先輩女性インタビュー
サロンで働く先輩女性たち
長く活躍しているさまざまな女性スタッフに、どんなキャリアを歩んできたのかインタビューしていきます。
自分なりの「なりたい私」を見つけてください!
vol.95
夫の死を乗り越え、8年ぶりに復帰。
休眠ママ美容師がサロンに戻れた理由とは?
暮らしやすさでファミリー層に人気のベッドタウン・新浦安。その中心部に位置する「Hands Crew 新浦安店」でパート勤務するスタイリストの久保田孔美子さんは、小学2年生の男の子のママです。妊娠で前のサロンを去ることになり、美容師のキャリアをやむなく中断。さらに夫の死という不幸に見舞われて遠回りをしましたが、昨年春にスタイリストとして8年ぶりに返り咲くことができました。節目節目で支えてくれた人や、ママを支援する今のサロンとの出会いがなければ再出発はできなかったと久保田さん。懸命に歩いてきた美容師人生についてうかがいました。
Staff Data
久保田孔美子さん 43歳
スタイリスト。
「Hands Crew 新浦安店(CEPホールディングス)」勤務(千葉県浦安市)。
火曜日のみ、同じグループの「Mamas 原木中山店」へ(千葉県船橋市)。
スタイリスト歴11年。7歳の男の子のママ。
現在はパートとして平日9:00〜18:00の勤務で、土日祝がお休み。
久保田さんのLife History
★…ターニングポイント
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18歳
友達の髪をアレンジするのが好きだったことから、高校卒業後に美容師を目指そうと決心。実習生として働きながら専門学校に通えるサロンを知人から紹介され、上京して入社する。
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20歳
専門学校を卒業して1年間インターンを務めた後、美容師免許を取得。アシスタントとして本格的に仕事と練習に取り組んだが、同期よりも上達が遅く、テストに合格できずに落ち込むことも。
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21歳
3年間働いて専門学校の学費を払い終えた時、「外の世界も見たい」と考えて都内の別のサロンに転職。
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22歳
転職先ではアシスタントの仕事ばかりだったため、再び元のサロンに頭を下げて戻ることに。配属された新規オープンの店舗では多くのお客さまがつき、スタイリストとして成長することができた。
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31歳
新しい店長と人間関係がうまくいかず退職。1年間アルバイトをしていたが、再び元のサロンから「戻っておいで」と声を掛けられ、前回と違う店舗へ3回目の復帰。
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34歳
妊娠。出産して復帰するつもりだったが、退職が既定路線という会社の雰囲気に抗えず、妊娠6カ月でサロンを去ることに。翌年長男を出産。
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39歳
出産後は専業主婦だったが、長男が幼稚園に入園する直前に夫が事故で帰らぬ人に。「働かなければ」と仕事を探している時、たまたま再会した知人の推薦で生命保険会社に入社することになった。
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42歳
★営業の仕事に疲れ「美容師に戻りたい」と思うように。再び知人に背中を押され、多くのママが働く「CEPホールディングス」に応募。平日のみ勤務のパートとして、再びハサミを握ることに。
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43歳~
長いブランクがあったが、会社やスタッフのサポートで予想より早く技術的な感覚を取り戻すことができた。今は仕事が楽しく「美容師に戻って良かった」と実感する毎日。
久保田さんへのインタビュー
Q. 妊娠が分かり、前のサロンを辞める時はどんな気持ちでしたか?
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A. 紆余曲折がありましたが、私を育ててくれた会社なので残念でした。
高校を卒業して就職したのは、働きながら美容学校に通えるサロンでした。入社3年目に本格的なアシスタント業務と練習が始まるのですが、私は同期でも技術の習得が遅くて苦労しました。年配の先輩が厳しくて、新人の頃は泣きながら練習することもありましたね。途中で他店に移ったりもしましたが、結局そのサロンには足かけ16年お世話になりました。同じ店舗で長くサロンワークを続けることで、指名のお客さまも増え、美容師として自信がついたと思います。
妊娠が分かった時は、出産したら仕事に戻るつもりでした。でも上司は「いつ辞めるの?」と。当時会社では、女性美容師は妊娠したら退職するのが慣例だったんです。自分も育児に専念したい気持ちがゼロではなかったので「仕方がないのかな」と諦めてしまった。でも長く働いたサロンなので、やはり残念な気持ちでしたね。
