イノベーターが
見ている未来

vol.7

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

MERICAN BARBERSHOP
株式会社日仏商会

結野多久也さん (age.37)

カッコいいオトコが集うバーバーの次は?
理容と美容、いいとこどりのボーダレスサロン。

世界のハイブランドアパレル店やおしゃれなカフェが点在する神戸・旧居留地。その一角に2015年・夏に誕生した「メリケンバーバーショップ」。瞬く間に感度の高い大人の男性の支持を得て、理美容業界からも注目を集めています。このサロンを運営するのは、美容用品の卸売企業の日仏商会。新たなバーバーカルチャーを発信するに至った想いと、この先に描くサロン像について代表取締役・結野さんにうかがいました。

1978年、神戸市生まれ。大学卒業後、世界最大規模と言われるソフトウェア会社・SAPの日本法人に入社。経営コンサルタントとして約4年間勤務、2005年より祖父が創業した美容用品卸売業・株式会社日仏商会へ。2008年に同社の代表取締役に就任。2011年にはM&Aにより直営美容室「Breath beauu(ブレスボー)」を神戸市にてスタート。2014年より同美容室の一角で営業を始めたバーバーが人気を呼び、それを独立・発展させた店舗「MERICAN BARBERSHOP(メリケンバーバーショップ)」を2015年7月にオープンさせた。
Instagram■@mericanbarbershop
http://beauty.hotpepper.jp/slnH000289692/

結野さんが登壇予定のイベントはコチラから
BEAT LIVE Vol.2 バーバー界の風雲児が語る『熱狂的ファンのつくり方』
2016年9月5日(月)大阪 / 2016年9月6日(火)東京

第1章大手IT企業からの転身。億単位の売上減少をどう立て直したか?

「最悪な状況の家業を継ぐのは乗り気じゃなかった。
でも外から来た自分だから、できることがある気もした。」

結野さんの前職は大手外資系ソフトウェア会社とのことですが、その際はどんなことをされていたのですか。

電力会社や大学法人といった組織の、資産管理や業務運営の効率化をはかるITコンサルタントとして働いていました。そもそもその会社を選んだのは、うちの親戚に経営者が多く、自分も小さい頃から自然と経営にかかわりたいと思っていたから。入社後は大きなプロジェクトに参画させてもらえて、その成果で社長賞を受賞したりして。その次のプロジェクトでも社長賞をもらったんっス、こう見えて(笑)。

素晴らしい実績ですね。ところがわずか4年ほどで、おじいさまが創業された美容用品卸を営む日仏商会へ転職されました。波に乗っている状態で前職を退社することに、悔いはありませんでしたか?

当時の日仏商会は、年々数億円も売上が下がるような赤字状態。そんなところに来いと言われて最初は拒否してたんだけど。おじいちゃんに頼まれたら、・・・断れないっス(笑)。僕は大学時代に留年して、どうせならってことで1年くらいオーストラリアでバックパッカー生活を送ってました。そんな好き勝手を許してくれたおじいちゃんの頼みですから。本当は感情的な意思決定は嫌いなんですけど、さすがに引き受けました。

それに、考えようによってはとてもチャンスがある仕事でもあるなと思って。経営方針にもっと戦略的な視点を取り入れたり、取引先の美容サロンに対してもこれまでのように商材を売るだけじゃなくて、経営課題をサポートする知識や仕組みを提供するって方法もある。業務改革による伸びしろがたくさんあるでしょ?

そして2年ほどで黒字化に成功されたとか。前職での経験や実績から、結野さんにとってはそう難しいことではなかったのでしょうか。

イエス!経営戦略に関しては、さっき言ったようにできることがいっぱいあったので難しくなかったですね。でも人間関係の面では苦労しました。僕は結構ドライに物ごとを判断するほうだし、外資で働いていたときは論理的で合理的であればOKだった。でも日仏商会は芦屋の昔ながらの小さな会社で、情緒的な部分が重視される。タイプが違う僕が入ってきたことで、最初はスタッフからの反発がすごくて。これじゃあダメだと思って、リーダーシップ論に関する書籍を読んだりして勉強しました。『そうか、人の話は最後まで聞かなきゃいけないのか』なんてね。それまでは全然聞いてなかったんだから、ひどいよね。そういう人材運用に関するスキルは、こっちに転職してから学ぶことが多かったかな。

まぁでも、「上司が部下に一方的に指示するっていう昔ながらのやり方じゃなくて、下からの意見もきちんと吸い上げるようなフラットな関係性を築きましょうよ」って話をしていきました。そうしていくうちに、みんなもどんどん変わっていって。そういう当たり前のリーダーシップが発揮できる人材が育ったことで、経営がいい方に向かったというのもありますね。自分もこのときの経験で成長できたから、あとで美容室経営を始めたときは結構スムーズにマネジメントできたかな。

卸売業から業務を拡大して、美容室の運営をスタートさせたのはなぜですか。

これまではサロンに商材を卸したり経営サポートをしたりと、理美容のプロを相手にしてきました。それプラス、サロンを訪れるお客さん=エンドユーザーに近づく手段としてサロンを持ちたかったっていうのが大きかった。理美容のプロとエンドユーザーの両方とつながる手段を持って、ゆくゆくはオンライン上に双方が交流できるようなプラットフォームが構築できたら可能性がいろいろ広がると思うんですよ。これはこの業界に来た当初から考えてたことで、その第一歩としてサロン運営を始めたんです。

他業種を経験されたからこその視点ですね。

IT業界出身だから考えついたってのはあるでしょうね。着想のヒントにしたのは、ある医療専門サイト。そこには20万人以上の医師や医療従事者が会員登録していて。そこで何をやっているかっていうと、医療専門情報や求人情報のコンテンツがあったり、あとは医師同士で交流できるツールも。このサイトの姉妹版では一般の方向けに、医師に健康相談できる医療情報サイトもあるんだよね。

これを応用して、理美容業界で交流できる場をつくりたいんですよ。そうしたらビジネス展開としてプラスなだけじゃなく、業界の役にも立てる。理美容の世界って本当はもっと広く考えていいのに、みんな案外狭い範囲だけで付き合っている感じがして。でもこういう場で情報を仕入れることができたら、取引業者の選択肢ひとつとっても、グッと広げられますからね。

  • カットしながらビールも楽しめるのがメリケンバーバー流。取材陣を迎えた結野さんは我々にもビールをふるまい、場を和ませてくれた

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