女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.416名中3名がママ。ブランクあるママも
積極採用する女性オーナーの取り組みとは?
smile on nylon hair
広島市中区
広島の中心地でトータルビューティーを提供する「smile on nylon hair」。スタイリッシュなのにどこか居心地のよいアットホームな店内は、落ち着いて施術を受けられると女性に人気です。全6名のスタッフのうち3名がママ。育児で仕事を一時辞めていたママスタッフも積極的に採用しているという、オーナー高橋さんの理念とその取り組みをうかがいました。
1取り組み
ブランクがあるママでも、積極的に採用。
どんな取り組み?
オーナーの高橋さんを含め、現在ママスタッフは3名。1名は子育てで4年間ブランクのあった2児のママスタイリスト、もう1名は3児のママでレセプション担当だ。過去にも育児で10年間ブランクのあったスタイリストを雇用したこともあるという(現在はご自身の店を開業して独立)。
なぜそうした? メリットは?
高橋さんがママを積極採用する理由はふたつある。ひとつは、「子育てもキャリア」という考え方だ。「育児は神経を研ぎ澄ましていなければできないこと。子育てを経験したママたちは、手際がいいだけでなく、赤ちゃんに触れているので人に対する触れ方が柔らかで、お客さまからも喜ばれるのです。
サロンワークだけがキャリアではないと思います」(高橋さん)。
もうひとつは、子育てで一度スタイリストを辞めて、復帰したがっている30代の女性が多いことだ。「慢性的に人手不足の美容業界で、彼女たちのキャリアを活かさない手はありません。ただ、一度離れると自信を失っていることもあるので、技術的なことなど復帰支援はもっと体制を整えなければならないと思っています」(高橋さん)
2取り組み
育児中は無理のないよう、在宅でできる仕事を。
どんな取り組み?
現在育休中のスタッフはいないが、今後、育休中のスタッフが希望すれば、DM作成や予約管理など、在宅でできる仕事をしてもらう予定だ。ネットを使えば予約管理などの事務の仕事は家でもできる。そうすれば、育休中のスタッフも給与がもらえることになる。
背景とメリットは?
高橋さん自身が産休のときに、早く復帰したいという焦りや、社会から断絶された不安を感じたそうだ。「産後はホルモンバランスが不安定な時期。焦りや不安によってイライラしてマタニティーブルーになることもあるので、少しでも社会とのつながりを持つことで産後の心のケアにもなると思います」(高橋さん)。1日に1・2時間でも仕事をすることで、安心して復帰の日まで子育てできるようになりそうだ。
3取り組み
産休・育休に入る前に、「復帰予定日」を伝えることで失客防止。
どんな取り組み?
スタッフが産休や育休に入るときには、復帰予定の日をお客さまにも明確にして、引き継ぎをする。保育園などの事情で結果的にそれが変更になることがあっても、休みに入る前に「必ず復帰する」という意志を具体的にお客さまに伝えることで、失客防止につながる。また、復帰した際にもお客さまにそのことをきちんとお知らせしている。
背景とメリットは?
高橋さんは独立後に結婚、出産したが、ご自身は何の準備もできずに産休に入ってしまったため、当時約300人いた指名のお客さまのうち約100人を失ったそう。「経営者ですから産む前日まで働いて、出産後1カ月半で復帰しました。けれど、産休に入る前も復帰した後も、きちんとお客さまにお伝えしなかったことで、私がいるのかいないのかわからない状態にしてしまったのです」(高橋さん)。
また、復帰の日程を決めることは、産休・育休に入るスタッフにとっても「確実に戻れる」という道筋を示せ、仕事を続ける気持ちにつながっているそうだ。
4取り組み
ママ以外のスタッフの意見も吸い上げ、全員で気持ちよく仕事をする。
どんな取り組み?
スタッフの半分がママである「smile on nylon hair」。「保育園のお迎えなどで早く帰るママスタッフだけを優遇している」と、子どもがいないスタッフが感じないよう、常に若手スタッフの意見も吸い上げるようにしている。そのために、日頃からのスタッフ間のコミュニケーションと、若手とママをつなぐ中堅のスタッフの存在が大事だという。
なぜそうした?
日々の勤務時間が短いだけでなく、ママスタッフたちは子どもの発熱などで急に早退せざるを得ないこともある。そのときに若手スタッフが気持ちよく協力できるよう、中堅のスタッフがママスタッフと若手スタッフの間をうまくつないでいる。双方の事情をお互いが理解しあえるよう、若手には「いつかママになる自分の姿であること」、ママスタッフには「いつも若手が陰でがんばってくれていること」を伝えて、バランスよく折り合いをつけているそうだ。
また、年に1回社員旅行に行って、スタッフ間のコミュニケーションも図っている。
オーナーインタビュー
- Q. 育児でブランクのある人たちを採用することに不安はありませんでしたか?
-
A. 不安があるのはスタッフ本人の方。その不安を払拭してあげるのがオーナーの仕事です。
自分自身の経験から、育児もキャリアになると考えていましたから不安はありませんでした。社会から一度離れたママスタイリストたちには、技術的なブランクに対する不安や、「自分はもうキラキラした世界では活躍できないのでは?」という思いがあります。でも、もともと美容やおしゃれが好きな人たちですから、少し練習してサロンの雰囲気に慣れればすぐに勘を取り戻せます。オーナーの仕事は彼女たちの自信を取り戻させること。むしろ、「美容師免許を埋もれさせている人はいませんか?」と声をかけたいくらいです。
- Q. 育児経験のない男性オーナーの場合、出産や育児を控えた女性スタッフとどう接したらいいと思いますか?
-
A. 「人生をどうしたいのか」をスタッフと一緒に考えてあげればいいと思います。
男性スタイリストやオーナーの方々も、普段からお客さまと接しているので女性の気持ちには理解ある方が多いです。ただ、スタッフと普段からプライベートに関する会話をしていないと、スタッフからも出産後も働けるかの相談がしにくいですし、オーナーから「結婚しないの?」と言うだけでセクハラと言われてしまう時代。「今後のキャリアや人生をどうしたいかを一緒に考えよう」と切り出すといいと思います。そうすれば、女性スタッフが育児と仕事のバランスをどう希望しているかも見えてきます。
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