サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~
超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。
vol.54
実例編出張フットケアで契約施設数30件!
Dr.ネイル 蒲田蓮沼店
- 全スタッフ3名
- 1店舗
- 代表:
- 秋山ゆたかさん
- 訪問美容開始:
- 2016年
- 訪問施設数:
- 30施設
- 施設訪問頻度:
- 1〜3カ月に1回(1回の訪問で1〜15名)
- 訪問個人顧客数:
- 20名
- 個人顧客訪問頻度:
- 1〜2カ月に1回
- 訪問スタッフ:
- 3名(専任2名、兼任1名)
- 価格:
- 施設・美爪ケア3,850円〜、 個人・トータルフットケア10,000円〜
-
Q
フットケアを始めたきっかけは?
-
A
亡くなった母に対する自責の念から始めました。
母が亡くなったときに、足の爪がボロボロだった。
独立するまでは古物商や会社員などいろいろな仕事をしてきました。でも放蕩息子で親不孝者。8年前に母が亡くなり、葬儀の準備で白足袋を履かせようとしたときのことです。母の足が肥厚爪(ひこうつめ)でボロボロになっていて、足袋を履かせられませんでした。母の爪を見て、今まで心配をかけ続けてきた自責の念とともに、「もしも生きているときに気づいてあげていたら、爪をきれいにしてあげることができたのだろうか」という想いに駆られました。葬儀後にネットで調べてみると、フットケアという仕事があること、当時は唯一、フランチャイズで足と爪をケアするサロンを展開する「ドクターネイル爪革命」の存在を知ったのです。
フランチャイズ本部のスクールで学び、独立準備を進めた。
「ドクターネイル爪革命」を経営する在宅医療マッサージ(株)は、もともと介護施設への訪問マッサージをしていた企業です。訪問マッサージを通じて足や爪のトラブルを抱えている高齢者の多さを知り、それをケアすれば健康にも寄与できることからフットケアを始めたそうです。代表からその話を聞いたときに、「自分の想いを叶えられるのはこの仕事だ」と確信したのです。「ドクターネイル爪革命」ではフットケアのスクールも開講していたので、そこで知識と技術を学んで認定資格を取得。オリジナルの「ドクターネイルマシン」が、市販されているほかのネイルマシンよりも洗練された機能であることも決め手になり、フランチャイズ契約をしました。私はサロンをもたずに個人で出張専門で始めることにしました。全く未経験の業界で成功する確信はありませんでしたが、母への想いから「やるしかない!」と思っていたのです。
-
Q
独立してから営業はどのように進めましたか?
-
A
介護施設に飛び込みで回り、無料体験会の開催をお願いしました。
施設側の課題をしっかりヒアリングして、要望に応える。
前職で営業経験はありましたが、介護施設への営業は初めてで、アプローチ方法もわかりませんでした。ただ、施設が公開している電話番号は利用者さま募集のフリーダイヤルがほとんど。こちらから営業するための電話代を施設側がもつのはおかしいと思いました。電話でのアポイントはとらず、まずは直接飛び込みで訪問。伺ったときに施設長さんがいなかったり、話を聞いてもらえなかったりしたときは、「今度はお電話してから伺うので、フリーダイヤルでない番号を教えてください」とお伝えしていました。
営業で大事にしていたのは、まず施設側の要望や、何に困っているかをヒアリングすること。どんなに自分たちのサービスに自信があっても、相手が求めることに合致していなければ心に響かないからです。多くの施設では、利用者さまたちは家族と別れて慣れない施設に入り、話し相手もおらず淋しい想いをしているようでした。職員の方々はご自身の仕事が多忙で利用者さまと過ごす時間を思うように取れていない。そうした課題に、私が爪のケアをしながら応えてさしあげられることをお伝えしました。
無料体験会を開くとほぼ契約に結びつく。
ただ、口頭で説明しても施設の方々にはなかなかイメージがつきづらいものです。そこで、無料体験会をさせてほしいとお願いしています。無料体験会をすると、受けていただいた利用者さまのほとんどから「次はいつ来てくれるの?」とおっしゃっていただけます。営業を始めて最初の契約を取るまでは約2カ月かかりましたが、無料体験会をうまくご提案できるようになってからは、トントン拍子に契約に結びついていったのです。今では30施設に定期的に通っています。無料体験会で意識したのも、利用者さまのお話をよく聞くことです。「この人は自分の話をちゃんと聞いてくれる。仲良くなれそうだ」と思っていただくことが大事ですね。足を見れば、その人が働きづめだったのか、悠々自適に過ごしてきたのかなど人生がわかるので、そうしたことをきっかけに会話をすると信頼関係が築けるように思います。個人のお客さまの場合は、ご家族の方がSNSで見つけてくださることがきっかけですね。遠い場所では静岡や埼玉まで伺っています。
-
Q
実際に訪問フットケアをやってみていかがですか?
