ファンを作るサロ友
ファンを作る「サロ友」とは?
少子高齢化でお客さまが減る中、リピート客獲得がより重要になっています。
そんな中、「顧客同士のつながり」を生み出すことで「サロンのファン」を作る…「サロ友」についてご紹介していきます。
musee style.(埼玉県熊谷市)
お客さまも近所のお店も出店!ヘアサロン主催の文化祭。
熊谷市内の県道沿いに佇む一軒家サロン「musee style.」。大きな窓の向こうに中庭テラスが広がり、緑いっぱいの眺めに癒やされるヘアサロンです。こちらに集まるお客さまは、老若男女問わずおしゃれが好きな人ばかり。毎年文化の日に開催している文化祭では、スタッフはもちろん、近所のお店やお客さまも出店して、イベントを盛り上げるのだとか。
今年で開催6年目となる文化祭の狙いや開催時の工夫点について、代表取締役の柴﨑ヒトシさんと店長の戸井田ひろみさんに伺いました。
今年で開催6年目となる文化祭の狙いや開催時の工夫点について、代表取締役の柴﨑ヒトシさんと店長の戸井田ひろみさんに伺いました。
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サロン主催の文化祭を開催。
お客さまとスタッフが一緒に盛り上げるイベント。
毎年11/3の文化の日には、サロンを休業して「musee fes」と名付けた文化祭を開催。「お客さまとスタッフが一緒になって、お客さまを盛り上げる」という異色のテーマを掲げ、周辺の飲食店や雑貨店からの出店の他、サロンのお客さまによる出店も歓迎している。そのため会場となる店内には、コーヒーやパン、朝採れの野菜、子ども服、ハンドメイドアクセサリーなどバラエティ豊かな品物がずらり。手相占いやハンドマッサージの体験コーナー、さらには草木染めのワークショップなどもあり、子どもから大人まで幅広く楽しめるイベントとして大好評を博している。
古着中心のフリーマーケットから文化祭へ。
「『musee fes』の前身は、サロンの定休日に開催していたフリーマーケットです」と話すのは柴﨑さん。店長の戸井田さんのファッションに興味を持つお客さまは多く、服を買いたいと相談されることもあったため、7~8年前にはスタッフが着なくなった服を集めてフリーマーケットを開催していたのだという。そこに、お客さまが作るアクセサリーなどの出店が加わり、「musee fes」の土台が築かれることに。さらには周辺のカフェや雑貨店などにも出店を依頼するようになり、フリーマーケットから文化祭へ変貌を遂げることとなった。
「出店をお願いしたのはすべて、うちのサロンと価値観が近いお店です。うちのサロンを好きなお客さまであれば、価値観の同じA店やB店の商品も好みに合うはず。文化祭をきっかけにA店やB店を訪ねてくれれば、お互いに新規のお客さまを得やすくなるだけでなく地域の活性化にもつながる。そういった狙いもあり、こだわって出店者さまを募りました」と柴﨑さん。
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地道な宣伝活動でイベントの認知度をアップ。
告知にはアナログとデジタル、両方のツールを活用。
文化祭として開催を始めてから今年で6年目。フリーマーケットの延長とはいえ、当初は認知度も低く、そこそこの集まり具合だったとか。「お客さまたちに興味を持ってもらうために、店内で配布しているニュースレターで、開催の告知と報告を毎年繰り返しました」と戸井田さん。手書きの記事で地道に楽しさを伝えていった結果、3年目には盛況となり、お客さまが自ら友人や家族を連れて来てくれるようになったという。
さらに戸井田さんいわく、「最初の頃は受付で記名してもらっていたのですが、だんだん手が回らなくなって、SNSを活用するようになりました。ふらっと会場を覗きに来ただけの方でもSNSでつながることができれば、来場のお礼や次回の告知をメッセージで送るなど、その後のコミュニケーションがスムーズになります。文化祭をきっかけにサロンを利用されるようになったお客さまも多いんですよ」。
回を重ねるほど、お客さま同士が知り合いに。
毎年の開催を続けていくうちに、お客さま同士も交流するように。「1回目は会場で顔を知り合う程度ですが、2回目でまた顔を合わせて、3回目で『毎年会いますよね』という会話が生まれるようです。たまたまカットに来たらお互いに見知っていて、『文化祭で会いましたね』と盛り上がるお客さまたちもいます」と戸井田さん。そのまま交流が深まり、一緒にショッピングや海外旅行に出かけたという報告も聞こえてきている。
