ力を発揮できることは何ですか?
-
A. 地域の家族の子育てを応援し、長くお付き合いできる関係をつくることです。
グループの目指すものとして「一生寄り添うサロン」があります。地域に根を張り、お客さまと家族ぐるみでお付き合いをしていきたい。そのきっかけをつくるのが私たちの役割です。ここにはキッズスペース付きの個室があるので、他の美容室だとなかなか行けないお客さまも気軽に来店でき、子連れ客は全体の約35%にもなります。リピート率も、とても高いですね。
小学校就学前のお子さまには前髪の無料カットもしますし、女の子にはヘアアレンジをしてあげると大喜びします。サロンで楽しい思い出をつくって、大きくなったら本店の方へ行っていただき、結婚して子どもが生まれたらまた戻ってきて欲しい。何代にもわたるお付き合いが、サロンとして思い描く夢です。私たちは結婚や出産、育児の経験を活かして、その入り口の役割を担うことができると思います。
Salon Data
美容室 いろは
- アクセス
- 小田急小田原線伊勢原駅から徒歩3分
- 創業年
- 1997年
- 店舗数
- 3店舗(グループ全体)
- 設備
- セット面5席(美容室 いろは)
- スタッフ数
- 9名(美容室 いろは)