女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.467名中3名がママなのに業績UP!「動画勉強会」や
「ママだけ営業日」など、その独自の工夫とは?
ヘアリゾート アジア グランデ
さいたま市南区
アジアンリゾートの雰囲気あふれる癒やしの空間をコンセプトに、さいたま市内に3店舗を展開する「ヘアリゾート アジア」。中でもいちばん新しい「グランデ」は便利な立地と、スタッフの細やかなホスピタリティで多くのファンを獲得しているサロンです。このお店では何と、スタッフ7人中3人が子育て中のママ。小所帯ながらお互いにサポートしあい、全員が生き生きと働ける秘訣はどこにあるのでしょうか。「美容業界では女性こそが輝いてほしい」という代表の川島亨夫さんに、お話を伺いました。
1取り組み
育児中の働き方は時短などでフレキシブルに対応。
スタッフが互いに助け合う風土作りも欠かさない。
どんな取り組み?
女性スタッフが出産・子育てをしている間の働き方は、社員のまま週休2日&時短勤務に移行したり、変則的なパートタイム勤務とするなど、一人ひとりの事情に合わせてフレキシブルに対応する。子どもの成長に応じて本人の希望により、契約形態を変えていくこともできる。そのことによって現在、キャリア10年を超える3人のママスタッフが週休2日の短時間正社員として勤務。うちひとりは、一度美容師をやめてから復帰し、さらに出産をした女性だ。
メリットは?
それぞれの事情に合わせた個別の対応によって、出産したり一度仕事を離れた女性でも、意欲さえあればキャリアを継続することができる。サロン側にとっても、技術と経験のあるスタイリストを確保できることはメリットだ。
ママたちが仕事を続けるためには、スタッフ全員のサポートが不可欠。「助け合いは将来自分に必ず返ってくる」と、若手には折に触れて話すと共に、ママスタッフが帰宅するまでにサロンの掃除を済ませるなど、ほかのスタッフの仕事量に対しても配慮している。「彼女たちベテランスタッフの頑張りが、これから美容業界に入る新人のロールモデルになって欲しい。そんな思いもあります」と川島さんは言う。
2取り組み
会議に出られないママたちへ動画で内容を共有。
効率アップのためにITも積極的に活用。
どんな取り組み?
サロンでは、毎週土曜日の夜に技術の勉強会や会議を開催するが、週休2日のママスタッフは参加を免除されている。その代わり、その様子を動画に撮り、サロン専用のアカウントにアップ。ママスタッフがいつでも視聴できるようにした。
メリットは?
子育てで忙しいママにとって、手が空いた時間に自宅で情報にアクセスできることはとてもありがたいこと。サロンの課題を全員で共有できたり、技術レベルの向上にも繋がる。このように場所や時間の縛りがなくなることは、「ママスタッフに限らず全員にとって大きなメリットがある」と川島さん。「IT業界の講習会でアイデアを得て始めましたが、仕事の効率化に役立っています。これからは美容業界も、他業種にどんどん学ぶことが必要だと思います」
3取り組み
毎週火曜日は、ママスタッフだけで時短営業。
柔軟なサロンの運営で売り上げ・収入UP。
どんな取り組み?
系列サロンのほかの2店舗は、毎週火曜日を定休日としているが、現在「グランデ」だけは火曜日もオープン。ママスタッフ3人が出勤して、朝10:00〜17:00までの短時間営業をしている。産休に入ったママがいた時期は一時中断していたが、最近になってまた営業を再開した。
メリットは?
土日が休みのママにとって、全店舗が火曜定休になると、勤務日数が少なくなってしまうデメリットがあった。一方、火曜も通常営業にしてしまうと、ほかのスタッフ達に影響が出てしまう。双方にとってベストな取り組みとして始めたのが、毎週火曜日のママだけの「時短営業」だ。火曜日に稼働するのを時短勤務のママに限定すれば、週に最低5日間は働いて収入を安定させたいママスタッフの要望に応えられ、同時にサロンの売り上げにも貢献できる。
「フルタイム社員は、ママが火曜日にお店を開けているので安心して休める。ママにとっては、土日を休む分、火曜日に頑張る。そうした相互意識が生まれるのも、良い点だと考えています」と川島さん。
4取り組み
パートナーと特別な時間を持ってもらうため、
既婚者には「結婚記念月手当」を支給。
どんな取り組み?
サロンを創業した当初から採用している制度。既婚者のスタッフには男女を問わず、結婚記念日の前に「結婚記念手当」として商品券やレストランチケットを支給している。金額は、勤続年などによって決定。
メリットは?
家庭は、男性と女性の両方で一緒に作り上げていくもの。特に子育ては、双方の協力なしでは成り立たない。そこで「結婚記念日にはぜひこのチケットを使って、ご夫婦で食事をして欲しい」と川島さん。日常を離れた特別な時間のなかで、互いに感謝の気持ちを伝え合うことで、また仕事への意欲も新たになると考えているからだ。
代表インタビュー
- Q. 女性支援の取り組みを進めたきっかけは何ですか?
-
A. 長く勤めているスタッフに子どもが生まれたのがきっかけです。
自分の店をオープンして年月がたつにつれ、長く勤めているスタッフが順番に結婚し、親になっていったのがきっかけ。どうすればこれからもサロンで働き続けてもらえるかを考えたとき、彼らが働きやすい環境を整えていくのは、ごく自然な流れでした。自分自身が育児の大変さを知っていたのも理由のひとつですね。
でもそれ以上に、美容業界はやはり女性が主役です。女性を大切にすれば、必ずいい働きをしてくれますし、ひいてはそれが業界をもっと盛り上げてくれる。特にママスタッフは頑張り屋なので、若い子に良い影響を与えてくれます。経営者にとっては覚悟が必要ですが、女性が働きやすいサロン作りは、やるだけの価値があると思っています。
- Q. 川島さんがこれから取り組みたいことは何ですか?
-
A. 「サロンで働くのは素敵なこと」と言われる環境を作りたい。
女性のスタイリストが産休を取ってブランクができると、ついていたお客さまが離れてしまうリスクがあります。これまでサロンとしてしっかりとした引き継ぎができていなかったので、継続して来ていただける仕組みを作ることが課題です。また、どのスタイリストにも良い環境で長く働いてもらいたい半面、新人は常に採用したい。将来的には希望するスタッフにはのれん分けをし、グループで仕事をしていきたいですね。そのためには、カットの技術をゴールとするのではなく、「人としての魅力」を育てるサロンでなければなりません。
美容業界全体に目を向ければ、時代遅れの長時間労働や深夜の練習など、変えなければいけない「常識」がまだたくさんあります。「サロンは大変」と言われるのではなく「サロンで働くのは素敵」と言われたい。そのためにも変化を恐れず、業界ぐるみで進化していかなければと思っています。
Salon Data
ヘアリゾート アジア グランデ
- アクセス
- JR武蔵浦和駅から徒歩4分
- 創業年
- 2004年
- 店舗数
- 3店舗
- 設備
- セット面8席
- スタッフ数
- 7名(うちスタイリスト6名、アシスタント1名)※グランデ