イノベーターが
見ている未来
vol.82
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
HAIRCAMP(ヘアキャンプ)
代表取締役社長 森本 賢志さん (age.39)
最近、お会いする美容業界関係者のほぼ全員が、そのサービスを話題にする。美容業界の教育に特化した、オンライン教育プラットフォーム「HAIRCAMP」だ。会員数5万人、月間UU (ユニークユーザー:サイトに訪問したユーザー数)は6万人、日本の美容師人口は約50万人であることから「美容師の10人に1人が利用しているサービス」とうたう。サロン向けスクール立ち上げと海外展開、ド肝を抜くコンテスト構想まで…。これからの展望をうかがった。
https://haircamp.jp/
第1章大工→ホスト→ヘアメイク!?
「当時流行っていたTVドラマ
“Beautiful Life”を観て、美容の世界に」
まず、森本さんご自身について教えてください。経歴を拝見しましたが、異色のキャリアですね!
両親が厳しかったからか、はやく働いて自由になりたいという気持ちが強かったんです。高校は入学から1カ月も経たないくらいで行かなくなり中退したので、社会人デビューは16歳。大工、営業、ホスト、ヘアメイク、ヘアメイクの人材派遣…いろいろ経験しました。
ホストとは、意外です。ヘアメイクの仕事に興味を持たれた、きっかけは?
僕の世代は、木村 拓哉さん主演の『Beautiful Life(2000年放映/TBS系列のTVドラマ)』がすごく流行っていて。「なんてキラキラして、華やかな世界なんだろう」と。当時、自分は営業の仕事で、ひたすらテレアポしたり、かたっぱしから家をピンポンしてまわる…。営業成績はよかったものの、“やりがい”を感じることができなかったんです。
そこから、ヘアメイクを目指しました。美容学校に行って、その後ヘアメイクとしても働きましたが、自分がそれなりのレベルに到達するのはハードルが高いと痛感して…。美容業界への興味はありつつも、収入も追いつかずいったんお金を貯めようと、再び営業の仕事に戻りました。
そして2013年、27歳のときに会社を2つ起こしました。ひとつは「映像配信・制作会社」。もうひとつは、おもに水商売の方の髪をセットする「セットサロン」。これはホスト時代に通っていたセットサロンの担当ヘアメイクさんと意気投合し、僕が出資する形で起業したんです。「HAIRCAMP」はこのセットサロンが軸にあって、美容業界に参入したのはこの時です。
憧れの美容業界に入ってみて、どうでしたか?
ヘアメイクの仕事や、セットサロンを経営していくなかで、「教育」に課題を感じるようになりました。講習で技術を学んだとしても、次の講習まで1週間あいてしまうと、次に来た時には忘れてしまうので、またイチから…となるパターンが多かった。そこで「予習・復習を動画でしよう!」と、まずは自社に登録いただいているヘアメイクさん向けに、100本くらい一気に制作しました。
くわえて、ヘアの作品をつくったらLINEグループに投稿してもらい、そこにスタッフが赤ペンを入れて。それらを繰り返していたら、社内の技術レベルがグッと上がり、それまで結構な頻度で起きていたお客さまからのクレームも、ほぼなくなりました。接客力とかマナーって、口で何度も言うより、動画のほうが瞬時に理解でき、自分で考えて動いてくれるようになります。
これを社内にとどめておくのは、あまりにももったいないと思い、それが今の「HAIRCAMP」につながります。
そこから現在までは、順調に?
いえいえ!展開を急ぎすぎるあまり、社員に意識がいっていなかったのかもしれません。人が離れ、裏切りや横領に遭い、多額の借金に追われたことも…。
でも、すべての仕事と経験が活きています。その時の反省もあって、今は人を大切に想うことができます。人は変わり続けないと生き残れない。会社も同じで、“時代に合わせていかに柔軟でいられるか”を大事にしています。
美容業界の“学び”をアップデートする。
次なる一手、「スキルの見える化」とは?