女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.78スタッフの早期育成とブランクフォロー。
女性の人生設計を重視した取り組みとは?
amuser ravie
埼玉県越谷市
髪の毛を傷ませない施術をコンセプトに、生活スタイルまでトータルにサポートする「amuser ravie」。現在のスタッフ数は16名で、代表の岡部さん(オーナー岡部鮎美さんの夫)以外は全員が女性スタッフの和気あいあいとしたサロンです。ママスタッフは、産休中の2名を含めて全6名。ここ2年間で、新卒から長く勤務してきたスタッフたちの出産が相次いでいると言います。その背景には、オーナーの岡部鮎美さんが進めてきた「女性が長く働ける職場」へのさまざまな取り組みが。「思いやりの心」をベースにした経営理念とこれまでの歩みについて伺いました。
1取り組み
勤務時間、給与体系は本人のやる気に合わせて柔軟に対応。
どんな取り組み?
現在ママスタッフは全員がパート勤務だが、希望すれば正社員での時短勤務も可能。子育てがひと段落したところで、フルタイムに変更することもできる。またパート勤務の場合、出勤日数や勤務時間については特に決まりがなく、どれくらい働くかはスタッフ本人次第。給料についても、パートは基本的に時給制だが、売り上げが一定額を超すと歩合給がつく仕組みを最近導入した。
背景とメリットは?
産後復帰するにあたって、家庭重視でほどよく働きたいスタッフもいれば、全力でやっていきたいというスタッフもいる。さまざまなニーズに応えられるように、敢えて定型は作らず、変化を前提とした体制に。
「当社のモットーは、『全員接客、全員経営』です。会社はスタッフみんなのもの。なので居心地のよい会社づくりのために、どんどん意見を言ってほしいと伝えています」とオーナーの岡部さん。この呼びかけに応じて、「短時間でもしっかり売り上げをあげるので、それに対する評価がほしい」というママスタッフからの要望が上がり、歩合給を取り入れるに至った。「自分から提案したことなので、成果が出るように、スタッフは責任を持って取り組んでくれます。これによりスタッフの自主性が育ち、それぞれが自立した大人の集団として、会社の脚力を強めているのだと思います」。
2取り組み
「モニター制度」や「ジュニアスタイリスト営業日」を設けて、
ブランクの克服をサポート。
どんな取り組み?
ブランクのあるママ美容師やデビュー前の新人美容師には、「モニター制度」を奨励。知り合いや街で声を掛けて連れてきたお客さまを、通常のサロン価格より安くカットできるため、実践での練習にもなる。また、毎週第1・3水曜は「ジュニアスタイリスト営業日」として、価格帯を少し下げての営業も。これらの機会に多くの経験を積んでもらい、自信をつけてからデビューさせる段取りだ。
背景とメリットは?
「ブランクのあるスタッフでも新人でも、自信がない状態でいきなりお客さまを担当させることはできません。本人にもお客さまにもマイナスになるので」とオーナーの岡部さん。「モニター制度」などで徐々に慣らしていくことで、自分の腕に自信がついて、前向きに仕事ができるようになるという。
実際に、8年振りにサロンに復帰したママスタッフの佐島さんも、ブランクが不安でアシスタントから再スタートした。「彼女も『モニター制度』などでだんだん自信をつけていって、その結果、スタイリストデビューを果たしました。やっぱり、自分のお客さまを担当している方が楽しそうですよね。生き生きと仕事している姿に、周りのスタッフも感化されています」。
3取り組み
目指すは1年半でジュニアスタイリストデビュー。
早く結婚・出産して、早く戻って来られる職場に。
どんな取り組み?
営業時間内の練習などでスタッフの早期育成に取り組み、入社から1年半でのスタイリストデビューを目指している。
背景と課題点は?
