｜第３章｜「癒し」の次に求められること

野嶋　そんな太陽と海を目前にした素敵な空間なのですが、このようなプライベートサロンの可能性についても伺いたいのですが。

KEIKO　私自身がとてもわがままな客なんですね。自分が施術しているときに、他の人の声や気配を感じたくないんです。このサロンは、お客さまの別荘地にセラピストがやってきているというようなイメージなんです。ですから、お客さまには施術中は自分の家のように感じてほしいと思っています。

野嶋　一日何組のお客さまをとるのですか？

KEIKO　マックス3人です。ちょっとゆったりしていただくには、午前中1人、午後1人がベストですね。確かに空間や時間の使い方は贅沢だと思いますが、プライベートサロンとしてやっていくからには、大手のサロンではできないことをしていかないと差別化できないと思いまして。大手のサロンさんは駅に近くて便利だし、予約もとりやすい反面、家賃や人件費はかかるわけです。そこにかかる経費を、こういうプライベートサロンだからこそ別の部分にまわしていこうと思っています。近さや便利さにかわる贅沢さですね。

野嶋　確かにこの場所も、駅からある程度距離がありますし、わざわざ来ようと思わない限り訪れる場所ではないですよね。

KEIKO　そうなんです。だからスパだけではもったいないですから、帰りに寄り道していただけるような美味しいお店や素敵な散歩道を紹介したりしています。ここは葉山も鎌倉も徒歩圏内ですし、いろんなお店がどんどんできているので、歩いていても飽きないんですよね。だから施術もするしガイドもする（笑）。このサロンでの施術を「湘南スパジャーニー」と呼んでいるのも、施術だけではなくその行き帰りも楽しんでいただきたいという意味をこめています。忙しい東京の喧噪から離れて、湘南の空気や生活を楽しんで元気になって帰っていただきたいな、と。このあたりって、冬でもビーサンを履いている人が多いんですよ。そんな生活もあるんだなあと知ってほしい（笑）。

野嶋　次に動き出すためのエネルギーをチャージできる場所という感じですね。

KEIKO　まさに、そうです。私はスパやエステにおける「癒し」の時代は終わったと思っているんですね。これからは「癒し」の次を考えていかないと。

野嶋　癒しの次、と言うと？

KEIKO　やはり、ただ癒やされるだけではなく、しっかり効果が出ないといけないと思っています。その効果というのは、見た目が美しくなるということはもちろんですし、それだけではなく、お客さまの体力と気力を引き上げてさしあげる、その場だけ美しくなるのではなく根本解決をしてさしあげるということが重要だと思っています。

　私、このサロンに来てくださったお客さま、皆さんの「運気」があがってくれればいいなと思いながら施術しているんですよ（笑）。それは、私が「体が変われば人生が変わる」と思っているからなんです。やはり女性にとっては、美と健康がセルフコンフィデンスなんですよね。美しく健康的であれば、前向きになれるし、生き生きとしてくる。年収があがることよりも、美しくて若々しいことが女性にとっては、ポジティブになれる要因なんです。私たちの仕事は、その部分を後押ししてさしあげることができる素敵な仕事だと思っています。

野嶋　効果は1回で出すけれど、お客さまの先々を考えているということなんですね。

KEIKO　そうです。内面の美しさをもっと引き出してさしあげたいと考えています。日本の女性のビューティって、ミクロに走りやすいんですよね。このシワが、とか、ほくろが、とか。パーツ的なミクロビューティだなと感じます。でもミクロのビューティって、接近戦にしか効かないんですよ（笑）。日本にももっと、100メートル先から見ても美しいオーラを発信するような、存在感のある女性が増えるといいなと思います。そのためにも、見た目の美しさはもちろんのこと、内面から発するその人の持ち味や魅力を引き出してあげるような施術がしたいなと考えています。

野嶋　日本の女性も、日本の女性の施術者も、もっともっとグローバルに活躍していけるヒントが聞けたように思います。今日はとても素敵なお話をありがとうございました。

（写真／梅沢香織　文／増田ゆみ）