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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.25

実例編ブランドサロン勤務&訪問美容を両立!

渋谷の超人気サロン「JEWIL SHIBUYA(旧:Noz渋谷公園通り店)」でトップスタイリストを務めながら、個人として訪問美容も手掛ける左藤健人さん。「訪問美容はスタイリストの活躍の場を広げる手立てとなる」と、自身の活動のみならず、普及にも貢献したいと熱く語ります。訪問美容との出会いから、今後やっていきたいことまで、訪問美容にかける想いについてうかがいました。

左藤健人さん

訪問美容開始:
2017年
訪問施設数:
3施設(1回の訪問で5〜35名)
施設訪問頻度:
1カ月に1回
価格:
カット5,400円〜、パーマ8,640円〜、カラー8,640円〜

Q

訪問美容と出会ったきっかけは?

A

親会社のグループに、介護施設があったことでした。

派遣されて行った施設での施術に喜びを感じました。

現在勤務している「JEWIL SHIBUYA」の元の親会社である「Noz」は、グループ会社に介護施設がありました。3年ほど前から先輩たちがその施設に施術に行く際についていったのが始まりでした。そのときは会社からの派遣で、ほとんどのスタイリストが希望して行っていたわけではありませんでしたが、私は「自分の技術でサロン以外の場所でも誰かをキレイにできる」ことに喜びを感じたのです。場所が変わるだけで「人をキレイにすること」はサロンと同じでしたし、社会貢献にも関心がありました。通っているうちに、訪問美容はスタイリストのフィールドを広げられる仕事ではないかと可能性を感じ始めました。

主軸はあくまでサロンワーク。施設には月1ペースで訪問。

その後、親会社との契約が終了したことで、施設への訪問も一時途切れていました。しかし、施設からご指名をいただいて個人的にうかがうようになり、本格的に訪問美容をスタートすることになりました。サロンとしてではなく私個人の活動ですが、店長も理解を示してくれて、サロンの営業日にも施設に行っています。サロンワークに支障をきたさない範囲で、1施設につき月1回、訪問美容に専念させてもらう日を与えていただいています。現在、3施設に定期契約をいただいていますが、今のところこれが精一杯です。

  • 「訪問美容には初めからすんなり入れました」と語る左藤さん

Q

営業はどのようにしましたか?

A

最初は電話で、アポが取れたらデモンストレーションを行いました。

3件の契約までは割とすんなり進みました。

最初の契約は施設から声をかけていただきましたが、自分から営業もしました。ホームページや施設のご紹介などで営業するリストを作成し、10数件電話をかけたと思います。サロンワーク主体なので、店舗にもすぐ戻れるよう、渋谷にあるサロンから1時間以内で行ける範囲、または自宅からもアクセスのよい場所に限定して営業しました。電話でアポイントが取れたら、施設に出向いて「どんなサービスができるか」をプレゼンし、デモンストレーションをさせていただきました。実際の技術を見てもらえたことで2件の契約に結びつきました。

施設の職員の方と信頼関係を築くことが何より大切。

営業よりむしろ難しいのは、介護業界と美容業界には壁があると感じたことです。我々スタイリストと施設の職員の方とでは、服装や髪型などの外見が違いますよね。そのためになんとなくマナーが悪いと誤解されることもあるので、その溝を埋めていくことが大変でした。社会人としてのマナーはもちろん、きちんとした会話ができるか、施術や片付けなどは丁寧かなども見られています。きちんとした対応をして「利用者さまを想う気持ちは一緒」とご理解いただいて、信頼関係を築くことができました。
職員の方々の信頼を得るためには、気持ちよく挨拶をすることや、スタッフの方々のお顔と名前を覚えるなど基本的なことを心がけていました。また、現場の空気を読んで、職員の方々が働くリズムを壊さないように、決められた時間でできるだけ多くの方の施術を、手早くかつ丁寧にしています。1日に35名の方の施術をしたこともあります。大変でしたが、充実感があって楽しい経験でした。

Q

訪問美容をやってみて大変だったことは?

A

ご本人以外のご意見も聞く必要があることです。

普段介護をしている職員やご家族の方々とのコミュニケーションも大事。

サロンワークの場合はお客さまご本人のご意向をうかがえば済みますが、訪問美容の場合はご本人のカウンセリングだけでなく、職員の方やご家族の意向も大切にしなければなりません。普段、利用者さまのシャンプーなどをしているのはその方々なので、介護しやすい状態も大事だからです。ご本人、職員の方、ご家族の三者の考え方が違っている場合、じっくりカウンセリングしてみなさまにご納得いただけるスタイリングを自信をもって提案するようにしています。ご本人はたとえお話しすることができなくても「キレイになりたい」と思っていらっしゃるので、そのお気持ちを最大限叶えられるよう、似合わせて仕上げるよう心がけています。それはサロンワークと同じです。