「時間をたくさんかけてトレーニングしたから、技術の精度が上がるということはないと思います」とオーナーの岡部さん。デビューまで3~5年かかってしまう従来のやり方では、女性スタッフが結婚・出産などの人生設計を立てにくい。それを理由に美容師を辞めていくスタッフが多いのも現状だ。「特に女性は、早くスタイリストデビューをして、人生を前倒しした方がいいと思うんです。早く結婚して、早く出産すれば、30歳前には仕事に復帰できる。みんな美容師が好きでやっているので、人生設計がちゃんと立てられる職場なら、長く続けていけるはず」。
このカリキュラムにより効率よく技術は習得できるが、接客の経験不足を不安に思う新人スタッフも。その場合は、接客しやすい同世代のお客さまを担当させるなど、無理のないデビューをフォローしている。
4取り組み
スタッフの悩みに積極的に向き合い
よい仕事ができる環境をサポートする。
どんな取り組み?
月1回の給料支給日に、オーナーの岡部さんがスタッフ一人ひとりと膝をつき合わせて面談。仕事に限らずプライベートについても、現在抱えている悩みを聞き出し、相談にのるようにしている。また毎日の朝礼ではみんなで握手を交わし、握り返した手の強さや表情から、スタッフの心身の健康状態をチェック。調子が悪そうであれば声を掛ける。見て見ぬ振りはせず、問題が小さなうちにフォローしてあげられるように心がけている。
背景とメリットは?
職場での問題はもちろん、家庭や恋愛などプライベートでも悩んでいることがあると、よい仕事がしにくくなるもの。スタッフのそういった不調を見逃してしまうと、いずれ退職など大きな事態につながることも。そのため小さな信号を見逃さない努力が必要だ。「福利厚生や給与など、よい条件をいくら揃えても、それだけではスタッフは長く続けてはくれません。大事なのは働きやすく、居心地のよい環境だと思います。そこには思いやりの心が不可欠です」とオーナーの岡部さん。
親身な働きかけが功を奏して、スタッフたちと家族のような付き合いができるように。「恋人や婚約者を連れてくるスタッフが多いというのも、居心地のよい職場が実現できている証拠かもしれません」。
オーナーインタビュー
- Q. 御社は「女性が一生働き続けられる職場」をコンセプトにされています。長く勤めてもらうために、一番大事なこととは?
-
A. オーナー含め、会社のみんなの思いやりの心です。
制度だけ整えても、思いやりの心が欠けると、会社ってうまくいかなくなると思うんです。時短勤務が可能でも、早帰りする時に他のスタッフが嫌な顔をしたら、ママスタッフはやりづらい。そうならないように、時短スタッフが日頃どんなふうにみんなをサポートしているかを、私たちから他スタッフへ伝えるようにしています。お互いに感謝の気持ちを持つことで、職場の雰囲気がよくなり、働きやすくなりますよね。
また別の観点になりますが、スタッフと会社のマッチングも重要。当社では就職希望者にまずお客さまとして来店してもらい、次にスタッフ体験、その後に面接と、最低3回は店を見てもらうようにしています。「自分がここで成長している姿が想像できれば来てほしいけれど、そうでないなら他をあたってほしい」と。会社の理念に共感してくれる仲間を採用できているので、みんなに長く続けてもらえているのだと思います。
- Q. 今後、女性活躍のために取り組みたいことは?
-
A. ママさん美容師のサロンを検討しています。
来春に新卒スタッフが3名入るのですが、すると1つの店舗に約20名のスタッフという大所帯に。これをきっかけに、ママさん美容師だけのサロンをつくることを考えています。9時~17時の営業で日曜休みにして、託児所も併設できればよいなあ、と。今の若手のスタッフたちも5年、10年すれば結婚・出産していくと思うので、安心して戻ってこられる場所をつくってあげたい。それに対して、既存のこの店は若手を育てながら、流行を発信し続けるサロンにしていければと。ブランド分けができれば、若手もベテランものびのびと、お互いのよさを発揮していけるのではないでしょうか。
Salon Data
amuser ravie【アミュゼ・ラヴィ】
- アクセス
- 東武伊勢崎線せんげん台駅から徒歩3分
- 創業年
- 1988年
- 店舗数
- 1店舗
- 設備
- セット面11席
- スタッフ数
- 16名