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みんなが自分でいられる場所を
作ってあげたかったんです。

みんなが自分でいられる場所を作ってあげたかったんです。

千葉

そこからはどのような道を?

小橋

自分の30歳の誕生日を祝うパーティーが転機になりました。病気から回復するために摂生し、3カ月トレーニングをして鍛えました。なので体は元気だけど、相変わらず金はない。それなのに、ホテルのプールを貸し切って、派手なパーティーを開催したんです。「とにかく何かやらなきゃ」って強迫観念みたいなものがあったのかな。

千葉

大胆ですね!

小橋

いま考えると無茶ですよね。けど、失うものは何もなかったんで(笑)。「数十人規模じゃ意味がない」って勝手に思って、なんと招待したのは200人。ホテルからの請求は、びっくりするくらいの金額でしたが、それで自分を追い込めたからやり遂げられたのかな。

来てくれる人がどうやったら満足してくれるかを考えて、あれこれと工夫したのが楽しくて。それが、僕のイベントプロデューサーとしての原点です。

千葉

以後は、数々のイベントを手掛けていますよね。

小橋

幸運にも、その誕生日パーティーがすごく好評だったんです。そこからは仲間内の口コミで、徐々に小さなクラブなどからイベント企画を依頼されるようになり、少しずつ規模が大きくなっていきました。

千葉

それがいまや、『ULTRA JAPAN』にクリエイティブディレクターとして携わり、観客動員10万人を超える規模にまで成長させました。ご苦労も多いのではないでしょうか。

小橋

これはイベントに限らず、どんなチームにでも言えることですが、スタッフ全員が「情熱」を共有できないとうまくいきませんね。運営のトップである僕だけが熱くて、末端のスタッフがシラけてたら、お客さんにもそれは伝わってしまう。

千葉

そうなってしまった場合、状況を打開するには?

小橋

特に何回も続いているイベントだと、“慣れ”が出てしまう。過去の成功体験があるから、「今年もこれでいいよね」という思考に陥りやすいんです。

それをなくすために、僕はスタッフと徹底的に話し合い、イベントの意義をもう一度考えてもらうようにしています。

千葉

『ULTRA JAPAN』や、『STAR ISLAND』といった大型イベントの意義については、どのようにお考えですか?

小橋

日本人って同調圧力にさらされて、「人と同じようにしなきゃ」って生きている人が多いですよね。言ってみれば、「周りからこう見られたい」と“自分が思う役”を演じている。

それをぶっ壊して、本当に自分でいられる場所を作ってあげたかった。それも、週末にサクッと行ける都会でね。

千葉

小さなイベントを手掛けていた当時から、将来は『ULTRA JAPAN』のように大きなイベントを手掛けたいと思っていたのですか?

小橋

そんなことはまったくありません。自分の心のワクワクに従って、目の前のことに取り組んでいたら、いつの間にか今の場所に立っていたというだけ。

「あれをやらなきゃ」とか「こうなるべき」という“have to”を追いかけると、絶対に無理が出るし、苦しいだけなんです。

千葉

ある意味、成り行きだと?

小橋

そのとおり。今は情報過多で、さまざまな成功例を見ることができますよね。みんなそれを自分にも当てはめようとするんだけど、そんなの無理に決まってる。

僕も俳優の頃は、社会の要望や常識に縛られて、「こうあるべき」という偽りの自分を演じて。先のことばかり考えていました。そんなのが楽しいわけがない。それより流れに身を任せて、その時々で一生懸命がんばるほうがいいですよ。

千葉

“have to”(~しなければならない)ではなく、“want to”(~をしたい)に従って生きるという事ですね。

小橋

そうです!登山をするときに、ずっと山頂を見て「あそこに行かなきゃならない」と思いながら歩くのは辛いでしょ?歩いても歩いても、近づかないから。だったら、足元の一歩一歩にフォーカスして、分かれ道では自分のワクワク、直感と興味に従って歩くほうが楽しい。目指していた頂上に無事たどり着けるかどうかはわからないけど、それって別に失敗ではない。

千葉

そのワクワクが見つからない、という人も多いと思うのですが。

小橋

ワクワクは、自分の枠から外れてみないと見つかりません。そんな大げさなことじゃなくていいんです。疎遠になっていた友だちと会ってみるとか、気になっていたんだけど入れなかったバーに行ってみるとか、自分のコミュニティから、ちょっとはみ出すだけでいい。

そうすると、新しい発見や出会いがあるかもしれない。感性が刺激されて“want to”が生まれるかもしれない。心が開放されて、本当の自分に出会えるかもしれない。

普段の職場以外に、小さなアイデンティティを持つことってすごく大切。僕は、それを「セカンドID(アイディー)」、つまり「もうひとりの自分」と呼んでいます。

2019年5月に、初の著書『セカンドID「本当の自分」に出会う。これからの時代の生き方』(きずな出版)を上梓した

趣味でもある「山登り」でのワンショット。大自然から気づかされることも多いという

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