ファンを作るサロ友
ファンを作る「サロ友」とは?
少子高齢化でお客さまが減る中、リピート客獲得がより重要になっています。
そんな中、「顧客同士のつながり」を生み出すことで「サロンのファン」を作る…「サロ友」についてご紹介していきます。
CAFE and HAIR SALON re:verb(岐阜県岐阜市)
カフェ併設サロンから街へと広がる交流の輪とは?
名鉄岐阜駅と柳ヶ瀬商店街をつなぐ大通り沿いに、2018年11月にオープンした「CAFE and HAIR SALON re:verb」。こちらはその名の通りカフェを併設し、バリスタが淹れるスペシャルティコーヒーが愉しめるヘアサロンです。
カフェスペースでは毎月2回、さまざまなアーティストによる音楽イベントが開催され、居合わせたお客さま同士の交流が始まることも。
イベントを始めた背景や目指す未来像について、ヘアサロンのオーナーである田口智大さんにインタビューしました。
カフェスペースでは毎月2回、さまざまなアーティストによる音楽イベントが開催され、居合わせたお客さま同士の交流が始まることも。
イベントを始めた背景や目指す未来像について、ヘアサロンのオーナーである田口智大さんにインタビューしました。
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音楽イベントができるカフェ併設サロンをオープン。
バリスタとして働く音楽仲間にコラボ店舗を提案。
田口さんがバリスタの福井さんに出会ったのは、地元の柳ヶ瀬商店街にあるライブハウス。バンドを組んでいる福井さんがコーヒーを淹れ、それに合った演奏をするというイベントがあり、ライブハウスの常連だった田口さんがDJに抜擢された。バリスタが淹れるコーヒーとバンド演奏の組み合わせは予想以上に観客が集まり、雰囲気も上々。当時、開業の計画を進めていた田口さんは「これをヘアサロンとカフェでやったら面白そうだ」とひらめく。「福井さんはジャパンバリスタチャンピオンシップのセミファイナルに出場するほど高い技術の持ち主。そこで、音楽イベントができるヘアサロン併設のカフェを一緒にやらないかと提案したんです」と田口さん。福井さんに独立の決心がつくまで慎重に店のプレゼンを続け、2年かけてついにOKの返事をもらったという。
かくして、入口側にカフェ、その奥にヘアサロンが広がるコラボ店舗がオープンする。双方のスペースはガラス窓で仕切られ、それぞれに営業しているが、サロンでの施術中にカフェのコーヒーを味わうことも可能だ。
グランドオープンを記念して開催した音楽イベントには、ライブハウスの関係者も訪れて大盛況に。以来、毎月2回、カフェスペースで音楽イベントを開催している。
イベント開催の最終目的は、地元の街へ人を呼ぶこと。
音楽イベントには、バンドやDJなど毎回3~4組のアーティストが登場。出演者は田口さんがライブハウスでスカウトをしたり、サロンのSNSに募集メッセージを載せるなどして集めている。イベントのほとんどが予約不要の立席スタイルで、毎回10名~20名ほどの来店があるという。
「ライブハウスは馴染みのない人だと入りにくいイメージがありますよね。ここでのイベントをきっかけに、もっと身近に感じてもらいたい」と語る田口さんだが、イベント開催の目的はそれだけではない。最終的に目指しているのは街おこしだ。「僕らの店は岐阜駅から歩いて15分ほどの柳ヶ瀬商店街近くにありますが、周辺はここ数年で過疎化が進んでシャッター街になってきているんです。学生時代に遊びに来ていた頃の活気を取り戻してほしくて、何か力になれないかと。うちの店のイベントをきっかけに、街へ人を呼び込みたい」と田口さん。
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出演者とお客さま、それぞれに対する細やかな心配り。
イベントの宣伝はスタッフ全員が行う。
イベントを開催するにあたり気を付けているのは、「告知の手を抜かないこと」と田口さん。「出演してくれるアーティストが頑張って告知しているのに、こちらがいい加減にPRするのではイーブンな関係にならないと思うんです。今度こういうアーティストが来ますよと、僕らが発信した方がお客さまに興味を持ってもらえると思うので、手を抜いちゃいけない」。最初の頃は店のSNSでのみ告知していたが、それでは生ぬるいと、スタッフそれぞれのSNSでの発信を全員に指示したという。「あとは出演者さんの力量次第、というところまで舞台を整えておくことが僕らのミッションです。出演してくれるアーティストに失礼がないように全力でサポートしたい」と田口さん。
会場に来てくれたお客さま同士を紹介し合う。
