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女性が活躍するサロン

女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣

結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.74ママアシスタントも採用、入社5年で時短OK…
全員の幸せを願う情熱社長の経営術とは?

Happiness

奈良県奈良市

2002年の創業時からトータルビューティーを提案し、ヘアやメイクに加えてネイルやアイ、エステにも力を入れてきた「Happiness」。奈良・京都・大阪に15店舗を展開するまでに成長した、関西でも注目の人気サロンです。その一方で全スタッフの7割を女性が占め、うち20名がママ。これまでにスタッフが出産した「Happinessベビー」は合計40名以上と、早くから女性が安心して働ける環境づくりに取り組んできました。そのさまざまな施策について、代表取締役の谷口誠治さんにお話をうかがいました。

1取り組み

一定条件を満たした女性スタッフが、出勤時間を自分で決められる
「キャリアパス」制度を導入。

どんな取り組み?

「キャリア5年以上で月間売上100万円以上」を達成しているか、結婚や出産をした女性社員は、全員が同等に「キャリアパス」と呼ばれる資格を獲得。本部と話し合いのうえ、サロンに出勤する時間帯を、一定の範囲内で自由に決めることができる。男性社員であっても、育児のための時間が必要な場合などには、同じ制度が利用できる。

導入のきっかけと、メリットは?

 創業当初は、女性特有の体調変化や“燃え尽き”が原因なのか、中堅女性スタッフの離職があって苦慮していた。「当時、頑張り屋だったのになぜか急に休みがちになった子がいたんです。どうすべきかいろいろ思案した末に、“一定の賃金は保証するから、来たい日に来なさい”と命じました。するとその後、彼女が一切体調を崩さなくなったことがありました」と谷口さん。キャリアがある女性は本人に時間管理を任せた方がメンタルも安定し、しかも売上をきちんと守ることもできる。こうした理由から、女性スタッフの離職を防ぐため、8年ほど前に導入した。
 この制度があるお陰で、結婚や出産をした女性スタッフは、家事や育児の時間を取ることができるし、独身スタッフも安心して働き続けられる。行使するかは本人の自由だが、権利が一定条件で同等に与えられるので、「ママばかりが早く帰れる」といった不公平感が生まれることもない。現在は、結婚や出産をした女性10名が「キャリアパス」を利用しているという。

「本人が望まないのに辞めざるを得ない状況」を防ぐために、さまざまな施策を検討したという谷口さん。今は入社3年目以上のスタッフの離職率はかなり低い

「本人が望まないのに辞めざるを得ない状況」を防ぐために、さまざまな施策を検討したという谷口さん。今は入社3年目以上のスタッフの離職率はかなり低い

2取り組み

新米スタイリストのための教育サロンを開設。早く稼げるようになれば、結婚・出産後の働き方も広がる。

どんな取り組み?

 アシスタントがスタイリストデビューすると、教育サロンである店舗「I-FLAP(アイフラップ)」に順番に配属され、一人前のデザイナーになるために半年〜1年ほど修業を積むシステムになっている。来店から見送りまでマンツーマンで接客することで、サロンワークの腕をトータルで磨く。他の店舗と比較すると価格設定が低いこともあってか、お客さまの間でも人気だ。

4歳の女の子を育てるママスタイリストの芳賀優輝子さんも、現在「I-FLAP」で修業中。「朝晩のレッスンは大変ですが、スタッフはみんなやさしく、育児のことも気遣ってくれるので、仕事に集中できます」

4歳の女の子を育てるママスタイリストの芳賀優輝子さんも、現在「I-FLAP」で修業中。「朝晩のレッスンは大変ですが、スタッフはみんなやさしく、育児のことも気遣ってくれるので、仕事に集中できます」

メリットは?

