先輩女性インタビュー
サロンで働く先輩女性たち
長く活躍しているさまざまな女性スタッフに、どんなキャリアを歩んできたのかインタビューしていきます。
自分なりの「なりたい私」を見つけてください!
vol.83
3回の出産と離婚を乗り越えたママ美容師。
限られた時間で上を目指す原動力とは?
古い歴史を持つ町、春日井市の勝川にたたずむおしゃれなサロン「agree for hair」。ママスタイリスト3人が活躍するお店のリーダー格として頼りにされているのが、須田ともみさんです。3度の出産に離婚・再婚という人生の岐路を乗り越えて17年のキャリアを積み、まだ子育て真っ最中。トップスタイリストだった頃のようには働けず「葛藤は続いていますね」と笑顔を見せます。それでも明るく前を向く須田さんが、美容の仕事にかけてきた思いと、これからについて聞きました。
Staff Data
須田ともみさん 39歳
スタイリスト。
「agree for hair」(愛知県春日井市)勤務。
スタイリスト歴17年。
9歳の女の子、7歳の女の子、1歳の男の子の3児のママ。
9:00〜16:00勤務。月曜日(定休日)と日祝がお休み。
須田さんのLife History
★…ターニングポイント
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19歳
美容専門学校時代に、現在の「agree for hair」の前身のフランチャイズ店で職場体験。自分のやりたい個性的なスタイルにも挑戦できそうだと考え、就職を決めた。
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20歳
アシスタント時代は想像以上に仕事がハードで、何度も「辞めたい」と思い悩む。しかし、フォローしてくれた先輩がいたお陰で、何とか頑張り続けることができた。
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22歳
夏に念願のスタイリストデビュー。3年目ごろからお客さまの信頼を得ている実感が得られるようになり、美容の仕事がとても楽しくなってきた。
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26歳
サロンのリーダーに抜擢され、スタイリストとしても脂が乗ってきた頃。後輩の指導にも力を入れた。
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30歳
結婚。最初はフルタイムで働いていたが、第一子を妊娠したときに体調が悪く、お客さまが終わり次第の退勤という形に。妊娠9カ月ごろまで仕事を続け、長女を出産。
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31歳
★6カ月間の産休後、長女の世話を義理の母に任せ、9:00〜16:00のパートで復帰。練習や会議に参加できなくなったが、自分のできる範囲で頑張ろうと切り替える。
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32歳
第二子を妊娠。長女を保育園に入園させた後に、次女を出産。次女が保育園に入園できるまで、再び義理の母に世話を任せて職場に復帰。
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36歳
離婚し、2人の女の子を引き取ってシングルマザーに。急なお迎えのときはサロンの事務所に連れてくるなど、職場の協力を得ながら大変な時期を乗り切った。
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37歳
★同僚と再婚。サロンの定休日が増えたり、子どもの世話を代わってもらえる日ができたことで、少しずつ練習に時間が取れるようになってきた。
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39歳~
結婚の翌年に長男を出産し、保育園に入園させて3度目の復帰。3人の子育てをしながら、パートスタイリストとして奮闘中。
須田さんへのインタビュー
Q. 美容師になりたての頃は、何度も仕事を辞めたいと思ったそうですね?
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A. 先輩が愚痴をきちんと聞いてくれたお陰で「がんばろう」と踏みとどまれました。
美容師は中学生からの夢。このサロンも自分に最適だと思って就職しました。でもアシスタント業務は想像よりずっと辛かった。練習で朝早くて夜は遅く、手は荒れる、まともに食事をする時間もない。最初の1,2カ月は「いつ辞めよう」とずっと思っていました(笑)。幸いだったのは話を聞いてくれる辛抱強い先輩がいたこと。今思えば「自分への言い訳」だらけですが、愚痴をひとつずつ丁寧に拾って励ましてくれた。だから一緒にがんばれたんですね。
その後自分も後輩を持ったり、スタイリストになって仕事を任されるようになってからは、仕事ががぜん楽しくなりました。昇格して2年目くらいには、お客さまが抱くイメージを少しずつ汲むことができるようになり、「須田さんに分かってもらえて良かった!」という反応を示してもらえることが、何よりのやりがいになりました。
