女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.102スタッフ4名中3名がママ!
社員とパートの協力体制を生む“工夫”とは?
make's HAIR DESIGN
愛媛県今治市
今治市にある美容室「make’s HAIR DESIGN」は、お客さまとのコミュニケーションを第一にした地域密着型サロン。ヘアをはじめスパ、メイク、ネイル、着付けなどのトータルビューティーを提供しています。4名いるスタッフのうち、オーナーを含め3名が子育て中のママ。その中には、第2子の産休を控える妊娠中のママも。「こんなに自由に働かせてもらえるサロンは他にない」と、ママスタッフたちは口を揃えます。少人数のサロンながらも、短時間勤務のスタッフを活躍させられる工夫や、女性活躍の取り組みを始めたきっかけなどを、オーナーの宇高有美さんに伺いました。
1取り組み
ママスタッフの働き方や勤務時間は完全自由。
それを叶えるのは“シンプルな考え方”。
どんな取り組み?
パートで働くか、正社員になるかはスタッフの希望次第。現在2名いるママスタッフは、共に家庭優先の働き方を希望しているため、パートで勤務している。パートの場合、勤務日数や勤務時間に最低基準はなく、シフトは自由。翌月のカレンダーに、出られる日時を各々で書き込んでもらう方法をとっている。土日は時給がアップするため、平日だけでなく土曜にシフトが入ることも。指名が入った場合は、時給に指名料がプラスされる。
背景とメリットは?
現在、パートスタッフの出勤は週2~4日、9時~15時30分の勤務が通例になっている。冬休みや夏休み期間はパートスタッフが長期休みをとるため、アルバイトを雇って人員確保を行う。「子どもが小さいママスタッフは、17時まで働いてしまったら、家のことが何もできなくなってしまいます。15時頃までには家に帰らせてあげないと、長く働き続けてもらうのは難しい。もしひとりで営業する日が生じてしまっても、ひとりで回せる分の仕事をすればいいだけのこと。シンプルに考えるのが一番です」と宇高さん。無理なく家庭と両立できる働き方が叶うため、スタッフは出産後も辞めずに戻って来てくれている。
2取り組み
コミュニケーションを密にとり、相談しやすい環境をつくる。
どんな取り組み?
月1回、定休日に、牡蠣食べ放題ツアーなどの「ランチ会」を開催。普段は集まれない全スタッフで、おいしいものを食べながら情報交換をする。話題は仕事の話だけでなく、家族や子育てなどプライベートの話も。気楽な雰囲気が「まるで女子会」と、スタッフたちから好評を得ている。その他、「旦那さん元気?」など、宇高さんはスタッフへの日々の声掛けも欠かさない。服装でも持ち物でも、気付いた時にスタッフを褒めるようにしているという。
背景とメリットは?
細やかなコミュニケーションによって、お互いの信頼が深まり、何でも相談しやすい風通しのよい職場に。スタッフが抱える不安や不満を直接聞くことができれば、対策もとりやすい。「長く働いてもらうために、コミュニケーションを最も大切にしています。昔は遠慮して、スタッフと一定の距離をとっていましたが、プライベートにも少し踏み込まないと、真の信頼関係が築けません。家庭の内情などを普段から聞いていれば、仕事においてどこまでが可能かというのを察してあげることができます。また褒められること、認められることで人は伸びるので、もったいぶらずにどんどん褒めていきたいです」(宇高さん)。
3取り組み
各スタッフの立場を説明し、互いに助け合える風土をつくる。
どんな取り組み?
「make’s HAIR DESIGN」では現在、20代の正社員スタッフが、年上のパートを管理するチーフの役職に就いている。そこでまずは、勤務時間や仕事内容での負担が大きい正社員の給料面を優遇。加えて、仕事と家庭を両立するママスタッフの大変さを説明し、誕生日のサプライズなど喜ばれるような企画を提案した。またママスタッフには、正社員チーフが店の管理者であり、多くの仕事を抱えていることを丁寧に説明。お互いの立場を尊重し合えるように働きかけた。
メリットは?
「ママスタッフの働ける時間は限られている」、「子どもの発熱などでの急な休みは仕方のないこと」という理解がスタッフ全員に浸透。ママスタッフの急な休みにも、みんなが快くサポートできる体制ができている。正社員チーフの立場も理解され、忙しい日にはパートスタッフ自ら手伝いを名乗り出る動きも出てきた。「それぞれの立場を、オーナーがきちんと双方に説明することは重要です。その上で、誕生日祝いやランチ会などでのコミュニケーションがあれば、お互いを思いやる風土が醸成されるのではないでしょうか」(宇高さん)。
4取り組み
いざという時の子連れ出勤には、キッズスペースを活用。
どんな取り組み?
店の一角にキッズスペースを設置。子ども連れのお客さまが利用する他、スタッフの休憩スペースとしても活用されている。また、急な発熱などで子どもを預ける場所がない場合、子連れ出勤をしてキッズスペースに寝かせておくことも可能。小学生の子どもが宿題をしたりDVDを観たりしながら、ママスタッフを待つこともある。いざという時に頼れるスペースになっている。
背景は?
キッズスペースを設けたのは、創業10年目のリニューアル時。店舗面積を2倍に拡張するにあたり、「スタッフが子どもを連れてきて、ちょっと休めるスペースを」と宇高さんが考案した。婚礼や成人式の着付け場所も兼ねており、幅広く活用されている。「いずれは倍くらいの広さにして、いつでも子連れ出勤OKと謳えるぐらいにしたいですね」(宇高さん)。
オーナーインタビュー
- Q. お話を聞いていると、宇高さんはスタッフさんへの思いやりに溢れています。どんな経験からそうなったのですか?
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A. スタッフの働く環境をよくすることが、オーナーの役割だと学んだからです。
私自身が厳しい指導の下で育ったので、開業してしばらくは、厳しくやっていく方針でいました。自分がスタッフを育てていくんだという、偉そうな思いが始めはあったんです。ところが他のオーナーたちと意見交換した際に、心に響く言葉を得ました。「オーナーは水槽の管理人であって、スタッフという魚たちが、その水槽の中できれいに泳いでくれたらいいじゃないですか」と。そのために水や空気の管理をするのが自分の役割なのだと気付いたら、肩の力が抜けたんです。「友だちを大事にするのと同じように、スタッフに接すればいいんだ」とスイッチが変わりました。
ママ美容師さんたちは、「子どももいるし、ブランクもあるし、私なんて」という思いでいるようですが、みんな美容師として磨けば光る原石です。長い修行を乗り越えてきたわけですし、週1日勤務でもいいから、それを生かしていってほしい。そのためのサポートを、できる範囲で精一杯してあげたい。そういう姿勢でないと、いずれこの町から美容師がいなくなってしまうと思うので。
- Q. 今後さらに取り組んでいきたいことは?
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A. もっと大勢のスタッフが楽しく働ける、広い店を作りたいです。
当面の課題は、単価を上げて、パートやアルバイトの時給をもっと高くすることです。婚礼やイベントなどでの収入を増やすべく、今、式場へオファーに回っています。
ハード面では、広いお城のような店を作りたいと考えています。今の倍以上の収容力がほしいですね。キッズスペースも広くて、結婚して辞めていったスタッフが、子連れで出勤できる店。バックヤードには炊飯ジャーを置いて、「ご飯はあるから、おかずだけ持っておいで」とスタッフに言ってあげられるような場所です。数を増やすのではなくて、1店舗でいい。1店舗で地元の人たちにトータルビューティーを提供して、スタッフにも「ここに来るのが楽しい」と思ってもらえる店が作りたいですね。
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