先輩女性インタビュー
サロンで働く先輩女性たち
長く活躍しているさまざまな女性スタッフに、どんなキャリアを歩んできたのかインタビューしていきます。
自分なりの「なりたい私」を見つけてください!
vol.91
学校一の不器用が頑張り屋のママ美容師に。
出産を通じて得た気づきと成長とは?
吉祥寺で40年間地元の人々に愛されながら、最先端のモードを提案してきた美容室「ZENKO」。賑やかな街を見下ろす本店でイキイキと働く福村寛子さんは、やさしい笑顔が印象的なママ美容師です。4年かかっても決してあきらめずに、スタイリストデビューを果たした新人時代。そして今、子育てをしながら日々ベストを尽くすのも、誰にも負けない美容の仕事への愛情があるからこそです。そんな彼女の成長について取材しました。
Staff Data
福村寛子さん 40歳
スタイリスト。
ZENKO吉祥寺店(東京都武蔵野市)勤務。
スタイリスト歴16年。既婚。8歳の女の子、6歳の男の子のママ。
日曜日を含む週休2日、10:00〜16:00の時短勤務。
福村さんのLife History
★…ターニングポイント
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18歳
小学生の頃から憧れていた美容師を目指して青森県から上京。都内の美容専門学校へ入学。
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19歳
美容学校の教師に勧められて、美容室「ZENKO」の入社試験を受験。難関といわれていたが、見事採用に。「ZENKO国分寺店」に配属されキャリアの第一歩を踏み出す。
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24歳
同期の中では一番最後にスタイリストに昇格。同時に現在の「ZENKO吉祥寺店」に異動になった。
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28歳
先輩幹部の退職に伴い、吉祥寺店の主任に抜てきされる。
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30歳
結婚。指名客が増え、美容師として脂が乗っていた時期で、結婚後も仕事のペースを落とさず働き続けた。
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31歳
★第一子を妊娠。出産後に復帰した先輩が少なく不安だったが、「会社に残りたい」という希望を周囲が快く受け入れてくれた。産休に入って職場を離れた時期、改めて美容師という仕事の素晴らしさに気づき、「働けることは幸せだ」と感じた。
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32歳
長女を出産。1歳になったときに保育園に預けて、16:00までの時短勤務で職場復帰。同時に主任の役職からは離れた。
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34歳
長男を出産。長女のときと同じ1年2カ月の産休・育休を取り、二子を保育園に預けて職場に復帰。
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39歳~
会社員の夫が単身赴任となり、親子3人の暮らしに。夫の両親や妹のサポートも受けながら、仕事と育児に奮闘中。
福村さんへのインタビュー
Q. アシスタント時代にはどんなご苦労がありましたか?
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A. 手先が器用ではなく、技術の習得に人一倍時間がかかりました。
私は、専門学校で「これ以上不器用な人はいない」と言われるような生徒でした。「ZENKO」の入社試験を受けたのも「ここなら君でも立派な美容師になれる」と、先生に勧められたからです。競争率が高くて母校からは7名中3名しか採用されなかったのですが、何とそのうちのひとりが私。自分でも驚きましたが、先生がいちばん驚いていました(笑)。
アシスタント時代も技術の上達が遅く、1年目は何度もくじけそうになりました。当時はデビューまでに27項目の課題がありましたが、常に進捗状況はビリに近かったんです。「後輩にだけは抜かれたくない」と焦っていた半面、自分に自信が持てず「まだアシスタントでいたい」という矛盾した気持ちもありました。結局、同期でいちばん早かった人から2年近く遅れて、最後にデビュー。その間先輩スタッフは、仕事が満足にできない私を本当に辛抱強く支えてくれました。実際にスタイリストになってみると、憧れの先輩と同じステージに立てたことがすごく嬉しかったです。