Q. シングルマザー時代を経て3人の子育て。仕事との両立は大変ではありませんでしたか?
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A. 周り中の人たちの支えがなければ、仕事を続けるのは本当に無理でした。
上の2人が小さな頃は、前夫の実家で義母がお世話を担ってくれたので助かっていました。でもやはり病院は私が連れて行かないといけません。小さな子をふたり預けていると、ほぼ毎週保育園から呼び出しがかかるような状態。予約をお断りすることが重なれば、私の担当を離れるお客さまが出るのは避けられません。そんな中、事情をご存じで「いいから早く帰りなさい!」と言ってくれるお客さまもいて、とてもありがたかったです。
2人の子どもを抱えて離婚したときは大変でした。職場近くに部屋を借り、保育園から呼び出しがあれば迎えに行って、終わるまで事務所で寝かせたり。手を離せないときは、スタッフにお願いして迎えに行ってもらったこともあります。それこそサロンぐるみで子育てを手伝ってくれた時期でした。みんなが私の状況を理解して快くサポートしてくれたので、感謝の気持ちは常に忘れません。
再婚して、昨年長男が生まれたので、退勤後は保育園と学童をはしごでお迎えする日々です。子育ては大変なことの方が多いですが、面白いです。きょうだいでも性格は3人3様。褒め方も叱り方も使い分けが必要で、そんなことも楽しんでいます。長女は今「お世話ブーム」で、ご飯を作ったり、弟をお風呂に入れたりしてくれてとても助かります。
Q. 育児で仕事をペースダウンしなければならない状況をどう乗り越えましたか?
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A. 今できることを全力でやり、ママ美容師なりの強みを身につけようと思います。
正直、今も葛藤は継続中です。正社員の頃はバリバリお客さまを担当して、後輩の指導もしていました。でも子どもが生まれたら会議や練習も出られず、不安になった時期もあります。でも徐々に「私はできることをする、後は仲間に任せよう」と割り切れるようになってきました。
私がサロンのママ第1号でしたが、今は後輩も出産して3人になり、悩みを分かち合える仲間が増えました。近年はオーナーが私たちの希望を聞いて、定休日にパートが参加できる練習や会議の時間を取ってくれるようになりました。また、夫が先に仕事を上がって子どもの面倒を見て、代わりに私が夜の練習に参加することもあります。お互いの歩み寄りで少しずつ環境が整い、少し不安が解消されてきました。結局、ひとりでは何もできません。大変でも続けて来られたのは、職場の協力とお客さまの喜ぶ顔があってこそです。
最近、着付けも習い始めました。サロンでの仕事の幅を広げられると思ったんです。子育てが終わるまでパート務めは続きますが、母親だからこそお客さまを理解できる点を強みにして、美容師を続けていきたいですね。
若手女性スタッフへ、メッセージをお願いします!
美容師の仕事は楽ではないですが、ひとりであれば「意思の力」で壁を乗り越えられることもあると思います。でも子どもを産んでからの私は、周囲の理解と協力なしではやって来られなかったと実感しています。そのために「こうしたい」「こうなるのは嫌」といつも希望を言葉にしてきました。たとえ「ワガママかな?」と思っても、必要なら口に出して人に打ち明けてみましょう。助けてもらって楽になれば、自分も一緒にがんばればいいし、後から恩返しもできます。ひとりで抱え込んで、結果仕事を続けられなくなることは、自分だけでなく周囲の人もいちばん望んでいないはず。がんばってください!
Salon Data
agree for hair【アグリー フォー ヘアー】
- アクセス
- JR中央本線勝川駅から徒歩5分
- 創業年
- 2011年
- 店舗数
- 1店舗
- 設備
- セット面12席
- スタッフ数
- 8名(スタイリスト6名、アシスタント2名)