-
A
出張ケアは毎日楽しいです!
利用者さまの味方になることで、お元気になっていくことがやりがい。
高齢者の方々に施術をすると、100%「ありがとう」と言っていただけて、日々やりがいを感じています。施術のことよりも、むしろ話をしたり、訪問すること自体を喜んでいただけているようです。極論すれば、フットケアは手段にすぎず、最も求められているのは、利用者さまと楽しい時間を共有することだと思います。どれだけお話を聞いて、味方になってさしあげられるかです。例えば、認知症の方など、職員の方と意思の疎通がうまくいかず、リハビリを拒んだり孤独感をおもちの利用者さまもいます。そうした方々と私がお話ししながら仲良くなって施術をすると、足の状態がよくなっていきます。「じゃあ、今度は歩いてみましょうか」とお声がけするとリハビリを受ける気持ちになっていただけて、ご家族や職員の方々からも喜んでいただけるのです。こうした経験をもとに、「利用者さまを見守るチームの一員にしてください」とお伝えすることで、さらに契約が広がっていくこともあります。
施設の付加価値として認めていただけた!
ご家族や職員の方々に安心していただけるよう、施術の内容と経過をお伝えする「施術報告書」を毎月お渡ししています。「利用者さまの足の快復を共に喜び合える仲間」と思っていただけるきっかけになっていると思います。嬉しかったのは、施設の内覧会の際に私の施術もご紹介いただいたことです。私が訪問することを施設の付加価値として認めていただけたことが誇らしかったです。
-
Q
今後はどのように展開していきたいですか?
-
A
高齢者のフットケアは裾野が広い。仲間を増やしていきたいです。
足に悩みをもつ高齢者は多く、マーケットは広い。
以前はフットケアというと、若い女性向けのリラクゼーションや美容目的のものが中心でした。しかし、最近は我々と同業で高齢者向けのフランチャイズチェーンも増えてきました。私はとてもよいことだと捉えています。高齢化で足に悩みをもつ方が増えていることは間違いなく、競合の店舗が増えるということは、高齢者向けのフットケアが認知されてきた証しだからです。そのなかで我々のチェーンや、私自身の強みを伝えていけば、これからも施設から求めていただけると考えています。
自分はサロンワーク比率を上げて、訪問はスタッフに任せたい。
独立以来、ひとりで出張専門で施設に訪問していました。しかし昨年、同じフランチャイズでサロンを構えていたあるオーナーの方が廃業されることになり、サロンをそのまま引き継ぐことになりました。私ひとりではサロンと訪問の兼任が難しかったため、訪問専任で業務委託の女性スタッフを2名雇い始めました。現在、私の比率はサロンと訪問が約半々です。サロンは固定費がかかるため、サロンワークの比率をもう少し上げていきたいと考えているので、施設に行けるスタッフを増やしていきたいです。私の訪問は指名をいただいたときと、無料体験会など営業中心で、訪問はスタッフに任せられる体制になるのが理想です。
秋山さんからひとこと
やってみたいけれど一歩踏み出せないでいる場合は、経験者の人に現場に同行させてもらってみてください。「施術者と会話をするのが楽しくて仕方がない」という高齢者の方のかわいらしさに触れることができ、やりがいを体感できて踏み切れるようになると思います。訪問フットケアは私のように未経験でも、スクールで知識と技術を学べば短期間で始めることができます。訪問美容をしている美容師の方が付加価値として始めるのにも向いているのではないでしょうか。
Salon Data
Dr.ネイル 蒲田蓮沼店【ドクターネイル カマタハスヌマテン】
- アクセス
- 東急池上線 蓮沼駅から徒歩1分
- 創業年
- 2016年
- 店舗数
- 1店舗
- スタッフ数
- 3名