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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.51

実例編表参道サロンの訪問美容への挑戦

ハイセンスなサロンの激戦区である表参道で、子育て中のママにも人気の「RHYTHM」。オープン当初から、女性スタッフが働きつづけられるしくみを考えてきたのがオーナーの佐藤美代子さん。スタッフのやりたいことに寄り添った経営を続けています。もともとご自身が訪問美容をやりたいと考えていたこともあり、ジュニアスタイリストの岡根京花さんが訪問美容を志したときも、その夢を応援し、岡根さんにとって働きやすい方法をともに模索しています。そんな「RHYTHM」での訪問美容のあり方について、お二方にお話を伺いました。

RHYTHM

  • 全スタッフ10名
  • 2店舗
オーナー:
佐藤美代子さん
訪問美容開始:
2022年
訪問施設数:
1施設
施設訪問頻度:
1カ月に2回(1回の訪問で3〜6名)
訪問スタッフ:
1名(兼任)
価格:
カット2,500円〜

Q

「RHYTHM」の訪問美容のしくみは?

A

「やりたい」と手を挙げたスタッフに任せています。

訪問美容を希望したスタッフが、副業的に個人の裁量で行っています。

佐藤さん:現在、訪問美容に携わっているのは岡根1名です。他のサロンとはしくみが異なるかもしれませんが、「RHYTHM」の名前で活動しているものの、経営的には岡根の個人の活動としています。経営者としての私の考えは、訪問美容に限らず、スタッフがサロンワーク以外でやりたいことがあったら、できる限り応援したい。もちろん、美容からかけ離れていないことを前提としていますが、副業OKのようなイメージです。
岡根は現在、メインはサロンワークですが、自分で見つけて契約した介護施設で定期的に施術を行っています。訪問美容を個人の活動とすることで、施設での施術料が全額岡根の取り分になるようにしているのです。本人の希望にもよりますが、将来的に施設の契約数が増えたり、ほかにも訪問美容をやりたいスタッフが集まれば、岡根が訪問美容の会社をつくって事業化すればよいと思います。サロンワークは「RHYTHM」のスタッフとして、訪問美容はその会社の経営者として、岡根が二足のわらじを履く働き方もアリだと考えています。

  • 「スタッフがやりたいことをみんなで応援できるサロンが私の夢です」と語る佐藤さん

Q

訪問美容を始めようと思ったきっかけは?

A

それぞれの経験から高齢者の方に対する施術の必要性を感じていました。

身近なところで、訪問美容が求められていると感じることが増えてきました。

佐藤さん:私が独立して「RHYTHM」を立ち上げたときから、コンセプトは「一生一緒につきあっていけるサロン」。最初は子育て世代のお客さまをターゲットに、子連れでもサロンに来られるよう、お子さま連れで安心して来店できる「ママの日」をつくるなどしてきました。最近では、親御さんの介護で予約をキャンセルされたり、親御さんが指名していたスタイリストが引退してしまったというお客さまが増えてきたのです。それで訪問美容の必要性を感じ始めていました。また、私の祖母が、寝たきりになったときでさえ「髪を染めたりきれいにしたい。美容室に行きたい」と言っていると母から聞いていました。亡くなる直前に私がカットしに行ってあげられたのですが、そのときに母から「訪問美容は必要とされている仕事」と言われたことも心に残っていました。

介護施設に入った方にも美容を届けたい。

岡根さん:私は実家がサロンを営んでおり、両親とも美容師です。お客さまはご近所の方々が多く、私も顔なじみでした。子どもの頃からかわいがってくれていたお客さまたちが、高齢になり施設に入所するなどして来店できなくなった様子を目の当たりにしてきたのです。そうした方々に美容を届けたいという気持ちがありました。新卒で別のサロンに勤めていたときに、ボランティア研修で介護施設に行っていました。その頃から、いつかは仕事として訪問美容をやりたいという気持ちが大きくなっていったのです。その後「RHYTHM」に転職しましたが、表参道では訪問美容をやっているサロンがまだ多くありません。「他店との差別化にもなり、個人としてもサロンとしても強みになるのでは」という思いもあります。

  • 「美容師の働き方を柔軟に変えていきたい」と語る佐藤さんと、そんな佐藤さんに影響を受け、自分なりの働き方を模索し始めた岡根さん

Q

岡根さんが訪問美容を始めるまでに、サロン、岡根さんそれぞれで何をしましたか?

A

学校で学ぶ費用の一部をサロンで補助。その後の活動は本人次第。

自分自身が担当できない分、スタッフの学びを応援。

佐藤さん:私自身も訪問美容に関心があったものの、「RHYTHM」のほかに「ducca」という店舗の経営もして、スタイリストとしても現役のため、自分が携わる時間はありませんでした。そのときに岡根が「勉強してやってみたい」と言ってくれたのです。それで、訪問美容を専門で学べるスクールに入る費用の一部をサロンで援助して、岡根に任せることにしました。岡根はスクールには週1回、半年間通い、訪問美容の基礎的な知識や技術だけでなく、介護職員初任者研修の勉強もして資格も取りました。その後に訪問美容をどう展開するかは、岡根自身がやりたいように任せています。

