サロンで始める
訪問美容~データ&実例編~
超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。
vol.40
実例編表参道から訪問美容で地元を元気にしたい!
GLAD.
- 全スタッフ13名
- 1店舗
- 店長:
- 上野善弘さん
- 訪問美容開始:
- 2020年
- 訪問施設数:
- 3施設(1回の訪問で1-8名)
- 施設訪問頻度:
- 1〜2カ月に1回
- 訪問個人顧客数:
- 2件
- 個人顧客訪問頻度:
- 2カ月に1回
- 訪問スタッフ:
- 1名
- 価格:
- カット2,000円〜、パーマ5,000円〜、カラー5,000円〜
-
Q
訪問美容を始めようと思ったきっかけは?
-
A
コロナ禍で今までと違うことをやりたいと考えたことです。
ずっと以前に訪問美容の書籍を読んで興味をもっていました。
10年以上前になりますが、訪問美容の書籍を読みました。それまでは、病院でボランティアとしての施術経験はありましたが、その本を読んで「美容にはいろいろな形があるんだ」という新たな発見があったんです。その一方で、片手間でできるものではなく、サロンとは異なる技術が必要なこともわかりました。もし訪問美容をやるなら、きちんとした知識と技術を身につけたいと思ったので、そのときすぐにではなく「ゆくゆくはできたらいいな」くらいに思っていました。
コロナ禍で訪問美容への気持ちが再燃。
昨年(2020年)コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出たとき、サロンにいらっしゃるお客さまが減り、自分のなかに変化が出てきました。今までより時間に余裕ができたことで、「お客さまがサロンに来られないなら何か自分にできることはないのか」と考えるようになったのです。また、私は千葉の茂原から表参道のサロンまで2時間かけて通勤していますが、当たり前だと思っていた通勤に疑問を感じるようになっていました。 「この長い通勤時間を、家族や自分、地元のためにもっと活用できるのでは?」と考え始めました。そのときに、昔書籍で読んで興味をもった訪問美容が、そのひとつなのではないかと思ったのです。
お客さまが来られないなら、こちらから出向く訪問美容に可能性を感じました。場所が変わっても「自分の技術を活かして人を幸せにする」のが美容師の使命であることに変わりはありません。そこから本格的に訪問美容に着手しようと決意しました。
-
Q
訪問美容は何から始めたのですか?
-
A
周りの人に自分の想いを伝えました。
まず最初に、ネットで訪問美容についての情報収集をするのと並行して、訪問美容をやりたい自分の想いを、家族や美容師仲間に伝えました。何かを始めるとき、想いを伝えることが何より大切だと私は考えているからです。
すると、美容師仲間のひとりから、「ホットペッパービューティーアカデミーで『訪問美容ゼミ』をやってるよね」と教えてもらったのです。調べたら、「訪問美容ゼミ3期生」の募集期間だったのですぐに応募しました。そこから訪問美容への踏み出しが一気にスピードアップしていきました。
講師陣の熱い想いに突き動かされた。
「訪問美容ゼミ」に参加してみたら、自分で情報収集していたときに興味をもった、「ふくりび(NPO法人 全国福祉理美容師養成協会)」さんや、「trip salon un」さんが講師を務めていると知ってラッキーだと思いました。しかも無料で彼らのレクチャーを受けられることに感動しました。
さらに、コロナ禍ですべてオンライン形式でしたが、講師や事務局の方々の熱量がこちらにものすごく伝わってくるのです。訪問美容をともにやりたいという熱い想いだけでなく、営業トークにしても120点の答えを教えてくださります。例えば、「営業されるときの施設の職員の方々の心理」や、「断られたときにどうするか?」ということをケースごとに教えてくれました。講師の方々の熱意が、自分ががんばれる原動力になりました。
120点の答えを教えてくれていたので何も怖くなかったです。
教えていただく訪問美容の知識がすべて真新しい発見で、とても楽しかったです。毎回課題を出されて、次のゼミまでにこなさなければならないことも多々ありました。でも、初めてのチラシづくりも営業も「タダで勉強させてもらって、結果を出せなかったら恥ずかしい」という思いで、必死でやりました。やってみないと何事もわからないので、当たって砕けろという感じでしたね。120点の答えを教えてもらっていたので、営業に行ってうまく話せなかったと思っても、「その反省を次に活かせばいい」という気持ちで臨んでいました。
地元の複数の施設との契約に!
