サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~
超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。
vol.62
実例編介護エステ・ネイル・フットケア。契約施設7件までの道のりは?
訪問シニア美容enn
- 全スタッフ4
- 代表:
- 佐藤まどかさん
- 訪問美容開始:
- 2023年
- 訪問施設数:
- 7施設
- 施設訪問頻度:
- 1カ月に1~4回(1回の訪問で2名~15名)
- 価格:
- ◆ネイル・フェイシャルエステ・ハンドトリートメント・フットトリートメント・メイクから選ぶ30分コース¥3,500〜 ◆カバーリングメイク90分¥8,000〜 ◆アクティブシニア向け美整容講座講師 美整容講座 1名¥1,500〜/ 60分(5名〜) ◆高齢者施設内美容レクリエーション代行 1名¥1,000〜/60分(10名〜) ◆お元気写真\12,000(メイクフォト付き)
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Q
介護美容を始めた理由・きっかけは?
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A
祖母の認知症発症を機に介護美容を知り、興味を持ちました。
介護される側・する側の両方をケアしたい。
結婚前は福岡空港やブライダル会社で勤務をしていました。結婚後、夫の転勤で東京に引っ越し、ホテルのブライダルサロンに勤務。その後また夫の転勤で福岡に戻ってきました。子供が大きくなって手が離れてきたこともあり「何か仕事をしたいな」と思っていたときに、祖母が認知症を発症。祖母はかわいらしい人でしたが、だんだん身なりに気を使わなくなっていって「さみしいな」と感じていました。介護をする母も疲弊していくのを見ていて「介護される側も、する側も、両方をケアしたい」と思うようになったのです。そんな時、SNSで介護美容の存在を知りました。美容の施術を受けながら話を聞いてもらうだけで、母や祖母のような人の気持ちがスッキリするかもしれない。これだけ高齢者が増えてきている世の中ですから、ビジネスとしても可能性があると思い、挑戦することにしました。
介護美容の学校に入学し、1年間勉強。
まずは介護美容の専門学校に入学し、1年間勉強することにしました。もともと美容は好きでしたが、仕事にしたことはありません。経験がないからこそ、毎日学校で習ったことを家で練習したり、興味を持った技術について別途オンラインで学ぶなど必死でした。訪問理美容を行っている会社の代表の方に会いに行って、話を聞いていただいたこともあります。在学中はボランティアでネイルケアや移動介助をさせてもらうなどして、経験を積みました。介護施設へ傾聴ボランティアに行ったこともあります。卒業前から介護施設に営業に行ったり、体験会を開催して「どんなメニュー・どんな価格だったらお母さんにやってあげたいと思いますか?」と意見を聞いたり、アンケートを取ったりして方向性を固めていきました。
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Q
どうやって介護施設の契約を増やしていきましたか?
-
A
知り合いからの紹介や、介護施設への営業を通して契約が増えていきました。
最初の契約は友人の紹介から。
最初のうちは介護施設に営業に行っても介護美容の認知度が低く、本題まで辿りつけないこともありました。それでも機会があればいつでも話ができるよう営業資料を常に持ち歩き、たくさんの施設へ営業に行きました。営業だけではなく、知り合いに「こういう仕事を始めます」と言って回ったところ、友人のお母さまがお世話になっていたケアマネジャーさんを紹介していただけたのです。するとそのケアマネジャーさんから「美容が好きだけど、施設に入居していて日中は寝たきりのご利用者さまがいる」と言っていただけて、ご利用に結びつきました。
“ケアビューティー通信”できっかけづくり。
介護施設の中でひとりでもご利用いただけると、他の入居者の方も興味を持ってくださり利用が広がっていきました。また、介護施設に営業に行く際は「チラシばかりだと読む気がしないだろうな」と思い、“ケアビューティー通信”という読みものを作成したりInstagramで活動内容を見ていただけるようにしました。介護美容を利用した方の反応などを書いて、興味を持っていただけるように工夫したのです。すると男女問わず、特に若い世代の介護職の方々が興味を持ってくださるようになり「一回やってみようかな」と声をかけていただけるようになりました。そこから横のつながりで他の施設を紹介していただけることもあり、少しずつ契約施設が増えていきました。施設の種類は、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームが多いですね。
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Q
いつ頃から軌道に乗ったと感じましたか?
-
A
最近やっと利益が出せるようになってきました。
最初は月の売上が数千円程度。
独立してから3カ月ほどは月の売上が数千円程度でした。介護美容というものが浸透していないので仕方がないと思いつつ、不安になったこともありました。介護施設の契約が4~5件くらいに増えた時に「この調子なら続けられるかも」と思えるようになりましたね。一度でもご利用いただけた施設の反応がすごく良かったので「絶対にリピートしてもらえる」という自信がありました。営業では話を聞いていただけないところもありますが、その自信があるから頑張れている気がします。最近になって、やっと利益が出せるようになってきたと感じています。
ニーズに合わせてさまざまなサービスを展開。
最近は「2時間で15名施術してほしい」といった依頼をいただくこともあり、ひとりでは対応が難しいので介護美容の学校の元クラスメイトに業務委託で手伝いをお願いしています。逆に私が手伝いに行くこともありますね。介護施設の方から「こんなメニューもやってほしい」と言われたら、その都度勉強しながら少しずつメニューを増やしてきました。巻き爪や肥厚爪でお困りの方も多いので、しっかり勉強してメニューに取り入れたことも。また、ホスピスの入居者の方とお話しした際に「日中は大丈夫だけれど、夜寝る前にすごく心細い気持ちになる。誰かに横にいてもらって、話を聞いてほしい」というお気持ちを聞けたことがありました。そこで、19:00~20:00限定のサービスを始めることにしたのです。アロマを焚いてフットケアをしたり、ずっと横でお話を聞いたりと、時間内でご希望いただいたことを行っています。また、最近はカルチャースクールで講師の枠をいただき、介護予防のための美容・整容講座を担当しています。受講者の方からネイル・メイク・撮影の依頼をいただくことも増えてきました。
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Q
今後の目標は?
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A
いくつになっても続けられる“女性の楽しみ”を伝えていきたい。
介護美容に取り組むことで、自分の未来にも希望が持てます。
売上はまだまだ伸ばしていけると思うので、引き続き頑張っていきたいと思っています。今後は介護美容の認知度をもっと上げていって「福岡は高齢になっても住みやすい街」だと言われることが夢ですね。高齢になって外出が困難になっても美容が楽しめるし、自分で選んで決められる自由がある。そういう世界が実現できると、自分自身の未来にも希望が持てますよね。自分の強みや経験値を活かして、もっとたくさんの方に介護美容の魅力を伝えていきたいと考えています。
佐藤さんからひとこと
やりたいことは、まずは動いて実際に始めてみることが大切だと感じています。私自身いざスタートを切って動いてみたら、いろんな方が助けてくださったり、アドバイスをいただけたり、応援してくださったりするようになりました。大変ですがすごく楽しいですよ。私自身、営業の際は「契約を取りたい」と肩に力を入れて行くのではなく「私はこういうことがやりたいと思っているのですが、何かお力になれそうなことはありませんか?」という風に、“お役に立ちたい”という想いを伝えながら施設の方の話を伺うようにしていました。そういうやり方で契約をいただけることも多かったですし、そこでつながった方とは今も良い関係性を築けています。
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