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サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.27

実例編想いを伝える営業で、自分の限界を超えられた

東京・世田谷で40年間地域に愛されつづける「アリーナ美容室」。25年前に旦那さまとともに経営を引き継いだ高杉やよいさん。転居したお客さまたちが都外から新幹線で通ってくるほど、技術と人柄が信頼されています。20年以上前からお客さまからの依頼で訪問美容をしていましたが、2018年から本格的に営業をスタート。そのきっかけや施設との契約に至るまでの道のりについて伺いました。

アリーナ美容室

  • 全スタッフ3名
  • 1店舗
ヘアメイクセラピスト:
高杉やよいさん
訪問美容開始:
1998年ごろから
訪問施設数:
3施設(1回の訪問で2〜8名)
施設訪問頻度:
1〜1.5カ月に1回
訪問個人顧客数:
40名以上
個人顧客訪問頻度:
1〜2カ月に1回
訪問スタッフ:
兼任3名
価格(カット):
3,500円〜、パーマ9,000円〜、カラー9,000円〜

Q

訪問美容は随分以前からされていたとのことですね?

A

お客さまからの依頼で20年以上前から細々とやっていました。

寝たきりのご家族のために「来てほしい」と言われたことがきっかけでした。

二十数年前、まだ訪問美容という言葉が一般的でなかったころに、お客さまからの要望で個人宅への訪問美容を始めました。サロンのお客さまから、「寝たきりの母の髪がぼーぼーなので家に来てもらえないか」と依頼されたのです。当時から着付けの出張サービスをやっていたので、それと同じ感覚で気軽にお引き受けしたのがきっかけでした。
もともとうちのサロンは幅広い年齢層のお客さまに来店いただいています。ご家族だけでなくお客さま自身も高齢により来店できなくなる方もいたため、同様の要望が少しずつ増えていき、常時4〜5人の方の在宅訪問を20年以上続けてきました。

  • 「アリーナ美容室」のオーナーであり旦那さまでもある矢島芳男さんと。訪問美容もふたりで行くことが多い

要介護になった実家の両親を、ケアマネジャーさんたちが支えてくれていた。

もうひとつ、訪問美容に関心をもったきっかけは、福岡にいる両親の存在でした。両親とも美容師なのですが、母が認知症を患い要介護3、父は脳梗塞を患い一時要支援2で、現在は要支援1ですが、ふたりとも現在もサロンに立っています。
子どもである自分自身は親の側に居てあげられません。けれど、両親の介護のことで実家に帰ったときにケアマネジャーさんたちとお話しして、側にいてサポートしてくださる方々がいることで安心できたのです。私も自分がいる場所で、ケアマネジャーさんたちのサポートできることをしたいと考え始めました
その後、日本訪問美容推進協会でヘアメイクセラピストの資格を取るなど、本格的な訪問美容に向けて勉強を始めました。

  • 「介護に携わる方々のお力に少しでもなりたかった」と高杉さん

Q

資格を取ってすぐ訪問美容事業を拡大されたのですか?

A

いいえ。何から手を付ければいいか全くわかりませんでした。

営業方法がわからず、「訪問美容ゼミ」に参加することにしました。

資格は取ったものの、何から手を付ければいいかが全くわかりませんでした。資格を取る講習では、技術などは教えてくれましたが、営業の方法は含まれていませんでした。営業をしたことが一度もなかったので、訪問美容で何から始めればいいかわからなかったのです。そこでネットで検索していたときに、ホットペッパービューティーアカデミーの「訪問美容ゼミ」の存在を知りました。
2018年の7月に「訪問美容ゼミ」の説明会があり参加してみました。興味はあったものの、参加者は若い人が中心。ゼミは希望者からの選抜制だったので、「50代の自分が今から参入するのは気が引ける」と当初は思いました。でも、帰省したとき、要支援の父に施設から訪問美容の依頼が来て、父は「やるよ」と答えていたのです。
「80の父にできて50の私にできないはずがない」と勇気をもらい、「訪問美容ゼミ」を受けることにしました。

ゼミに参加したものの、契約が取れない日々。

ダメ元で受けてみた「訪問美容ゼミ」の一期生に、最年長で合格できました。ゼミでは知りたかったさまざまなことを知ることができました。基本的な法律のことから、営業ツールの作り方、アポイントの取り方、サロンワークとのバランスの取り方、介護福祉士の方など美容師以外の介護に関わる方のお話まで本当に役に立つことばかりでした。訪問美容を実践している人の現場を見る課題もありましたので、主人が以前いたサロンで実践している方の見学にも行きました。講師の方々は小さな疑問にもひとつひとつ丁寧に答えてくださり、ゼミ生の仲間ともFacebookを通して情報交換できて非常に密度が濃かったです。
それなのに私は、卒業する3月になっても契約が取れなかったのです。

  • 訪問美容ゼミで学んだことがびっしりと書かれた高杉さんのノート。誰が何を教えてくれたかまで書かれたお宝だ

  • ゼミで学んだ通り作成したさまざまな営業ツール。実家のお母さまをメイクした写真を見本用に使っているそう

Q

なぜ、なかなか契約が取れなかったのでしょうか?

