第4章「面白い」サロンをつくりたい
「スタッフには“NORA”のリソースを使って
好きなことをどんどんやってほしい。」
従来のやり方にとらわれない試みとしては、ヘアカラー専門店「fufu(フフ)」と協力したデザインヘアカラー専門店「CYNDY color salon」を2017年に渋谷にオープンしています。同業者と手を組むのは珍しいですよね。
確かに「競合他社と手を組むなんて」と批判的に言われたこともあります。でも「fufu」は日常使いできるカラー専門店で、僕らはデザイン性を売りにしたサロンで、僕からしたら競合していないんですよ。お客さんの層が違うから取り合うものじゃないし、たとえお客さんを取られても違うことをやって新たなお客さんを呼べばいいし。それよりも相乗効果が期待できることの方が大事。
ヘアサロンでデザインカラーとカットをすると数万円かかるけど、それを毎月のように学生が利用するのって難しい。もっと通いやすい店ができないかなって話を、以前から仲よくしている「fufu」の代表・高橋さんにしたんです。そうしたら「いいね」と賛同してくれて、翌日には契約書類を作って持ってきて、どんどん話が進んだんですよ。そして技術と人材はうち、場所と資金は高橋さん、とお互いに持ち寄ってスタートしました。
いま中国でもデザインカラーの需要が伸びていて、このカラー専門店を中国でも展開する話が出ているんです。
今後、新たな試みとして計画していることは?
先ほども話に出た西野亮廣さんが、彼の絵本作品である『えんとつ町のプペル』の世界を再現した美術館、もっと言うと「街」を造る構想があります。その「えんとつ町」に美容室も造りたいと、計画しているところです。
やるなら普通の美容室じゃ面白くないので、どうするか?美容室って、ここ何十年もやることの枠組みはずっと変わっていない。それをアップデートできたらなって思っています。たとえばマネタイズするポイントをずらしてみるとか。僕のお客さんってカットが8000円でも1万円でも、もはやどっちでもいいと考えている。値段じゃなくて、僕や新しいビジネスに興味を持って来てくれているんです。だったらいっそカット料金はゼロ円にして、代わりに会費制でイベントにも参加できるようにするのもアリだな、とか。
今後、サロンではどんなことをしていきたいですか?
僕だけじゃなくて、このサロンという場を、スタッフたちにも自由に使ってほしい。スタッフがやりたいと言うなら基本NGはありません。やってみてうまくいかなくても、失敗もいい経験になりますから。「NORA」のリソースを使って好きなことをどんどんやってほしいですね。
僕は以前、カリスマサロンで働いていました。そこを頂点にしたピラミッドが美容業界にはあるかもしれません。でもそのピラミッドに所属していたら僕は勝てない。だからいろんなことにチャレンジする価値があるんです。
未来の美容室として広江さんが思い描くのは?
僕個人としては、『レディ・プレイヤー1』とか『バック・トゥ・ザ・フューチャー』みたいなSFの世界観がすごく好きなんです。だから最新のテクノロジーを活用して美容室を「エンタメ空間」にしていけたらいいなって。たとえばお客さまが「VR(バーチャルリアリティ)=仮想現実」のメガネをかけると、スタイリストがお化けに見えたりとか。ファンタジーとリアルの境界線を曖昧にするのって楽しいですよね。
美容だけに限定しないで、せっかく時間をもらうなら楽しんでもらいたい。だってその方が絶対、お客さんも僕たちも、面白いでしょ?
アシスタント時代から、人と会っている絶対量が違います。
人間力の高さは、リアルマーケティングの積み重ねゆえ。
「今の時代は、客数・客単価ではない。いかに面白い人を切っているか」
そう語る広江さん自身が「圧倒的に面白い」からこそ、そこに面白い人が集うのです。