第2章ヘアケア特化サロンに込めた想い
「誰もやっていないことだからこそ、
ヘアケアに特化する道を選びました。」
フリーランスを2年ほど続けたのち、「Lily」をオープンされたんですよね。
きっかけは、いま一緒にLilyで働いている寺村から「一緒に働きたい」と言ってもらえたこと。寺村とは2つ目のサロンで一緒に働いていたのですが、辞めてから久しぶりに話したときに「一緒にできたら楽しいよね」と言ってもらったんです。僕はひとりでやっているのも楽しかったのですが、ひとりではできないこともあるなと感じていて。それで、そう言ってくれるならやってみようと決めました。
「Lily」は業務委託形式のサロン。なぜそうしたのですか。
僕もそうでしたけど、美容師って儲からないと嘆きつつも、お金に無頓着な人が多いんですよ。社会保険の制度もよく知らないままだったり、経費にいくらかかるのかも把握していない。でも働く以上、お金に対する知識を得ておくことは大切です。そうした金銭面を把握するからこそ、自分の立ち位置がわかるということもあります。だからおのおのが個人事業主として勉強する場にできたらと思って、この形式をとっています。
スタッフの寺村優太さんは「美髪アドバイザー」として本を出されていたり、野坂信二さんは「くせ毛マイスター」として支持を得ていたりと、みなさん得意分野をもっています。「個性」と「サロンとしてのまとまり」、どちらを重視していますか。
どちらかに重きを置くということはありません。「Lily」はみんなの個性を活かして、それぞれの目標を叶える場だと考えています。強い個性が集まって、さらに束になればもっと強くなることができる。そして、サロンとして掲げている理念にみんなが共感できていれば、個性を大切にしながらもうまくやっていけます。
「Lily」の理念とは「美をもって世界を救う」こと。女性がきれいになって自信をもつことは、社会進出を後押しするでしょう。そして男とは魅力的な女性に喜んでもらえるようにお金を使うもの。ですから女性が美しくなると、結果的に経済も活性化して世界が発展していくと考えています。
そうした理念は昔から?
はっきりと意識したのは「Lily」をオープンする前、バリ島にボランティアで訪れた経験がもとになっています。孤児院の子どもたちをカットしに行ったのですが、現地の人の髪ってとてもくせが強いんですよ。事前にそう聞いたときは「くせ毛カットなら得意だ」なんて、自分なら余裕だと考えていました。ところが実際は予想以上に手ごわく、結局は男の子のカットで精いっぱいだったんです。そのとき、「この女の子たちがくせ毛だからと制限されず、自分がなりたいヘアスタイルになれたら人生が変わるだろうな…」と思ったんです。
柳本さんは「くせ毛・縮毛矯正の匠」として支持を得ていますが、髪質ケアにこだわるようになったのは?
まず僕自身がくせ毛で悩んでいたこと。美容学校に通っていた10代までは金髪、パーマ、縮毛矯正などで髪もすごい傷んでいたので、お客さまの気持ちがよくわかるというのがあります。
また美容師として働きだしてからの経験も影響していますね。ヘアトリートメントを利用されるお客さまの髪は、その場ではきれいになるけれど、期間を空けて来店されるとまたダメージヘアに戻っている。戻っているどころか悪化していることもあるんですよね。こうしたケースを見ていると、「従来の方法は本当に適切なんだろうか?」と疑問がわいてきて。ヘアケアに関するセミナーに行くなど、勉強を重ねてきました。
デザイン性を売りにする美容師も多いなか、「髪質」に着目して特化するのは珍しいですよね。
珍しいからこそ、そこに絞ったというのもあります。カラーやカットを売りにする人はいっぱいいるけれど、「髪をきれいにします」って人は案外少ないんですよ。美容師はカット、パーマから着付けまでオールマイティにできるべきという考え方もありますが、「捨てる勇気」も必要。ほかの人がやっていないことに特化するのもひとつの道です。
それに、どんなに素敵なヘアスタイルやカラーだとしても、素材である髪質が整っていてこそ映えるもの。その点からもヘアケアって大切なんです。