訪問美容のスクールで介護の資格も取り、知人の紹介で施設と契約。

岡根さん:スクールで学んで介護の資格を取得した後、介護施設で働いている知人から施設の管理者の方をご紹介いただきました。管理者の方は新しいことをいろいろやってみようという考えをおもちでした。利用者の方へのサービスとして、美容だけでなくさまざまな訪問業者を呼び込もうとされていて、契約をいただくことができたのです。それが昨年(2022年)の5月で、事業として訪問美容をスタートしてまだ9カ月ほどです。現在は月に2回訪問し、カットのほかにハンドマッサージやネイル、眉カットなどをしています。将来的には移動式シャンプー台も用意して、パーマやカラーもできるようにしたいですね。施設からは提携施設を紹介できるとお声掛けいただいています。しかし、今はまだ、サロンワークと訪問美容のバランスをどうしていくべきか検討中です。カットの単価設定をサロンよりも低くしているため、訪問美容の比率を上げた場合の自分の手取りがどうなるかなど、経営的な視点でもきちんと考える必要があるからです。

  • 岡根さん自作のフライヤー。サロンにも置いていたところ、お客さまのなかに訪問美容を専門としている同業者がいることがわかり、思わぬ縁ができたそう

Q

訪問美容を実際にやってみていかがですか?

A

きれいになることで、高齢者の方々が前向きになってくださるのがうれしい。

定期的な訪問をすることで、カットすることを楽しみにしてもらえるようになりました。

岡根さん:今までは半年に1回くらいしか髪を切っていなかった高齢者の方々が、私が定期的に施設を訪れるようになって、カットする間隔が短くなってくるのです。ご自身のお好みのようにしてさしあげることで、少しでも伸びてくると気になってくるようです。つまり、「きれいになりたい」と気持ちが前向きになっていくんですね。最初は「なんでもいい」とおっしゃっていた方が、次に行くと「こうしたい」と好みが出てくることもあります。美容を通して元気になっていらっしゃることを実感できるのがうれしいです。でも最初に訪問したときは、私のような髪型・服装の若者になれておらず、利用者の方々にも職員の方々にも警戒されていました。でも、「話すと意外と普通ね」と言われ(笑)、徐々に信頼関係を築くことができました。職員の方々からも、「あの利用者さまの髪が伸びてきたので、ご家族にカットすることを勧めておきました!」と言ってもらえるようになっています。

  • 表参道のサロンだからこそできるクオリティを届けられるよう、努力している

  • 契約施設の利用者さまは美意識の高い方が多く、ネイルや眉カットなどの要望もよくある

Q

今後は訪問美容をどのように展開させたいですか?

A

美容師の多様な働き方のひとつとして続けていきたいです。

働く拠点のひとつが訪問先になればと考えています。

岡根さん:美容師を目指した当初は、いずれは実家を継ぎたいと思っていました。でも、佐藤さんと出会って、多様な働き方を許容してもらえたことで、働き方の視野が広がりました。なので今は、拠点を絞る必要はないと考えています。例えば週のなかで、「RHYTHM」でサロンワークに立つ日、訪問美容に行く日、実家のサロンを手伝う日と曜日ごとにいろいろな場所で働くこともできると思っています。そう考えれば訪問美容のエリアも広げられますし、1つの場所に縛られずに美容の仕事をつづけていきたいです。

  • 利用者の方々から「話し方がやさしいのね」とお褒めの言葉をいただくことも。自分の仕草を見ていてもらえるのもうれしく感じる

スタッフがやりたいことを叶えて、自分の価値を高めていってほしい。

佐藤さん:サロンは人が財産です。そして人はやりたいことがひとつとは限りません。スタイリストとしてサロンに立つこと以外にやりたいことがあって当たり前なんです。岡根にとってそれは訪問美容でした。例えば「海外でボランティアをしたい」というスタッフがいたとして、それを叶えるために、サロンを辞めずに並行して叶えてほしいのです。私自身もサロンに勤務していたときに、オーナーの許可をもらってトリマーの資格を取らせてもらった経験があります。スタッフの価値を高めるのは本人であり、会社ではありません。サロン以外での経験がそのスタッフの価値を高めるのであれば、タイミングを逃さずにできるときに経験してほしい。「やりたい」という気持ちを殺さずに、「スタッフがやりたいことを、やりたいときにできるサロン」にしていきたいと考えています。岡根は訪問美容をすることで、自分の価値を確実に高めています。いろんな価値をもったスタッフの集団になれたらサロンとしても強くなれると思います。

  • スタッフが自分のやりたいことに心置きなくうちこめるよう、有給の多目的休暇を導入することも検討中

佐藤さん・岡根さんからひとこと

佐藤さん:「やりたい」気持ちを大事にして、その熱意を諦めずに言葉にしてまわりに伝えてほしいです。伝えることで共感してくれる人、反対する人もいるでしょう。反対意見は違う視点に気づける貴重な機会。いろんな意見を聞いたうえで、あらためて自分が訪問美容をしたい理由やメリットを伝えて意志を貫いてほしいです。
岡根さん:訪問美容は熱意があれば始めるのはむずかしくないです。でもやるからにはまわりに応援してもらって踏み出した方が絶対良いです。理解を得られるように情報を集めたり、先駆者の方の話を聞いて、自分から主体的にまわりの方に働きかけてみてください。

Salon Data

RHYTHM【リズム】

アクセス
表参道駅A1出口から徒歩6分
創業年
2011年
店舗数
2店舗
設備
セット面4席
スタッフ数
5名(RHYTHM)
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000221853/
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