女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.101全店売上の上位者は、時短勤務ママ!
「出産で辞めないサロン」の家族的風土とは?
Urun Group
北海道札幌市・釧路市・苫小牧市・旭川市
北海道札幌市を中心に、各地に18店舗を展開する「Urun Group(うらんグループ)」。ファミリーからシルバーまで幅広い層に親しまれる明るい雰囲気と、スタッフの技術の高さに定評のあるヘアサロンです。札幌圏の84名のスタッフのうち、17名がパートや時短社員として勤務するママスタッフ。ママとして働きやすい環境を整え、妊娠・出産した女性の職場復帰を積極的に進めてきました。現役美容師として活躍しながらマネージャーを務める佐々木美保さんに、サロンの取り組みについてお話を伺いました。
1取り組み
復帰後の働き方は柔軟に対応し、育児中は週末のお休みOK。
どんな取り組み?
産休・育休から復帰後の働き方は、スタッフと会社で相談し、スタッフの希望に応じて決める。働き方は正社員、パートの他に「二部社員」(時短社員)を選ぶことができる。二部社員は過去に一定の実績があるスタッフが対象となり、1日6〜7時間勤務で正社員より月1日休みが多い。朝礼や終礼、勉強会への出席は義務づけられていない。
また、ショッピングモールに展開する「Urun」各店は年中無休で週末が忙しいため、正社員は基本的に土日が出勤日だ。それに対して二部社員とパートは、土日に優先的に休むことができる。
背景とメリットは?
会社の歴史と共にスタイリストが定着し、結婚するスタッフが増えたことが制度を考えるきっかけになった。妊娠・出産を経て、女性スタッフに仕事を続けてもらうためには、それぞれの家庭の事情やライフステージに合わせた労働環境を用意することが重要。そのため、出退勤時間や休日について柔軟に対応できるようにしてきた。「実際の運用では、出産したスタッフは復帰時にパートを選択するケースがほとんどです。保育園の休園日に合わせ、ご主人の扶養の範囲内で働けるように、パートは基本的に1日5時間以内で平日のみの出勤としています」(マネージャー・佐々木美保さん)。二部社員は、子どもが小学校や中学校に入って育児が一段落したママスタッフが、ステップアップのために選ぶケースが多い。
働き方が選べることで、出産したママスタッフは現場復帰がしやすくなる。子どもの送り迎えや学校行事への参加もしやすく、家庭を大切にしながら働くことができる。さらにパートから二部社員、正社員へと段階的にステップアップできる道筋があれば、長く働くためのモチベーションにもなる。
2取り組み
ママスタッフも希望があれば指名を受け付け、急なお休みにはサロンが対応。
どんな取り組み?
ママスタッフは二部社員だけでなくパートも、勤務時間内に限定してお客さまからの指名を受けることがある。しかし子どもの急な発熱などで、指名が入っていても仕事を休まなければならない時もある。そんな時にはサロンの他のスタッフがお客さまへの連絡を代行している。また、そうした対応が迅速にできるよう、カルテによるデータ共有体制を整えている。
背景は?
「Urun」で働くパートや二部社員の多くは、入社後に出産して復帰したママスタッフ。キャリアが長いので古くからのお客さまも多く、ひいきにしてもらい、応援してもらえることは仕事を続ける上での励みにもなる。「実際に、パートや二部社員は大きな戦力なんです。技術が高く経験もあるので、安心してお客さまを任せられます。二部社員ながら、全店舗でナンバーワンの売上を上げているママスタッフもいるんですよ」(佐々木さん)。
半面、小さな子どものいるママスタッフは、発熱などによる急な休みが避けられない。急な欠勤が出た時はサロンがお客さまに対して、予約を変更するか、変わりのスタッフが対応するかを調整。できるだけママスタッフのプレッシャーを軽減するようにフォローしている。
3取り組み
ママの職場復帰を促す声かけや、アフターフォローを大切に。
どんな取り組み?
スタッフの妊娠が分かった時は、本社で出産・復職経験のある女性社員が面談を行い、産休・育休などに関するアドバイスを行う。職場復帰した際は、社長や幹部が常に声をかけて悩みを聞いたり、各店で年に数回ママを交えた食事会を開いている。また、出産・育児のために退職を選んだ元スタッフに対しても、会社から近況をたずねるなど折に触れて接点を持つようにしている。
なぜそうした?メリットは?
美容師に限らず女性はライフステージの変化に合わせてキャリアの見直しを迫られることが多い。出産や子育てのために働けなかったり、働き方を変えざるをえないと、やりがいや目標を見失ってモチベーションが下がってしまうこともある。ママスタッフに意欲を持って長く活躍してもらうためには、会社としての定期的なケアとアフターフォローは欠かせないと考えている。
出産で退職した後も「あなたが必要です」というメッセージを伝え続けた結果、職場に復帰してくれたママスタッフもいる。サロン復帰後も、人間関係や技術的な悩みを幹部がフォローすることで、ママスタッフが自信を取り戻したり、不安を解消することに繋がっている。
マネージャーインタビュー
- Q. ママが働きやすい環境の整備に力を入れてきた理由とは?
-
A. 手塩にかけたスタイリストに長く働き続けて欲しいからです。
もともと当社は、スタイリストの中途採用をあまりしないサロンでした。専門学校を卒業して入社した新人を、一人前のスタイリストにじっくり育て上げることが社長のスタンスなんです。でも会社が成長するにつれて結婚する社員が多くなり、出産のために離職するケースも出てきました。そこで、産休・育休を取って無理なく戻ってこられる環境を整えることが急務になったんです。今では、出産しても退職せずに仕事を続ける女性がほとんどになりました。
これから力を入れていきたいのは、休眠美容師さんの中途採用です。10:00〜15:00頃がどこの美容室でも忙しい時間帯で、そこで頑張ってくれるパートさんはとても貴重なのですが、なかなか出会いがありません。今後の求人の課題ですね。
- Q. ママに対する他スタッフの協力体制はどうつくりますか?
-
A. スタッフだけでなくその家族も幸せにする風土が大事です。
サロン内では自然に仲間同士助け合う雰囲気ができていて、他のスタッフが不公平感を抱くことはあまりないようです。逆にママスタッフから「帰りにくい」「申し訳ない」という声を聞くことはあります。でもママの事情を他のスタッフに理解させるのは店長の役目ですから、本人は気にせずさっと帰って構わないんです。リーダーである店長の指導の下で、「あの人は子どもがいるから早く帰ります」としっかり伝えてもらうようにしています。
もうひとつは、会社がとても家族的なことですね。それは社長のスタッフに対する接し方の影響が大きいと思います。上下関係はあっても気さくで、忘年会や新年会には「旦那さんや奥さんも連れてきなさい」と呼びかけるような人です。トップが家族ぐるみで幸せになる会社を目指しているから、スタッフにも自然に仲間に対する思いやりの心が育っていくのでしょう。励まし合いながら働き続けられる環境があれば、ママ美容師もまだまだ技術を磨けます。そうして10年後、20年後も輝いていてほしいですし、この伝統を後輩に伝えて行ってほしいと思っています。
Salon Data