現在は、地元の茂原にあるサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)と、千葉市の障がい者支援グループ施設に契約をいただいています。地元に貢献したい思いから始めた訪問美容なので、自宅から車で無理なく行ける距離で考えています。
サ高住はチラシを配った後、半年くらい経ってから先方から連絡をいただきました。時差がありましたが、蒔いた種は芽吹くのだと思いましたね。実は他にも2社の訪問理美容業者からの営業を受けていたそうですが、私の提案が一番先方のニーズに寄り添っていたとのことで、選んでいただくことができました。
障がい者支援グループ施設は、仲間からの紹介でした。訪問美容をやりたいと思い立ったときに仲間に想いを伝えていてよかったと思いましたね。
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Q
サロンワークとの兼ね合いはどうしているのですか?
-
A
代表が理解して自由にやらせてくれています。
基本はサロンの休日に、重複するときは午前を施設、午後をサロンにしています。
訪問美容はあくまで私個人の取り組みです。本格的にやろうと考え始めたときに、サロンの代表にもきちんと話をしました。もちろんサロンのお客さまも大切ですので、自分としては両立が希望でしたが、サロン側の事情もありますので、「条件が合わなければ雇用形態を変えてもらってもいい」と伝えました。でも代表は、「訪問美容で培った技術やノウハウを、いずれサロンに還元してくれればいいから、応援する」と言ってくれました。基本はサロンの休日に訪問美容の予約を入れていますが、施設側の事情でどうしてもサロンの営業日になりそうなときは、午前中に施設の予約を入れて、その時間はサロンの指名を入れないようにさせてもらっています。
将来的にはサロン全体の取り組みに
「GLAD.」のサロンコンセプトは「お客さまとずっとつきあえる関係でいたい」です。それは訪問美容にも通じることです。いずれ他のスタッフも訪問美容に興味をもったときに、私の技術を落とし込んで、サロン全体の取り組みになったらいいですね。
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Q
今後は訪問美容をどのように進めたいですか?
-
A
利用者さまに選択肢のある訪問美容にしたいです。
地元を元気に!
訪問美容への大きな動機が地元還元です。地元の美容師の友人たちとお客さまの取り合いをするのではなく、訪問美容なら友人たちが未着手の領域なので貢献できると思っています。
施設や居宅で高齢者さまの施術をすると、キレイになったりカッコよくなった姿を見て、ご家族さまたちも元気になるのです。高齢化で私の地元は元気がなくなったと言われていますが、美容で地元のみなさんを元気にできればと願っています。
利用者さまに選択肢を与える訪問美容に。
訪問美容全体の課題として、利用者さまにとって選択肢が少ないことがあると思います。「高いお金を払ってでもキレイになりたい」という方は大勢います。サロンなら自分の好きな店を選べますが、介護施設の場合、利用者さまが業者を選べないことがほとんどで、それが当たり前になっています。キレイになることは生きるモチベーションにもなるので、我々美容師はそこに応えなければいけない。だから「好きなスタイリングにできる訪問美容もある」ということを知っていただく努力を、我々ももっとやっていかねばならないと思っています。
上野さんからひとこと
私は「訪問美容ゼミ」でたくさんのことを学ばせてもらうことができ、応募して本当によかったと思っています。だから、思い立ったらゼミに入ることを自信をもっておすすめします。成功する方法を確実に教えてもらえるからです。コロナ禍が私にとっていい意味での節目や動くきっかけとなったように、人生の節目は一歩踏み出す転機だと思います。そして一歩踏み出せればほぼ成功ですよ!
Salon Data