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結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。

vol.110原宿人気サロンにママ第一号が誕生!
産休失客ほぼゼロの理由とは?

grico

東京都渋谷区

原宿に位置するヘアサロン「grico」は、ファッション誌でも話題のブランドサロン。姉妹サロン「TORA」と合わせてスタッフ数は12名、うち5名が女性です。サロン初のママ美容師が誕生したのは、つい昨年。会社ではオープン当初から、女性スタッフの産休・育休に向けた準備を進めていたため、対応もスムーズだったとか。代表のエザキヨシタカさんに、取り組みの内容と根底にあるスタッフへの想いをうかがいました。

1取り組み

アシスタントの当事者意識を高め、スタイリストの産休中の失客を防ぐ。

どんな取り組み?

 アシスタントには「積極的にお客さまに声をかけ、きちんとおもてなしをするように」と指導している。それにより担当スタイリストだけでなく、アシスタントとお客さまの信頼関係も良好に。スタイリストが産休に入る際はアシスタントが一時的にお客さまを引き継ぐが、お客さまの方から「引き継ぐのであれば(アシスタントの)○○くんにやってもらいたい」と声がかかることも。そのためサロン初のママ美容師TOMOMIさんは、産休時の失客がほぼゼロだった。

その背景は?

 サロンにとって最も困るのは、お客さまを失うこと。産休・育休中の失客を防ぐためには、店全体でお客さまを担当できる体制が必要になる。そこでアシスタントには「スタッフもお客さまも家族」という企業理念を伝え、「姉や兄であるスタイリストの不在時には、自分がお客さまを担当する」という心構えを教育している。加えて、アシスタントがお客さまを連れてきた際は、スタイリストが施術した場合でも、売上はアシスタントにつけている。これらの取り組みにより、アシスタントの当事者意識が高まり、自ずと接客レベルも上がる結果に。

ママ美容師のTOMOMIさんは、gricoに入社して7年目。昨年、妊娠9カ月目で産休に入り、出産2カ月後に復帰した

ママ美容師のTOMOMIさんは、gricoに入社して7年目。昨年、妊娠9カ月目で産休に入り、出産2カ月後に復帰した

2取り組み

充実の福利厚生で出産・育児の出費をサポート。

どんな取り組み?

 スタッフが結婚すると結婚祝い金を30万円、産休に入ると最終出勤月の給料を満期分支給。さらに、健康保険組合などから支給される出産育児一時金に加えて、サロンから産休手当を月3万円支給。産後は出産祝い金20万円、復帰後には育児手当月3万円など、各種手当を充実させている。

その背景は?

 「スタッフとその家族まで守っていくことが、僕のオーナーとしての信条です」とエザキさん。スタッフがベストな状態で出産・育児をして、仕事を続けていけるように、金銭面のサポートも手厚くしている。「健康保険からの出産育児一時金は支給されるまでに時間がかかるので、その期間をフォローするために産休手当や出産祝い金を出しています。復帰後の育児手当は、保育料のサポートが目的です。時短で復帰するとやはり売上が下がり、その分給料も減ってしまうので。支給期間は特に定めていないのですが、サポートが不要な水準まで給料が上がったら終了しています」。

エザキさん自身にも3歳になる娘さんが。パパとして育児に参加し、妻の日々の奮闘を見てきたからこそ、ママ美容師に必要なサポートを先回りして考えることができる

エザキさん自身にも3歳になる娘さんが。パパとして育児に参加し、妻の日々の奮闘を見てきたからこそ、ママ美容師に必要なサポートを先回りして考えることができる

3取り組み

「スタッフは家族」という企業理念を浸透させ、支え合える風土を醸成。

どんな取り組み?

 「スタッフもお客さまも、関わる人はみんな家族。家族を大事に、幸せにする」というのがgricoの企業理念。スタッフには入社当初からその理念を伝え続けている他、「会社を幸せにしようと思えば、お客さまも幸せになって、業界も幸せになる」という「幸せの三角形」の思考を常日頃から呼びかけている。

背景とメリットは?

