イノベーターが
見ている未来
vol.38
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
株式会社M.O.E/flammeum
代表取締役
望月 真也さん (age.38)
スタッフの確保に苦労するサロンが多いなか、労働環境のよさが学生にも評判となって採りきれないほどの応募がある美容サロン「flammeum(フラミューム)」。一方、幹部や経営者を目指す人は「1年間、休みなし」という超ブラックなうわさも聞こえてくる。「店舗スタッフには手厚いホワイトな環境、幹部には厳しいブラックな環境」という“白黒両極端”の待遇は、何を生み出すのか?
http://moe-hairmake.com/
第1章独立開業までの道のり
「開業資金を稼ぐため業務委託サロンへ。
働き方の違いにカルチャーショック。」
望月さんは静岡県の出身で、横浜の美容学校を卒業されたんですね。
うちは母親が美容師なんですけど、「あんたは美容師に向いていない」って言われていたんですよ。だから美容師を目指してというよりは、最初は特に目的もなく横浜に出てきました。でも潜在意識としては「美容師」という職業が頭にあって。それでまずはアルバイトとして美容室で働きながら、通信教育で美容師の勉強を始めました。
卒業後は?
バイトしていたところとは別の美容室に勤めたものの、若い頃は仕事が続かないタイプで…。嫌なものは嫌!って思っちゃう。納得できないとすぐ離職を考えてしまうんですよ。
僕に限らず経営者って、こういう考え方が高じて「自分のお店を持ちたい」って方向にいくのかもしれないですね。働きながらも「もっとこうしたらお客さんが喜ぶのに、スタッフも働きやすいのに」って、常に不満を感じていて。そんなわけで、大手チェーン、個人店、有名サロンと3店舗を渡り歩きました。
不満というのは、たとえば?
まず拘束時間が長いこと。アシスタントなんてずっと立ちっぱなしで、先輩の働く姿を見学しているでしょ。「なんだこれ、みんなよくやるな」と思ってたし、そういうのに嫌気がさして辞めていく人もたくさん見てきました。
だけど不満があっても経営者には言わない、言えない。だから辞める選択をしてしまう。上の人に想いを言えない環境ってよくないなっていう当時感じたことは、反面教師として今の経営に反映しています。
3店舗目は全国展開する有名サロンにお勤めでしたね。そちらはいかがでしたか?
衝撃が走りましたね。お客さんが次から次にやってくる環境にも驚いたし、経営者になることを目指して希望をもって働いている人がたくさんいることも、それまでのサロンとは違っていました。経営者思考の人がいっぱいいて、「こんな考え方もあるんだ」という学びが多くありました。
そのサロンは年功序列じゃなくて実力主義。僕も入社半年で副店長、1年後には店長になりました。売上や指名数といった条件が明確化されていて、それをクリアするとステップアップできる。みんなにチャンスがあるんです。自分はフランチャイズ(FC)オーナーになりたかったので、その条件達成のためにも行動しました。
ところがFCオーナーになる前に同サロンも辞めていますね。
そのサロンは学ぶところもたくさんありましたが、不満点を挙げるとするならFCオーナーになる条件はあったけど、「いつまでにオーナーになれる」という期限がなかったこと。オーナーになれる明確な期日がなかったため、7年くらい勤めた後に辞めることに。
辞めたからには独立開業を次の目標にしました。でもお金がなかったので、業務委託サロンで働いて資金を貯めて。当時はまだ業務委託サロンの数が少なかったけど、「稼げるらしい」という評判を聞いていたので。
その業務委託サロンでもカルチャーショックがありましたね。業務委託なので当たり前だけど、ルールや組織といった、これまで働いたサロンにはあったものが何もなくあいまい。だけどお客さんはめちゃくちゃやって来る。根本から自由で、すべて自分次第の働き方ができる。美容師への還元率もすごくよくて、たくさん働けるし、休みも取れる。これは画期的な仕組みだな、美容師の心がつかめるなって思いました。
組織化されたサロン、自由な業務委託サロン、それぞれを経験されたわけですね。業務委託サロンはどれくらい?
4年間くらいですね。朝の6時から夜の23時半まで美容師として働いて、そのあとはトラックのルート配送。4年間、1日も休まずにこの生活を続けました。開業という夢へのステップだと思えば、たいしたことじゃありません。お金がないなら、諦めないで貯めるために行動する。負けず嫌いなんでね、なんとかしてやろうと考えるんです。
その間、住んでいたのは家賃が安い事故物件。洋服もネットオークションで中古の100円、200円のものを買って着ていました。業務委託サロンの仲間からは「もうちょっとおしゃれしたほうが…」なんて言われましたけど(笑)、削れるところは削って貯金に回して。やると決めたら達成までのスピードも大事ですから。
労働環境はブラック&ホワイト。
2軸の“働き方改革”とは?