「キレイにする」ことはサロンも訪問美容も同じ。

私自身は訪問美容を始めた当初から「利用者さまにキレイになっていただきたい」という気持ちだけで、サロンワークと同じスタンスで入りました。それでもやはり、車いすの方や寝たきりの方、認知症の方など、利用者さまの状況はサロンのお客さまとは異なっています。その対応がわからずに当初は失敗してしまったこともありました。スタイリストの多くは「こうした対応がわからない」という理由で、訪問美容に抵抗を感じているように思います。しかし、介助は法律的にも美容師の範ちゅうではありませんし、職員の方にサポートしていただけば、「キレイにする」という我々がやることは変わらないのです。そのことをもっと知ってもらって、訪問美容に多くのスタイリストが関心をもって、チームで訪問できるようになれたらと願っています。

Q

訪問美容をやってよかったことは?

A

利用者さまからたくさんのことを与えてもらえます。

施術後に言葉にできないほどの素敵な笑顔を見せてくださいます。

施設での施術をすると、利用者さまが心から喜んだ笑顔を見せてくださいます。施設に入所される方々はそれまで訪問美容のサービスを受けたことがない方がほとんどで、入所時には髪やひげを伸ばしっぱなしだったり、おしゃれとはかけ離れた状態の方が多くいらっしゃいます。そうした方々をキレイにカットしたとき、言葉では言い表せないくらいの素敵な笑顔になるのです。以前、103歳の方の施術をしたことがありました。言葉を話せない方でしたが、施術後に鏡を見せたときの笑顔が忘れられません。
その方はもうお亡くなりになってしまいましたが、他にも担当した方が訪問するたびに弱っていかれる姿を見たり、亡くなられることはとても哀しいことです。それでも、施術を通して人生の大先輩の方々からたくさんのものをいただいていると思います。「人生の最期までキレイでいたい」という想いをかなえる美容は、素晴らしい仕事だと誇りと自信をもっています。

サロンワークとの相乗効果もある。

訪問美容では、前述のようにさまざまな方とのコミュニケーションを取ったり、限られた時間で大勢の方の施術をしなければなりません。その経験がサロンワークにも生きていると感じています。サロンで得た技術で訪問美容を始め、訪問美容で得たコミュニケーション力や技術をまたサロンに活かすという相乗効果があるのではないでしょうか。美容以外のフィールドの方ともタイアップできて、人間としての自分の幅も広がっていくと思います。

  • 「年齢を重ねてもお客さまがキレイでいたい気持ちはずっと変わらない。それをかなえるのが美容師の仕事」と左藤さんは語る

Q

今後はどうしていきたいですか?

A

訪問美容に携わる方々とコラボしていきたいです。

訪問美容の普及に貢献しながら、自分もスキルアップしていきたい。

私は個人として訪問美容を行っていますが、サロンに勤務しながら個人で動くのは、きっかけづくりも営業も正直大変です。その意味で、ホットペッパービューティーアカデミーが行っている訪問美容のイベントは、同じ志をもつ人たちと出会えるきっかけになると思います。私も参加して、意見交換させてもらいました。また、「訪問美容ゼミ」は、半年で訪問美容の基礎を学べて営業まで落とし込んでいるとのことなので、志す方々には一番いい方法だと思います。
私の場合はすでに訪問美容を始めているので、始めた後にさらにスキルアップしたり、どんな施設のどのような状態の方でも対応できるような細かな技術力を高めていきたいと考えています。そのために、自分と同じような状況の人や、「訪問美容ゼミ」の講師の方々と意見交換できる場があるといいと考えています。私自身の経験も発信して、これから訪問美容を始める方の参考になれればと思います。今後は訪問美容に携わる方々とコラボしながら、訪問美容の普及にも貢献できたらうれしいです。

  • 美容業界全体の将来のために「訪問美容をもっと広げたい」と左藤さんは目を輝かせていた

左藤さんからひとこと

現在は専門学校にも訪問美容の科ができるほど、訪問美容がサロンの役割のひとつに発展する時代は必ず来ます。介護施設も増え続けています。一方で街にはサロンがあふれ、集客が難しい時代になっています。自分はあと5年で40代になり、今年子どもが生まれて妻も仕事復帰をするので、働き方を変える柔軟性をもたねばならないと考えています。時代の変化に合わせて美容師も変わらなければならないのではないでしょうか。訪問美容は美容師の仕事の枠を広げるチャンスです。視野を広げると我々を待ってくれている人がたくさんいることに気づきます。一歩踏み出すために、まずは自分のお客さまでサロンに来られなくなった方から始めてみるのも手です。お客さまを生涯顧客として、スタイリストの活躍の場を広げるためにも一緒にがんばりましょう!

Salon Data

JEWIL SHIBUYA【ジュイル シブヤ】

アクセス
渋谷駅から徒歩6分
創業年
2012年
店舗数
2店舗
設備
セット面20席
スタッフ数
16名 
URL
https://beauty.hotpepper.jp/slnH000258389/
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