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「おっちゃんの“カッコええなぁ”は 角刈り失敗の合図なんです(笑)。」
柳澤
内海さんは「プロムナード」という大阪の理容室で角刈りにしてもらっているそうですね。なぜこちらに通うように?
内海
角刈りにした最初のころは別の店に行ってたんです。だけど角刈りって技術的に難しいんですってね。その店は切る人によって「角」が違うというか、安定しない。それからもう1軒、別の店に行ってみたんです。でもそこは、えらいゆ~っくり時間をかけて、結果的に坊主頭になりました(笑)。そんな感じで、いい店ないかな~って探してたんですけど…。
駒場
そんな話をしてたら、なんと「ジャングルジム」の会長が「うちの父親が理容師だから行ってみたら」って、「プロムナード」を紹介してくれて。それで内海に教えたんです。
内海
プロムナードのおっちゃんは「角刈り技能コンテストで日本3位」になったこともあるという話で。行ってみたら「昔ながらの渋い店だな…」なんて思ったんですけどね。切ってもらうと実際、うまいんです。「俺に任せておいたら大丈夫やねん」って自信たっぷりに話すし。僕も生意気に「ここんとこ、もうちょっと…」なんて希望を言うこともあるんですけど、おっちゃんは「お前は黙っとれ」って受け入れない(笑)。だけどそれがかえって「この人なら任せられるな」って安心しました。
まぁもう76歳なんでね、たまに「アレ?切りすぎたんちゃうかな…」って思うことも。そういう時は自分で切った仕上がりを見て、やたらと「カッコええなぁ!」って言うんですよ。いつも言わないのに。だからおっちゃんの「カッコええなぁ」が出た時は、失敗の合図だな、って僕もわかるようになりました(笑)。でも僕にとって、もはや「おっちゃんの切る髪=角刈りなんだ」って気持ちなんで、まったく文句はないです。それくらい任せても安心感があるプロっていいなぁ、と思います。
柳澤
ジャングルジムの会長さんも、プロムナードのご主人も、お2人をずっと応援してくれたそうですね。M-1で優勝した時は、さぞ喜んでくれたのでは?
内海
「ほんまによかったなぁ」って言ってくれましたね。決勝前に店に行ったら「俺が切ってるから決勝も大丈夫や!」って励ましてくれて。優勝後に訪ねた時は、「もう他のところで切ってほしくないねん。俺が切ってるって言いたいねん」っていうおっちゃんの言葉に、思わず泣いてしまいました。
駒場
僕も優勝後にジャングルジムへ挨拶に行った時は、すごく喜んでくれて。みんなのTシャツや色紙にサインさせてください、ってお願いしました。
これからも予定が空いたらジムに通うんで、それも会長への恩返しになるかなと。ボディビルの大会に出る時も「ジャングルジム所属」って名前が出るので、それが宣伝に役立てばいいですね。
会長は本当にお笑いが好きで、地元商店街にお笑いの劇場を作ったり、ちびっ子にお笑いを教えたりするくらいなんです。そういうところの手伝いもできたらいいな、って。
柳澤
M-1優勝賞金、1000万円の使い道は?
内海
だいぶ前から言ってることですが、「プロムナード」に僕専用の散髪の椅子を設置させてくださいって、おっちゃんに話してます。店には2台の席があるんですが右側が壊れかけてて、そこに新しく僕専用のを置こうかなと。でもこないだ行ったら、左側もダメになってるんです。だから新しい椅子を入れても、僕専用じゃなくてお客さんみんなが座ることになると思う(笑)。
駒場
そんなら椅子を2台買ったらいい。
内海
いやいや、あのプロ用の椅子って結構高いのよ!2台は厳しいでしょう。でもおっちゃんも「キャメル色がいいな」なんて、楽しみにしてくれてます。
駒場
僕はこれまで、後輩にお祝い事を全然渡せてないんで、それをさかのぼって渡したい。僕自身が先輩にとてもお世話になってきたんで、今度は自分の番だなって思うんです。結婚、出産…とかお祝いがあった後輩にズラッと僕らの前に並んでもらって、順に渡していきたい。
内海
僕は賞金から散髪の椅子代を引くぶん、後輩に渡せるお祝いがちょっと少ないかも(笑)。