 他店舗では新規客が少ないので、スタイリストデビューしてもなかなかお客さまを担当させてもらえず、すぐには力が付かないのが現状。その点「I-FLAP」では指名制を取らず、研修生は毎月コンスタントに100名以上のお客さまを担当できる。また、雑務はすべて店長が担当するので、新米スタイリストはサロンワークと朝晩のレッスンに集中することができる。その結果、確実に実力が付き、自信を持って本格デビューをすることができる。
 特に、将来出産によって休みを取ったり、仕事のペースを落とす可能性がある女性スタッフにとっては、できるだけ早く力を付けて美容師としての実績をあげることが、後々のキャリア形成の助けになる。

大学在学中に長女を出産した芳賀さん。他のサロンの説明会では「アシスタントからのスタートなのに、子どもがいては難しい」と門前払いに近かったが、「Happiness」では社員採用してもらえた。「ようやくデビューでき、美容師の面白さが分かってきて、毎日充実しています!」

大学在学中に長女を出産した芳賀さん。他のサロンの説明会では「アシスタントからのスタートなのに、子どもがいては難しい」と門前払いに近かったが、「Happiness」では社員採用してもらえた。「ようやくデビューでき、美容師の面白さが分かってきて、毎日充実しています!」

3取り組み

代表とスタッフ全員がキャリアプランについて話し合い、女性ならではの人生設計に寄り添う。

どんな取り組み?

 新しく採用したスタッフとは、代表自ら全員と面談。3年後、5年後に思い描くキャリアプランを確認し、それを実現するために会社としてどんなサポートができるかを提示している。面談はなるべく毎年繰り返し、更新したプランを共有するという。「毎年全員と話せない場合もありますが、特に女性はそれぞれさまざまな事情がある。何かしら心境の変化が感じられたり、少し様子が気になる子とは必ず話すようにしています」(谷口さん)。
 加えて、誕生月のスタッフと会食する「お誕生日会」を毎月開催することでも、最低年に1度は会話する機会を持っている。

時間の許す限り、各店舗を予定なく回っているという谷口さん。「あまり現場を管理している感覚はないです」と言いながらも、常にスタッフの様子を気にかけている

時間の許す限り、各店舗を予定なく回っているという谷口さん。「あまり現場を管理している感覚はないです」と言いながらも、常にスタッフの様子を気にかけている

なぜそうした?メリットは?

 スタッフの7割を占める女性の多くは、結婚や出産など、将来の転換期に対して不安を感じている。「そこで、今考えられる範囲で年数を区切ってキャリアプランを決め、“〇年でここまで育ててあげるから、一緒にがんばろう”とスタートするようにしています」(谷口さん)。プランを毎年更新するのは、夢が時期と共に移り変わっていくことも多いからだ。
 会社とキャリアプランを共有していれば、女性スタッフは安心して働くことができ、結婚や妊娠したときもすぐに相談がしやすい。また会社のほうからも、スタッフの体調不良などのときに「こんな働き方をしてみては?」と提案ができ、その結果、離職を防ぐこともできる。

毎年夏は琵琶湖の会員制ビーチへ、希望するスタッフを順番に招待し、家族ぐるみで思い切り休日を楽しむ。「Happiness」は、代表とスタッフとの距離が近いのが特徴だ

毎年夏は琵琶湖の会員制ビーチへ、希望するスタッフを順番に招待し、家族ぐるみで思い切り休日を楽しむ。「Happiness」は、代表とスタッフとの距離が近いのが特徴だ

4取り組み

全社員が参加する「全体総会」を月に1度開催。表彰で自主性とモチベーションをアップ。

どんな取り組み?

 月に1回、奈良市内のホテルの会場を借り、奈良・大阪・京都から全社員が出席して「全体総会」を開催する。プログラムは、先月の売上や今後の目標などの確認事項と、優秀社員の表彰式。「1年生」「アシスタント」「デザイナー」「ネイリスト」などの部門別に、事前の幹部投票によって選出された「月間MVP」スタッフを店長が紹介し「何を頑張ったか」「どんな成果を残したか」などを発表したうえで表彰している。さらに「年間MVP」に選出されると、海外旅行の特典が授与される。

表彰式の後は、月間MVPに選ばれたスタッフたちが笑顔で記念撮影。みんな誇らしげ

表彰式の後は、月間MVPに選ばれたスタッフたちが笑顔で記念撮影。みんな誇らしげ

なぜそうした?