音楽イベント開催時はサロンの営業を終了し、スタッフみんなで会場運営に回る。その際に田口さんが心がけているのは、お客さま同士がつながるようにサポートすること。ひとりきりでいるお客さまに声をかけて、他のお客さまとの会話に誘い込んだり、気が合いそうなお客さま同士を引き合わせたり。楽しく過ごしてもらうために積極的に交流を仕掛けている。「イベントで知らない人に自分から話しかけるのは難しいと思うので、きっかけは僕らが作るようにしています。イベントが終わったらそのまま飲みに行ったり、別の日に一緒にカフェに来たり、違うイベントに来てくれたりと、ここで知り合った後もお客さま同士の交流は続いているようです」と田口さんは満足気。さらに田口さんたちがおすすめしている柳ヶ瀬商店街のカフェなどで、お客さま同士がバッタリ顔を合わせて相席することもあるとか。「そうすると店の人も、知り合いなんですか?と話しかけるきっかけができて、輪が広がるんです。うちの店だけでなく、街全体に交流の輪が広がってくれれば嬉しいですね」と田口さん。もはや“サロ友”を越えた“街友”をプロデュースしていると言っても過言ではなさそうだ。
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イベントがサロンとお客さまとの距離を近くする。
音楽以外にも多彩なイベントが誕生。
「CAFE and HAIR SALON re:verb」で開催されるイベントは音楽イベントだけにとどまらない。英会話教室とボードゲーム大会をそれぞれ月に1回開催している他、よさこい踊りのイベントなども。「英会話教室で講師をしてくれているのは、カフェの常連でアメリカ人のお客さまです。英会話講師の仕事をされているのですが、カフェに居合わせたお客さまが英会話に挑戦したいと話したことから、企画が生まれて実現しました。また、よさこい踊りの出演者は僕のお客さまです。岐阜大学でよさこいサークルに所属しているお客さまたちに、ぜひこの店でやってほしいとお願いして、公演してもらいました」と田口さん。それをきっかけに同大学のヒップホップサークルが公演し、プロのダンス教室からも出演依頼が来るように。オープンからわずか1年ほどで、店は街の人々に親しまれる場所として成長した。
サロンのお客さまをカフェのファンに。
カフェを併設し、イベントを開催することで「お客さまとのコミュニケーションが取りやすくなった」と田口さんは話す。「通常はサロンで2~3カ月に1回しか顔を合わせる機会がないお客さまたちと、イベントやカフェをきっかけにもっと高い頻度で会ってお話しすることができます。すると切って数日たったヘアスタイルの仕上がりをチェックできますし、パーマを上手く扱えないと相談されればアドバイスすることも。お客さまと気軽にそういう話ができる関係性はとても貴重です」。だからこそ「サロンに来るお客さまをカフェのお客さまにしたい」という。そのためにスタッフみんなでコーヒーの講習を受けて、サロンでコーヒーを注文されたお客さまへ、提案や味わいの説明ができるように準備するなど、田口さんの情熱は尽きない。
オーナーインタビュー
Q.今後さらに取り組みたいことは?
A.地元商店街でのイベント運営サポート団体を作りたいです。
サロンの話ではなくなってしまうのですが、商店街の人たちとイベント団体を作って、持ち込まれた企画の運営サポートができるようにしたいと考えています。例えば大学生など一般の人が柳ヶ瀬商店街の中で大バーベキュー大会を開いてみたいと思った時、どうやって許可を取ればよいのか、申請先も進め方もわかりませんよね。僕らは今、各店のオーナーたちとつながりがあるので、許可を取ったり、挨拶回りに行ったり、開催のための手はずを整えることができます。楽しいアイデアを持つ人に向けて便利な窓口を作ることで、商店街の活性化に一役買えればと思っています。
Q.スタッフの働き方が「完全自由」と聞きました。どのようなお考えからですか?
A.技術者であるスタッフたちに楽しく働いてもらいたいからです。
うちのサロンの勤務体制はシフト制で、休みも勤務時間も完全自由です。土日を休みたいならそうすればよいですし、子育て中でお昼の時間だけしか働けないというならそれもOKです。実際に平日に各日2時間だけ出勤するママ美容師や海外と日本を3カ月ごとに行き来しているダブルワークの美容師もいます。そういうスタッフがいると空気が新鮮に変わりますし、学べることも多くて楽しいですよ。型にはまった働き方というのは、もう時代遅れだと思います。しっかり技術を身につけてきたスタッフたちには、好きなように、自分に合った楽しい働き方をしてもらいたい。僕がスタッフたちに強要していることといえばただ1つだけ、「イベントに参加してみんなで遊ぼう」ということくらいです。
Salon Data
CAFE and HAIR SALON re:verb【カフェアンドヘアサロン リバーブ】
- アクセス
- 名鉄岐阜駅から徒歩7分
- 創業年
- 2018年
- 設備
- セット面6席
- スタッフ数
- 6名(美容師5名、アイラッシュデザイナー1名)