その他
2012.08.31
今回は番外編として、ハリウッド大学院大学・ハリウッドビューティ専門学校・ビューティビジネス学会にご協力頂き、ハーバード・ビジネススクール教授ジェフリー・ジョーンズ氏にお話を伺いました。 著書『ビューティビジネス~「美」のイメージが市場をつくる~』では、世界で3300億米ドルマーケットに成長したビューティ産業の歴史をひも解いたジョーンズ氏。 今回は日本にフォーカスし、日本のビューティビジネスを取り巻く今とこれからについてお聞きしました。
PROFILE
ジェフリーG. ジョーンズ(Geoffrey G. Jones)
ハーバード大学経営大学院(ビジネススクール)教授。英国ケンブリッジ大学より学士、修士、学術博士を取得。コペンハーゲン・ビジネススクール名誉博士(経済学・経営学)、ハリウッド大学院大学名誉教授。レディング大学元教授。ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス、ケンブリッジ大学などで教鞭をとり、学習院大学、エラスムス大学、アンデス大学などの客員教授を歴任。欧州経営史学会元会長、米国経営史会議元会長、国際ビジネス学会フェロー。『ビューティビジネス』を初め、多数の著書が邦訳出版されている。
|第1章|世界でも有数の美容大国日本
著書『ビューティビジネス』でも日本のビューティ産業の躍進について言及されていますが、今日のような900億米ドルマーケットにまで拡大したのはなぜだと思いますか?
また、日本の消費行動や消費意識についてどう思われますか?
In your latest book “Beauty Imagined”, the Japanese beauty industry is also mentioned as one of the rapidly growing market. Why do you think it has been expanding up to as much as USD 90 billion?
And what would you think from the aspect of the Japanese consumer behavior?
ジョーンズ氏 大きく分けて2つの理由があると思います。
1つ目は一般的に、所得増加と共に、化粧品などぜいたく品の消費が増えるため。これは日本だけではなく、中国やブラジルなどでも同じ傾向が見られます。
2つ目は、日本人1人当たりのビューティ産業での消費額が高いこと。米国の1人当たり約100米ドルに比べ、日本人は1人あたり約340米ドルに上るといわれています。
また、美容に関する意識は各国で異なり、例えばフランスでは香水への投資額が高いですが、日本ではスキンケア分野への投資が高いことが特徴的だと思います。
There are two levels.
First one is, generally, as people get wealthier, they spend more money on beauty. This is the general phenomena that you can find even in China, Brazil etc, obviously.
Next, Japan has one of the highest spending per capita on beauty, maybe 340 dollars per capita. This is driven by the beauty practices in particular for possession with beautiful skins. Japanese are spending money on skincare products extremely high.
美容商品だけでなく、日本の美容サロン産業についてはどのように見ていらっしゃいますか?
Could you tell us your thoughts on beauty product consumption and beauty salon industry in Japan?
ジョーンズ氏 美容サロン産業は3つの大きな変化に直面していると思います。
まずは、人口の変化。日本の人口は2005年より減少し、高齢化も進んでいます。一方、GDPの伸び率は0.2%と、米国の1%やブラジルの14%などと比較しても非常に低く、市場全体が停滞状態となっています。こうした状態を見据え、サロン産業は高齢化に対応していく必要があります。特に1940年代生まれの消費者はお金を持っており、アンチエイジングにも関心が高い。こうした人たちに対して白髪染めといった製品やサービスを供給する余地はまだまだあるし、この分野はさらに伸びていくのではないでしょうか。
2つ目の変化は、消費者の二極化傾向が進んでいるということです。20年にわたる市場停滞の末、高額でも高い品質を求める人たちと、低価格を追求する人たちとに二分化され、その中間に当たる層が弱いように感じています。
3つ目の興味深い特徴は、流通チャネルの変化です。日本の伝統的な流通チャネルに変化が生じてきて、今ではインターネットやドラッグストアなども美容製品を販売しています。また、インターネットの登場により10年前と比べて、顧客が製品について情報をはるかに多く得ることができるようになりました。顧客もさらなる情報を求めており、これに答えることも、産業を変化させることにつながっているのでしょう。こうした変化が合わさり、美容業界は変化を迫られています。
There are three huge changes.
First one, Japan’s population has started to shrink and age since 2005. That means basically stagnation. Last year’s growth is just 0.2%, while that of US and Brazil is probably 1% and 14%, respectively.
The second trend is polarization. 20 years of stagnation split the people into two groups; people either want high quality or cheap products. That means the middle market demand is weak.
Third interesting thing is distribution channels. Basically the traditional channels are fragmenting. Obviously online retailing channel is emerging. And also, garden centers and DIY shops are handling beauty products. Another thing is the fact that consumers are more informed online recently. With these changes together, the industry is forced to change.
流通チャネルの変化は、日本の市場に対してプラスに働いたのでしょうか?
Does the channel change have any positive impact on the industry?
ジョーンズ氏 プラスに働いたかどうかは、誰が対象かによって変わってきます。チャネルの変化により、選択肢が増え競争が激化しました。
顧客にとっては、以前より情報も沢山手に入るし、ドラッグストアやサロン、オンラインなど様々なチャネルで買い物ができるため、交渉力上昇につながっています。
一方、企業にとっては、顧客をコントロールできなくなっていることを意味し、これまで以上に難しい状態に直面しているといもいえるでしょう。
米国や欧州など市場の伸びが緩やかな地域では、オンラインの技術が発達し、日本と同じことが起こっています。
It depends on positive to whom. If you are in a channel, it is more difficult due to more degree of competition. But if you are a consumer, you have more choices. In US and Europe, consumers are getting more power, with more information and channels.