女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.79ママが若手を育て、若手がママを助ける。
女性だけの「タテ割り」型サロンとは?
daytime beauty club LOOP
愛知県岡崎市
岡崎市でトータルビューティーを提案する「daytime beauty club LOOP」。キッズルームや個室が完備され、子連れ客もリラックスできる女性スタッフだけのサロンです。3名のママから若手まで揃う9名のスタッフは年代、家庭、働き方もさまざま。まるで「タテ割り保育」のように、お姉さんが妹たちの世話をし、妹はお姉さんの背中に憧れる、理想的な風土があります。「美容の仕事を一生続けて欲しい」という願いを込めた杉浦一見さんの、女性オーナーならではの経営について聞きました。
1取り組み
働き方や、担当したい仕事は本人の希望に対応。パートでも適任なら役職に登用する。
どんな取り組み?
サロンではスタッフの働き方についてあえて規定を設けていない。結婚や出産などの事情に合わせて社員、時短社員、パートから選べ、日数や時間も個別に相談する。パートは最低週1日から勤務可能。また、各スタッフがどんな仕事をしたいかの希望にも柔軟に対応。「ブライダル」「エステ」など、個人の興味に応じて自由に分業させている。ちなみに現在のエステティシャンは元お客さま。子どもが手を離れた後に、未経験でこの道に入ったという、異色の経歴の持ち主だ。
さらに、適任者には勤務時間にこだわらず役職を付ける。現在マネージャーを務めている藤井操さんは、1日5時間勤務のパートだ。
なぜそうした?メリットは?
「美容の仕事を続けたいと思っている女性には、どんな形でも続けて欲しい」というのがオーナーの杉浦さんの願い。長く続けるからこそ、見えてくる世界もあると思うからだ。働く女性の事情は人それぞれで、自分の思い通りにいかないことも多い。そこを臨機応変に対応をすることで、スタッフはそれぞれのライフスタイルに合った形で仕事を続けることができる。
また、各人が自分の好きな分野や頑張れるフィールドで思うままに働き、その道のプロフェッショナルになることも、美容の仕事を長く続けることに繋がる。同じ意味でその人の成長に繋がるのであれば、勤務時間の長さに関係なく責任ある仕事も任せている。
2取り組み
パートも新卒も積極採用。「ママだけサロン」にはしない。
どんな取り組み?
働きたいママをパートとして受け入れながら、意欲のある若い女性も順次社員として採用。ママや主婦の先輩、アシスタント、アルバイトなど、多彩なキャリアや年代が入り交じった混成チームになるようにしている。過去には高校から美容学校時代までアルバイトとして働き、そのまま入社したスタッフも多い。
なぜそうした?メリットは?
「美容の仕事は若い頃から長く続けることで、より成長できます。ですから働きたいママの味方であると同時に、常に新人を育てることは継続したい」と杉浦さん。一部の保育園で行われている、さまざまな年齢の子どもが共に育ち合う「タテ割り保育」をイメージしている。同じサロンに新人からベテランまでが揃うことは、双方にいい影響があるという。
早く帰らなければいけないパートスタッフをアシスタントがフォローし、代わりにベテランのパートは若手に自分が教えられる限りのことを教える。そうした循環を作ることで、結婚して子供がいても働けるということが「見える化」し、若いスタッフが未来を描くことができる。また若手が「自分もいつか先輩の立場になる」と意識することで、自然に助け合う風土ができ、パートスタッフの働きやすさにも繋がる。
3取り組み
月に一度のミーティングやレッスンは、全員が参加できるよう店を閉めて行う。
どんな取り組み?
月に一度の全体ミーティングは、通常より1時間早く18:00に閉店して実施。都合がつけば学生アルバイトや、一度帰宅したパートママも再び店に出てきて全員が参加する。また定休日である毎週月曜日、第1・2火曜日、第3日曜日のうち、第1火曜日をサロンのレッスン日に設定。店を閉めて、1日レッスンの時間にあてている。
メリットは?