友だちができることでさらにサロンの居心地がよくなるため、お客さまの定着率は好調に。「リピート率もとてもよいのですが、文化祭に参加してくれるお客さまとサロンの間にファミリー感が芽生えるので、いろいろな場所でサロンのことを宣伝してくれるんですよ。お客さまがどんどんご友人を連れて来てくださって、新規客獲得も好調です」と柴﨑さんも満足気だ。当初に思い描いていた、価値観の近い参加店との間でのお客さまの相互来店も、順調に実現しているという。
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すべてのお客さまにとって、居心地のよい場所を目指す。
趣向を変えたさまざまなイベントを企画。
「musee style.」には、お客さまとスタッフが一緒に楽しむイベントが他にもいろいろ。最も歴史があるのはバンケットルームを貸切にして行う「忘年会」で、昨年末に10回目を迎えた。こちらは招待制で、長年常連の限られたお客さましか参加できない特別感と、メーカーやディーラーの協賛する豪華なプレゼントが好評。手軽に参加できるイベントでは、夏期の日曜にサロンのテラスで開催するバーベキューなども。さらに新しいものでは、先着申し込み10名の参加者がとびきりのおしゃれをしてテラスに集い、美味しい料理と会話を楽しむ「ハイライフ スタイル」という会費制イベントもある。「『サロン』は人が集う場所という意味もあるくらいだから、コミュニティが一番大事。コミュニティを広げていくためには、こういったイベントをまめまめしく行っていく努力が必要だと思います」と柴﨑さん。
接客のプロならではの心配りがイベント成功のカギ。
イベントの円滑な運営のために気を付けているのは、一人ひとりのお客さまに対する細やかなケア。忘年会などの着席イベントなら、気が合いそうな人たちの席を近づけるなど、すべてのお客さまが心地よく過ごせる環境を熟考して用意している。「サロンワークでも気を付けていることですが、10人のお客さまがいれば、それぞれに異なる10通りのケアの仕方があります。触れてはいけない話題もあるし、お気に入りの話題もある。イベント時にはそういった注意事項をスタッフたちと共有して、みんなでお客さまをおもてなしできる体制を整えています」と戸井田さん。接客のプロフェッショナルとしての殊勝な心構えと気遣いが、イベントの成功を支えているようだ。
代表取締役インタビュー
Q.ターゲットにされているのはどんなお客さまですか?
A.うちのサロンと価値観が同じ、おしゃれが好きな方々です。
一般的には、年齢層でお客さまをセグメンテーションすることが多いと思うのですが、うちのような地方のサロンでそれをやってしまうと、集客の幅が狭まってしまいます。若い世代だけでなく、お子さま連れのお母さんでも、50代、60代の中高年世代でも、キレイな人は大勢いるので、年齢層をしぼることはせず、『うちのサロンと同じ価値観を持つ方々』をターゲットとして考えています。文化祭などのイベントは、“おしゃれが好き”“かわいいものが好き”という価値観を共有できるお客さまを集めるための取り組みのひとつです。
Q.さらに今後、計画されていることは?
A.周辺エリアの価値観が同じお店と協力していきたい。
深谷市の商工会議所と連携して、価値観が一緒のお店を集めたガイドマップ、またはウェブ上の街などを制作することを計画しています。最近は美容サロンの供給過剰が話題になっていますが、美容だけでなくどこの業界も店舗過剰の状況だと思うのです。しかもどの店もウェブで買い物ができてしまう。そういう逆風に抗うべく、リアルなコミュニティの中でお客さまを回遊させることで、各店が必要十分なお客さまを確保できる仕組みづくりを進めていきたい。そのためには、価値観の同じお店と協力し合うのがベストなんです。お互いのお店を紹介しあって、顧客が巡るコミュニティを生み出していきたいです。
Salon Data
musee style. 【ミューゼスタイル】
- アクセス
- JR熊谷駅から車で10分
- 創業年
- 1994年 ※musee
- 設備
- セット面8席
- スタッフ数
- 4名