 創業当時から欠かさず実施している社内行事。15店舗に増えた現在では、手間や経費もかさむが「それを差し引いても、毎月全員が集まることに意義があります」と谷口さん。さまざまな仕事の業績とともに、プロセスを含めて全社員の前で頑張りを讃えられることは、仕事への新たなモチベーションを高め、自ら創意工夫する自主性を引き出す。毎月開催なので、スタッフが表彰されるチャンスも多く、サロン全体の活性化にも繋がっている。全体総会のノウハウは業界から注目され、DVD化もされて追随するサロンも多数。最近は、異業種の人たちも見学に訪れているという。

ほかにも社内行事は盛りだくさん。会社負担の「ご褒美旅行」も2年に1度催され、社員のほぼ全員が参加する

ほかにも社内行事は盛りだくさん。会社負担の「ご褒美旅行」も2年に1度催され、社員のほぼ全員が参加する

代表取締役インタビュー

サロン経営のかたわら「NPO法人 日本ビューティ・コーディネーター協会」理事長として、美容業界の活性化に取り組む谷口さん。今はお子さまカットのイベントで時々はさみを振るうのみだが、いつも「社長、社長」とちびっ子やママたちに大人気だそう

Q. 美容業界では比較的早くから、スタッフの働く環境を整備されてきましたね。

A. 大切なスタッフが辞めていくのが寂しくて、長く働ける方法を考えました。

 社員が50名に増えた8年ほど前、さらに人が増えることを予測して一気に制度化を進めました。完全週休2日制にしたのも、時短勤務の一種である「キャリアパス」を導入したのも同じ頃です。きっかけは、体調を悪くしたり、家庭の事情などで、不本意ながら辞めざるをえない女性がいたこと。それまでは近い存在だった子が、急に他人になってしまうのが寂しくて、何かあっても安心して働き続けられる仕組みを作ろうと考えました。
 スタッフはみんな自分を頼ってくれる大好きな子たちで、家族同然です。ですから、彼女らが精神的なストレスを感じずに働けることが一番。最近は制度も浸透して「結婚したらキャリアパスにしますから!」と早々に宣言する子もいます。ここ数年は、3年以上在籍したスタッフがやむなく離職することもほとんどなくなりました。トップが無茶をするほど下の人たちはしっかりするもので、売上に影響もなくサロンとして順調に成長できています。

Q. ママスタッフがサロンで働くメリットは何だと考えていますか?

A. 後輩たちへ見せる姿や言葉が、サロンに良い影響を与えてくれます。

 ママは現在20名ですが、産休中のスタッフもいるので、これからも増えていきそうですね。親になるとものの見方や価値観が変わり、その角度で会社を見るようになります。たとえば、スタッフ全員の「親」を自任する社長の気持ちが理解でき、意図が汲めるようになる。また、普段の働きぶりや後輩たちにかける言葉にも、力が感じられるようになります。まさにこれがママの価値です。一児のママとして入社した芳賀も、最初は仕事を続けられるか心配でしたが、新人研修で驚くべきリーダーシップを発揮し、本気度が違いました。頑張りによって周囲に認められ、「しっかり育てていこう」と決心させたのは素晴らしいことです。
 将来的には、ママも含めてキャリアの選択肢を増やすために、会社として独立を支援するシステムを作りたいと思っています。多くの卒業生が「Happiness」と繋がりを持ちながら仕事を続けられるよう、応援していきたいですね。

Salon Data

Happiness【ハピネス】

アクセス
近鉄大和西大寺駅から徒歩5分※Happiness 西大寺店
創業年
2002年
店舗数
15店舗
設備
セット面18席 ※Happiness 西大寺店
スタッフ数
175名
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000200238/
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