Q. ご主人を亡くされた時は息子さんもまだ幼く、大変だったのでは?
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A. 「早く働かなければ」「子どもに何と言おう」。このふたつで頭が一杯でした。
当時子どもはまだ4歳で、悲しんでばかりもいられず、生活のために早く仕事を見つけなければなりません。美容師復帰も考えましたが、勤務時間などの条件が厳しくて悩んでいました。そんな時たまたま再会した知人の口利きで、彼女が勤める生命保険会社で営業職として働く話がいつの間にかまとまっていました。驚きましたが、私たちを助けたいと思ってのことですし、会社の健康保険証も欲しかったので、感謝してお世話になることにしました。
子どもには父親の死をどう話すか悩んだ結果、今は内緒にして大きくなったら本当のことを言おうと決めました。でもある日、実家の母に子どもがふと「父ちゃん死んじゃったもん」と言ったというんです。幼いなりに理解していたんですね。心を決めて本当のことを話した後は彼も気持ちの整理がついたらしく、精神的に落ち着きを見せるようになりました。その様子を見て「早く話すべきだった」と深く反省しましたね。
Q. 一度は迷った美容師への復帰を決めたきっかけは?
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A. 「美容師が一番」という思いが強まり、最後は同僚に背中を押されました。
保険の営業を1年以上頑張りましたが、大変でした。ストレスで子どもに当たる自分も嫌になり、「美容の仕事に戻りたい」と強く思うようになりました。実は、今在籍する「CEPホールディングス」の求人はそれより前から気になっていたんです。ママ美容師だけの店舗があるなど、子育てしながら働きやすい環境に惹かれていました。でも、困った時に助けてくれた保険会社に申し訳なくて、踏ん切りがつかずにいました。そのことを同僚に相談すると、彼女が「ちょっと携帯を貸しなさい」といって、さっさと私の名前で応募してしまって(笑)。それでやっと面接を受ける決心がついたんです。
面接では、学童保育のお迎え時間や土日祝休みの希望など、事情を細かく丁寧に聞いてくれました。また当初、私はママ美容師だけのお店を希望していました。すると「そこは希望するほどは稼げないから」と、お迎え前の18:00まで働ける店舗を会社の方から提案してくださいました。そうした対応全部がとてもありがたかった。この会社と出会い、同僚が背中を押してくれなければ、美容師として再スタートするのは難しかったかもしれません。
Q. 再出発した美容の仕事に、今どんなやりがいを感じますか?
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A. お客さまに良い時間を提供し、感謝されること。毎日変化があることも楽しいです。
「Hands Crew」に配属されて2カ月のアシスタント期間があり、その間に技術的な感覚を取り戻すことができました。以前、仕事を1年休んで復帰した時は手が震えたのですが、今回はそれもなくてホッとしました。美容の仕事には1日として同じ日はなく、それこそが醍醐味だと改めて実感しています。仕事が辛いと感じることは一切なくなりましたね。
お客さまにはヘアスタイルだけでなく、空気感や会話も含めてトータルで満足していただけることを心がけています。仕事や家事で忙しく、サロンが自分に戻れる唯一の空間という方もいますから、ぜひ良い時間を過ごしてもらいたいんです。そうして帰り際に「ありがとう」と言われることが何より嬉しいですね。
最近子どもとサロンに行ったら「髪を切る人になるのもいいな」と言い出してびっくり。今、彼の将来の夢はサッカー選手か美容師さんだそうです。親の仕事に興味を持ってくれるのは嬉しいものですね。今は子どもとの時間を大切にして、学童保育に慣れてきたら土曜日も出るなど働き方を変えていきたいと思います。
若手女性スタッフへ、メッセージをお願いします!
新人の頃、同期はお客さまのワインディングをやらせてもらっているのに、私はまだ練習中といった場面が多くてよく凹んでいました。でもそんな時は、あまり思い詰めすぎると先に進めなくなるんです。練習はもちろん大切ですけど、時には「いつかできるよ」と肩の力を抜くことも必要。それが分かる前に「私は向いていない」と言って辞めてしまう後輩を多く見てきましたが、本当にもったいないなあと思います。今は上手くいかないことも、続けていればいつかは解決できるもの。多少の挫折なんて誰にでもあって当たり前。そのくらいの気持ちで構えて、引きずらないことです。頑張ってください!
Salon Data
Hands Crew 【ハンズクルー】新浦安店(CEPホールディングス)
- アクセス
- JR京葉線新浦安駅から徒歩5分
- 創業年
- 1993年
- 店舗数
- 約80店舗 ※ブランド全体
- 設備
- セット面14席
- スタッフ数
- 11名(スタイリスト8名、アシスタント3名)