Q. デビューしてからは、どうやって自分に自信を付けていきましたか?
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A. お客さまがリピートしてくれることが、自信につながっていきました。
デビューしたての頃、お客さまからクレームを受けたことがありました。そんな自分が不甲斐なく、「やっぱり美容師に向いていないんだ」と辞めたくなったことも。でも、それ以上にリピートしてくださるお客さまが少しずつ増えていくのがうれしかった。お客さまが喜ぶ姿を糧にして壁を乗り越えることができたんだと思います。デビューして数年経つと、多い日は1日10人くらいを担当していました。早番で出勤して、閉店まで残業するのも全然平気でした。
28歳で主任に抜てきされたときは、サロンワークに加えて店長のサポートや後輩の指導も任されるようになり、店舗全体の売上にも責任を持つことになりました。予想以上に大変でしたが、やりがいはありましたね。特に気を配ったのは、後輩が美容の仕事を嫌いにならないよう、精神的にもケアしてあげること。私が新人の時に先輩に励ましてもらったことが常に頭にありました。
Q. 他にママスタッフがいない店舗での妊娠・出産に不安はありましたか?
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A. 店長に「続けるよな?」と言われて安堵。産休も自分にはプラスになりました。
妊娠が分かったときは「子どもができたら閉店まで働けない」「後輩の教育もできない」と、マイナスばかりが頭に浮かびました。当時は出産した先輩が他の店にひとりいるだけで、不安だったんです。でも店長に報告すると「続けるよな?」と当然のように言われ「ああ、続けていいんだ!」と気持ちが急に楽になりました。その後、先生(佐藤全弘代表)にも「復帰してまた働きたい」とお願いし、快く受け入れてもらえました。
産休に入ると、仕事から離れたからこそ気付くことがいろいろありました。たとえば地元の美容室に出かけて行って自分のサロンの良さを再確認したり。また、働く美容師さんの姿がキラキラ輝いて見えて「美容師ってこんなに格好いいんだ」と感動もしました。そして、私を快く送り出してくれたお客さまを大切に思う気持ちも強くなり、戻れる仕事がある幸せを噛みしめました。ネガティブに考えられがちなブランクですが、私にとっては働き続けるための力になった気がします。
Q. ママになって、仕事への取り組み方や思いは変わりましたか?
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A. 後輩の失敗を叱らず、じっくり言い聞かせる忍耐力がつきました。
子どもの預け先に延長保育がなかったので、復帰後は16:00までの時短勤務になりました。ミーティングや練習に参加ができず、サロンの運営に関われないので、私よりも他のスタッフの負担が大変だと思います。年下の幹部は、先輩の私が下にいて気を使うかもしれませんが、事情を受け止めてサポートしてくれるので感謝しています。貢献できることが少ない分、やれることは全力でやろうと決めました。また、サロンに立つときは「愚痴らない」「疲れた顔を見せない」。この2つだけは必ず守ろうと思っています。
以前は、後輩を叱るときにちょっと感情的になることもありました。でも母親になってからは、一つひとつ諭すことができるようになりました。子育てで忍耐力が鍛えられたんでしょうね。子どもは大人の思い通りにはなりませんから。
今の希望は、子どもの成長に合わせて少しずつでも勤務時間を増やすこと。その先にどんな働き方ができるかはまだ分かりません。でも、うちの先生が70歳でサロンワークをしているので、私もその歳になるまで頑張りたいという夢はあります。だとすれば、まだ30年働けますね!
若手女性スタッフへ、メッセージをお願いします!
女性美容師は、同期の男性よりも早く一人前になれるよう頑張ってほしいと思います。スタイリストになりたてのときに出産してキャリアを中断してしまうと、お客さまが戻ってきにくいうえ、育児と練習の両立が本当に大変。私の場合は、出産前にある程度の数のお客さまを獲得し、主任も経験していましたから、復帰後もサロンの中で自分のポジションが作りやすかったと思うんです。将来出産して職場に戻りたいなら、できるだけ早く実績を積んで周囲の信頼を勝ち取るようにしましょう。デビューが遅かった私への自戒も込めてアドバイスしたいと思います。頑張ってください!
Salon Data
ZENKO吉祥寺店【ゼンコー キチジョウジテン】
- アクセス
- JR吉祥寺駅から徒歩1分
- 創業年
- 1976年
- 店舗数
- 12店舗
- 設備
- セット面9席
- スタッフ数
- 11名(スタイリスト6名、アシスタント5名)