A

営業とは何かがわかっていなかったのかもしれません。

「相手の話を聞く」ことが営業の基本だと学びました。

「訪問美容ゼミ」では、一期生の9名のゼミ生全員が、6カ月間で施設から1件ご契約をいただくことを目標としていました。他のゼミ生が次々と契約を取っていくなか、私が契約を取れたのはゼミが修了する2週間前でした。
最初は営業に行っても、施設の方もお忙しくて迷惑がられているような気がしたのです。こちらの伝えたいことがほとんど伝えられずに終わってしまい、回った施設は100件以上。それでも全く手応えが得られず心が折れそうになったとき、ゼミの講師が営業同行して、私の問題点を指摘してくれました。
「訪問美容はいいことなのに、申し訳なさそうにしている」「高杉さんは相手が大事なことを言っているのに聞き落として、営業トークに進めようとしている」など、ほとんどダメ出しでした(笑)。“営業”だからこちらのセールストークを話すものだと思っていたのです。そうではなく、相手がどんなことに困っているか、今の施設はどんな状況なのかを聞くことが営業なのだと。そう言われてすべてのことが腑に落ちました。焦るあまり自分から話そうとしてばかりいたことを反省。それ以来は落ち着いて相手の話を聞けるようになり、ゼミ期間のギリギリに見事契約を結ぶことができました。自分も嬉しかったですが、講師やゼミ生の仲間が喜んでくれてありがたかったです。

  • 「訪問美容ゼミ」一期生の修了式。あらゆる知識を惜しみなく与えてくれた講師陣と、「みんなでゴールする!」と支えてくれた仲間たちに、高杉さんは心から感謝している

「この人と一緒に仕事をしたい」熱意と、諦めない粘りで契約に結びつきました。

現在3件の施設と契約していますが、どちらも「この人と一緒に仕事をしたい」と思える施設長の方との出会いが大きかったです。3件とも職員さんの対応が丁寧で惚れ込み、何度も足を運んだ施設です。1件目はすでに他の訪問美容業者が契約していましたが、カットのみだったので、カラーを希望する利用者の方向けにお試しで施術させていただいたことから契約に結びつきました。2件目も3件目も人柄に惚れ込んだ施設長の方を何度も訪ねて想いを伝えていると、後日先方から依頼の電話をいただきました。諦めないことがやはり大事だと実感しましたね。
個人宅については、ケアマネジャーの方からの紹介や、地域の異業種交流会で介護、病院、地域包括支援センターの方からの紹介で現在約40件に訪問しています。

  • 「2件目はゼミでも保留にしろと言われましたが、どうしてもその施設長さんと一緒に仕事がしたかった」と語る高杉さん。その想いが伝わった

Q

訪問美容をやってよかったのはどんなことですか?

A

人生の予習をさせてもらい、それを仕事でアウトプットできることです。

キレイになって喜んでいただける笑顔が何よりうれしいです。

訪問美容をやってよかったことは、お客さまから笑顔をいただけることが一番です。要介護状態の方々はひとりで動くことができないので、美容に対する切迫感が、サロンのお客さまとは全く異なるのです。私はサービスでメイクもさせていただくのですが、以前施術した方が「私、家ではハンコを口紅代わりにしてたの」とおっしゃり、メイクをとても喜んでくださいました。その方は笑わせようと思っておっしゃったのですが、思わず涙が出そうになりました。
そうした言葉を聞くと、これから自分に起こりえる、人生の予習をさせてもらっているような気がします。また、自分の親も同じなのかもしれないと改めて思わせてもらえます。そしてそれを、次のお客さまへの気づかいとしてアウトプットでき、仕事をがんばる原動力になりますね。

  • 以前から実施している在宅訪問も今では40件以上に増えた

  • メイクはサービスでしているが、とても喜ばれるそう

自分の限界を超えて、さまざまなことにチャレンジしていきたいです。

現在は、売上はサロンがメインですが、気持ち的にはサロンと訪問美容は半々のつもりでやっています。今後はスタッフを増やすなどして、訪問美容をもっと広げていきたいと思っています。
 「訪問美容ゼミ」の講師の赤木さんから、「自分の殻を破って限界を超えろ!」といつも言われていました。50歳になっても殻を破れると教えていただき、本当に感謝しています。今までもうちのサロンはお客さまの年齢層が幅広く、七五三や成人式、結婚式などのお手伝いをしてきましたが、訪問美容を機にもっとお客さまの人生の節目に立ち合わせていただきたいと思うようになりました。やりたいことがたくさんあるので、これからも自分の限界を超えていきたいです。

  • 高杉さんが訪問時に利用している移動式シャンプー台と車イス。重いタイプだが、車の移動で持ち運んでいる

高杉さんからひとこと

私が当初始めたときのように、既存のお客さまやそのご家族に対してであれば、訪問美容は敷居の高いものではなく美容師なら誰でもできることです。カットやパーマと同じように、メニューのひとつであることが当たり前になるといいと願っています。以前に比べて訪問美容を行うサロンは増えてきましたが、高齢者の方や施設もどんどん増えています。サロンに特徴があるように、訪問美容でも特徴を活かせば共存していけると思います。
現在は、在宅介護を受けている方は訪問美容に対して敷居を高く感じている場合があります。訪問美容に携わる美容師が増えれば、在宅介護を受けている方も来てもらえることを当たり前に思っていただけるようになると思います。みんなでがんばりましょう!

Salon Data

アリーナ美容室【アリーナビヨウシツ】

アクセス
東急田園都市線 桜新町駅から徒歩30秒
創業年
1994年
店舗数
1店舗
設備
セット面4席
スタッフ数
3名 
URL
http://www.arena-hair.net/index.html
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