PEOPLE.11 井手 直行(てんちょ) ヤッホーブルーイング 代表取締役社長(よなよなエール愛の伝道師)
赤字・離職続きだったビール会社は いかにしてファンの支持を得て、 18年連続 増収となったのか?
日本国内における、クラフトビールのなかではシェアトップを走る。そして、よく知られるのが、熱狂的ともいえるファンの存在だ。ファンはどのようにして生まれるのか、スタッフに与える影響とは。
(井手さんのお名前についている「てんちょ」「よなよなエール愛の伝道師」については、本編で!)
Profileプロフィール
1967年 福岡県出身。 大手電気機器メーカー、広告代理店などを経て、ヤッホーブルーイング創業時に営業担当として入社。赤字が続いていたなかネット通販事業を推進し、2004年に業績をV字回復させる。創業者である「星野リゾート」代表・星野 佳路さんよりバトンを受け取り、2008年、同社代表取締役社長に就任。
・「ヤッホーブルーイング」コーポレートサイト
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お家でちょっと贅沢なクラフトビールコロナ禍のニーズもあり、利益は2倍!
千葉
(ホットペッパービューティーアカデミー・アカデミー長)
「18年連続 増収」というのは、すごいですね。コロナ禍では、いかがでしたか?
井手
おかげさまで売上・利益ともに好調です。弊社は11月が期末となりますが、現段階で前年比130%、利益は2倍近くになる見込みです。
コロナ禍において、ビール業界も苦境を強いられた場面が多くありました。その状況下で、弊社が比較的影響を小さくおさえられ、売上も伸ばせた理由は、いくつかの側面があるかと思います。
ビール会社大手さんはまんべんなく、いろんなチャネルに出しているなかで「飲食店向けの販売」が激減しました。ヤッホーは全国のスーパー、一部コンビニ、インターネット通販をメインでやっていたこともあり、そこのダメージが少なかったこと。
もうひとつは、コロナ禍による「巣ごもり消費」です。旅行や外食に行けなくなったぶん、せめて家で、“ちょっと贅沢をしたい”。そんな時、普通のビールではなくクラフトビール、というニーズに合致したように思います。
あとは、やはりファンの方による支えがあったからですね。普段からファンのみなさんとの関係性を築けていたからこそ、こういった大変な世相のなか、買ってもらえたことが大きいと思います。
千葉
熱狂的なファンが多いことでも知られます。ファンが大事だと、気づいたきっかけは?
井手
1990年代後半にあった「地ビールブーム」が終焉を迎え、それまで飛ぶように売れていた看板製品の「よなよなエール」がまったく売れなくなり…。その後は8年間赤字で、いつ潰れてもおかしくない状況でした。
そこで“頼みの綱”といった感じで、それまで開店休業状態だった「インターネット通販」に本腰を入れはじめました。2004年のことです。僕はそれまで、パソコンもほとんど触ったことがない、インターネットで買い物をしたこともない。サイトのトップページの作り方、商品撮影の方法などを勉強して、片っ端からやっていきました。
その一環で始めたメルマガは、お客さまとの唯一のコミュニケーション。よくある「新商品が出ました」「値引きします」とかではなくて、クラフトビールに対する熱い想いを長文で発信するなど、試行錯誤しながら続けました。そのうち、メルマガに直接返信をくれるお客さまが出てきて、「おいしい」「ありがとう」という反応をもらえるように。うれしくて、テンションがあがりましたね。
時には、お客さまと電話でコミュニケーションをとったり、ビール缶を擬人化した寸劇を撮影して配信したり。楽しいことをたくさんやっていったら、無理に売ろうとしなくても、売上が自然とあがっていきました。