女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.100復帰の際は1日2時間勤務からOK。
パートママ店長も活躍するエステサロンとは?
ピー・ブリエ
愛知県名古屋市・津島市、三重県四日市市
愛知、三重の東海地区で3店舗を展開し、フェイシャルからボディまでのトータルケアを提供する「ピー・ブリエ」。全スタッフ12名の中で3名のママエステティシャンが活躍しています。店舗当たりスタッフ3〜4名と小規模ながら、今年の「第7回エステティックグランプリ」顧客満足部門で全国1位に輝いた実力派。トップクラスのサービスを提供しながら、ママもイキイキと輝く環境の秘密とは何でしょうか。サロンを運営する「株式会社アヴァンセ」代表取締役社長の小林光子さんに聞きました。
1取り組み
ママの急な休みにも対応できるよう、完全予約制で指名なし。
どんな取り組み?
スタッフは週休2日のシフト制。お客さまの来店は完全予約制だが、基本的にエステティシャンの指名は受けない。その日のシフトに入っているスタッフが協力し、役割分担をしながら接客をしている。もし、ママスタッフが子どもの病気などで急に仕事を休まなければならない場合は、開店までに必ず店長に電話連絡。他店舗が近くにあるので、店長が応援を依頼できる。こうした事態に備えて普段から3店舗の責任者は連絡を密に取り合い、応援し合う体制ができている。
始めたきっかけとメリットは?
以前はもっと大きな店舗があり、エステティシャンも多かったが、10年ほど前から規模を小さくして生産性を上げる方向へ転換。各店舗3〜4名のスタッフで対応できるよう予約を調整し、お客さま一人ひとりに質の高いサービスを提供していくことを目指した。
少ないスタッフで確実に営業をしていくには、急な欠勤などに備えた店舗間の協力態勢が不可欠だが、3店舗間はいずれも1時間以内で移動できるためヘルプの要請もしやすい。指名制がないことと合わせて、子どもを預けて働くママスタッフにとって精神的な負担が少なく、安心して働くことができる。
2取り組み
産休・育休からの復帰時には1日2〜3時間の「慣らし勤務」もOK。
どんな取り組み?
出産するスタッフは会社と相談のうえ、それぞれの希望に合った期間の産休・育休を取ることができる。職場に復帰する前には、1日2〜3時間の「慣らし勤務」も可能だ。本格復帰する時はフルタイム勤務以外に、1日5時間からの時短勤務や、パートを選ぶこともできる。
また産休・育休期間でも、本人の希望があれば在宅でサロンのPOPや配布物の制作を任せてもらえる。施術だけでなく、そうした在宅での「サポート業務」もスタッフの給与に反映している。
なぜそうした?メリットは?
「ピー・ブリエを運営するアヴァンセでは、“永久雇用・生涯顧客”を掲げています」と、代表取締役社長の小林光子さん。女性の結婚や子育ては社会で守っていくべきものと考えている。加えてエステティシャンを育てるのには時間がかかるため、ある程度キャリアを積んだママスタッフには仕事を続けてほしい。そうした理由から、ママの職場復帰は可能な限り柔軟にサポートしている。会社には専属の社会保険労務士もいるので、個々のケースに合わせて最善の方法を検討することが可能だ。
また、「施術数や売上などの“定量評価”だけでなく、会社のために何をしてくれたかという“定性評価”も重視するのが会社の方針です」と小林さん。出産や育児で施術ができない時も、サロンの一員として貢献できることが、ママスタッフのモチベーションを維持し、将来への目標を持ち続けることができる。こうした取り組みにより、近年は結婚や出産を理由に離職するケースが少ないという。
3取り組み
施術を離れても輝けるステージを提供し、夢と目標を持たせる。
どんな取り組み?
「ピー・ブリエ」では、ステップアップの道筋が見える明確なキャリアプランと、給与体系をスタッフ全員に公開。面談で「現在の立ち位置がどこで、頑張ればどうステップアップできるか」を示し、店長や管理職など、将来のビジョンを一緒に考える機会を持っている。また、運営会社の「アヴァンセ」には、「ピー・ブリエ」の営業を助ける運営サポートや、化粧品の販売、外部エステティシャンの教育を請け負うアカデミーなどさまざまな事業があり、サロンスタッフのキャリアパスとして門戸を開いている。
なぜそうした?メリットは?
エステティシャンはやりがいがある仕事だが、体力的にハードな面もあり、ベテランスタッフが若手と同じように働き続けるのは難しい。そこでスタッフに対し「将来は時間よりも質を重んじる働き方が可能」という道筋を示せば、結婚や出産をしても働き続ける自信に繋がる。
もしスタッフが育児や介護、体力的な理由でサロンワークが続けられなくなっても、今までの経験を活かしてインストラクターや管理職、営業職などでキャリアを積んでいくことができる。さらには個人で代理店契約をしたり、外部インストラクターや外部営業として「アヴァンセ」の業務に関わっていくことも可能だ。実際にエステティシャン出身で、化粧品の営業で活躍しているスタッフもいる。このように、女性のライフステージに対応する多様な働き方を提案することで、会社は個人の夢や目標も応援することができる。
代表取締役インタビュー
- Q. 女性が働きやすい環境づくりに取り組んできた理由は?
-
A. 「当たり前のことを当たり前に」がモットーだからです。
エステティックサロンにスタッフが定着しにくい一番の問題は、社会保険の未整備と長時間労働だと思います。聞けば、未だに多くのエステティシャンが、社会保険に加入せずに働いているそうですね。私は大手化粧品会社にいたこともあり、社会保険を完備するのは基本中の基本だと考えていました。あとはちゃんとしたお給料、お休み、福利厚生。それが基本ベースにあれば、みんな仕事は続けられるんです。うちの会社では立ち上げから社労士さんが入って、スタッフの労務管理をしています。この問題は本当に、業界ぐるみで変えていかなければなりませんね。
- Q. これから取り組みたい課題は何ですか?
-
A. 面接の改善と、社内レクリエーションです。
まずは、面接の見直しをしたいと考えています。今まで離職したのは入社して1、2年の若いスタッフが多く、結婚や出産で辞めた例は意外に少ないんです。仕事を始めてみないと分からないギャップが大きいのでしょうね。でもある時思いついて、社長面接に本人のお母さんも一緒に来ていただくようにしたら離職が少なくなりました。会社と親御さんとの間に信頼関係ができたことと、娘さんがお母さんに仕事の悩みを相談しやすくなったのが功を奏したようですね。今後の新卒採用では教育資料もきちんと作って、さらにじっくり時間をかけようと思っています。
もうひとつは、社内レクリエーションの復活です。以前はBBQやボウリング大会もあったのですが、今はデパートやショッピングモールのイン・ショップにしてしまったので、休みが同時に取りにくくなったんです。「みんな仲良く、家族のように」という社風なので、少し寂しい。やはり頑張った後には楽しいことが必要ですよね。今後限られた時間で何とか工夫して、行事を企画したいと考えています。
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