 「『人を幸せにすることが大切』という価値基準がないままに、会社が制度だけ整えて『ママスタッフを支えてほしい』と伝えても、現場は混乱するだけです。まずはそういう価値基準をつくって、浸透させておかないといけない」とエザキさん。その第一歩として、スタッフが入社する際にエザキさんは「あなたが入社すれば家族として大事にするし、あなたの子どもや家族も守るから」と話している。「スタッフやお客さまは家族だから、幸せにしなければならない」という理念が浸透した結果、時短勤務や子連れ出勤などイレギュラーな働き方をするママスタッフを、他のスタッフが自然にフォローしてくれるように。不満の声が上がってきたことは、これまでに一度もない。

「人を増やして店舗をたくさん展開していくよりも、今いるスタッフたちといろいろ挑戦していきたい」とエザキさん

「人を増やして店舗をたくさん展開していくよりも、今いるスタッフたちといろいろ挑戦していきたい」とエザキさん

4取り組み

子どもを連れて出勤できるキッズスペースを設置。

どんな取り組み?

 サロン2階の一角にキッズスペースを設置。保育園が休みの日曜・祝日に、子連れ出勤をするママスタッフが利用している。また、子ども連れで来店したお客さまが利用することもある。

その背景は?

 キッズスペースができたのは、ママ美容師TOMOMIさんのフルタイム勤務への復帰がきっかけ。時短勤務から変更するにあたり、日曜・祝日の子どもの預け先が確保できず、エザキさんに相談したところ「それなら子どもを連れてきたらいい」と。その提案にのって、TOMOMIさん自らがキッズスペースを設置した。
 「僕のお客さまは20代~70代まで幅広いのですが、メインの層は30代と40代。お子さんを連れて来られるお客さまも多いので、サロンに子どもがいるのは普通のことなんです。スタッフも預け先がないのなら、子どもと一緒に出勤すればいい。僕自身、親が母しかいなくて、いろんな人に可愛がってもらいながら育ったので、スタッフの子どももお客さまの子どももみんな大事にしたいんです」とエザキさん。

TOMOMIさんがお客さまをカットする間は、アシスタントが子どもをあやしてくれている

TOMOMIさんがお客さまをカットする間は、アシスタントが子どもをあやしてくれている

代表インタビュー

代表のエザキヨシタカさん。都内大手ヘアサロンを経て23歳で独立、24歳で「grico」をオープン。会員制コミュニケーションサロンやファッションブランドの運営、商品プロデュースなど、活躍の場を広げ続けている。プライベートでは一児のパパ

Q. TOMOMIさんの夫も、エザキさんの提案で育休を取ったとか。どのようにお話しされたのですか?

A. 男性が育休を取ることのメリットを説明しました。

 TOMOMIの夫も他のサロンで美容師をしていて、僕はそのサロンとも仲がいいんです。育休をとるのはほとんどの場合が女性ですが、男でも女でも、美容師にとって仕事の価値は一緒ですよね。ならば夫婦どちらにも輝き続けてほしいと思って、夫とその勤め先のオーナーへ協力を呼びかけました。TOMOMIが復帰して慣らし出勤をする間、夫に育休を取ってもらい、子どもといる時間を作ってもらったんです。育休を取ると、男性でも育児休業給付金がもらえるんですよ。そういうメリットも調べて説明して、納得してもらいました。

Q. 今後、さらに取り組んでいきたいことは?

A. パパ美容師のかっこいい働き方を提案していきたい。

 まず1つは、もっとママ美容師を目立たせていくこと。これは今、某女性ファッション誌の編集部と計画中です。もう1つは、パパ美容師のかっこいい働き方の提案。ただ仕事に明け暮れるだけのパパ美容師ではなく、お金をしっかり稼いで、子どもとの時間も作って、武道館のヘアショーにも出たりしていたらかっこいいじゃないですか。そういうパパ美容師って、ママ美容師と同様に美容業界にすごく必要だと思うんです。参考のために、各業界のトップにいるパパたちを集めて、時間管理の方法や生き方論を聞き出してみようかとも考えています。

Salon Data

grico(グリコ)

アクセス
JR原宿駅から徒歩8分
創業年
2009年
店舗数
3店舗
設備
セット面8席 
スタッフ数
12名(スタイリスト5名、アシスタント7名) ※都内2店舗合計
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000167654/
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