スタッフの出勤・退勤時間がバラバラで全員が揃わない「LOOP」では、月に一度のミーティングは情報共有のための大切な時間。できるだけスタッフの負担にならず全員参加ができるように、営業時間内で行うことにした。「また帰りが遅くならないように、課題はあらかじめ共有しておき、当日は短時間で会議を切り上げられるよう工夫しています」(杉浦さん)。
日常的なカット練習は開店前や夜間に行っているが、パートスタッフはなかなか時間が取れない。「そのことで彼女たちに劣等感や負い目を感じさせたくないと考えて、5年前から月に1日定休日を増やし、レッスン日を設けることにしました」(杉浦さん)。店として練習の時間を確保することで、パートスタッフも無理なく技術の向上に取り組めるようになった。
4取り組み
定期的にユニークなイベントを企画。お客さまとの距離が近くなることで、ママスタッフへの理解が深まる。
どんな取り組み?
10年ほど前に2階にキッズルームやプライベートブースを設け、子連れママやファミリー、友達同士で来店するお客さまを受け入れやすいように環境整備。また、毎年の開店アニバーサリーのほか、体育館を借り切っての大運動会や、小学生の美容体験など、お客さま参加型のイベントを積極的に開催している。
メリットは?
もともと子連れのお客さまが多いサロンだったが、個室ではよりリラックスした雰囲気で接客ができるようになり、ときにはパートスタッフが先輩ママとして相談事も受けるように。またイベントを共に心から楽しむことでもお客さまとの距離が近づき、家族ぐるみの長いお付き合いも増えてきた。
「入学や結婚、出産などの報告を受ける度に、成長を見守る親戚のような気持ちです」と杉浦さん。スタッフにもお客さまの人生に寄り添うことが、美容の仕事を続けるモチベーションになる。また、家族的なお付き合いがあるお客さまは、スタッフの産休や急な欠勤に関しても理解を示してくださるので、とても感謝しているという。
オーナーインタビュー
- Q. なぜ女性オンリーのサロンをつくろうと思ったのですか?
-
A. 女性だけということが集客の強みになるのに気付いたからです。
勤務していた店で長女を出産して4歳までパートで働いていましたが、好きな美容を自由にやりたくて、今のマネージャーと2人で14年前にこのサロンをオープンしました。最初は純粋に助手としてパートを雇っていたのですが、3年くらい経って「彼女たちをお手伝いさんのままにしていいのかな」という疑問が湧き、美容で一人前になるまで育てていこうと決めました。自分が美容師からちゃんとした経営者になったきっかけです。
スタッフが4、5人に増えたとき、お客さまの間から「女性スタッフだけだからここを選んだ」という声が聞かれるようになりました。男性美容師の施術では緊張したり、リラックスできない方は意外に多かった。女性オンリーサロンが強みになることを知り、「今後はそれでいこう!」となりました。
それに、女性だけのほうが私自身もやりやすい。売上も大事ですが、人の成長や仕事を楽しむこと、続けることを大事にできます。売上重視志向とはまた違ったアプローチで経営に取り組めるのがいいところです。
- Q. 少ないスタッフで、各自の働き方に柔軟な対応をすることは大変ではありませんか?
-
A. それぞれの美容人生に寄り添える経営が大切だと考えています。
各人が自分のできる範囲で貢献することで、ストレスなく働き続けられることがいちばんの願い。正直、売上が厳しい時もありますが「今はできなくても、将来はできるようになる」と長い目で見ることが重要だと思います。
たとえばマネージャーは今、2歳児の育児に加えて不妊治療の通院もあるため、短時間パートで急な休みも多い状況。子どもが病気になって何日も仕事に出られず落ち込むこともあります。そんなときは「人生80年のたかが一週間と思えば、大したことじゃない」と励まして、不安な気持ちを取り除いてあげる。些細なことですが、大事です。プライベートで大変な思いをしながらも仕事への思いを持ち、続けたいと思ってもらえることが嬉しい。その気持ちを大切にして、寄り添えるサロンでありたい。そんな体制づくり、風土づくりが大切だと考えています。
今の課題は、みんなの勤務時間がバラバラで、なかなかサロンの約束事が共有できない点。近々、接客から技術まで、誰がいる時間帯でも同じサービスが提供できるようにマニュアルを一本化したいと思っています。今より売上を伸ばし、スタッフがさらに余裕を持って働けるよう、効率化を目指したいですね。
Salon Data
daytime beauty club LOOP【デイタイム ビューティ クラブ ループ】
- アクセス
- JR岡崎駅から徒歩4分
- 創業年
- 2002年
- 店舗数
- 1店舗
- 設備
- セット面7席
- スタッフ数
- 9名(スタイリスト4名、エステティシャン1名、ブライダルスタッフ1名、オフィススタッフ1名、アルバイト2名)